地域ケアの今⑧

福祉現場をよく知る鳥海房枝さんと、在宅現場をよく知る上野まりさんのお二人が毎月交代で日々の思いを語り、地域での看護のあり方を考えます。

 

地域ケア上野さん

「世話すること・されること」の価値を実感できる社会に

文:上野まり

 

「認知症事故 家族責任なし」。2016年3月2日の読売新聞朝刊の一面の見出しが目に入りました。2007年に徘徊中の91歳(当時)男性が列車にはねられた事故をめぐり、最高裁の判決が下されたのです。監督義務者とされていた当時80代で要介護1の妻と別居の長男に対する1審、2審の賠償命令は棄却されました。この判決が出るまで、認知症者にかかわる人々の意見が新聞などにも取り上げられ、認知症者の家族の逆転勝訴という結果に対して、世間はおおむね妥当と落ち着いたように思います。

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トシコとヒロミの往復書簡 第7回

本連載では、聖路加国際大学学長の井部俊子さんと、訪問看護パリアン看護部長の川越博美さんが、往復書簡をとおして病院看護と訪問看護のよりよい未来を描きます。さあ、どんな未来が見えてくるのでしょう。

 

井部さんイラスト右向き

 

井部俊子さんから川越博美さんへの手紙

診療報酬改定と訪問看護の「評価」

文:井部俊子

 

 

2016年の立春も過ぎ、「春は名のみの風の寒さや」と歌う『早春賦』が思い出されます。『コミュニティケア』4月号が読者に届くころは、新人看護師が初めての職場で、“恍惚と不安”の中にいるかもしれません。

 

看護管理者は、活躍してくれた仲間の退職の申し出に「とても悲しい思い」をすると、前回の手紙に書いていましたね。私も同感です。管理者は毎年、スタッフの退職という“対象喪失”を経験して悔やみます。そして辞めていく看護師に苛立ち、退職を申し出た日から退職の日まで、ツンツンしてしまうという事態が起きることもあります。一方、スタッフからみると、それまで同志のように働いてきた上司が、手のひらを返したような冷たい対応をとることに心を痛めます。新人管理者は、対象喪失からなかなか抜け切れないでいると、抑うつ的になり意欲を失います。管理者はこのような体験を積み重ねて、自己を律して気持ちを切り替えるという修練をするのですよね。私は、そうした中にいる若い管理者には、「それでも『あなたとまた仕事をしたいと思っている』というメッセージを退職するスタッフに伝えなければならない」と言いたいと思います。決して“けんか別れ”をしてはいけないのです。

 

→続きは本誌で(コミュニティケア2016年4月号)

 

地域ケアの今⑦ 

福祉現場をよく知る鳥海房枝さんと、在宅現場をよく知る上野まりさんのお二人が毎月交代で日々の思いを語り、地域での看護のあり方を考えます。

 

1602鳥海様

 

「年寄りをなめるな」〜利用者の本音はどこにある

文:鳥海房枝

 

東京都の福祉サービスへの第三者評価では、利用者の意向等を把握するために「利用者調査」をすることを原則にしています。評価機関は、特別養護老人ホームや介護老人保健施設、養護老人ホームなどの高齢者ケア施設へは「面接」で、その他の通所施設などへは「アンケート」で利用者調査をすることが一般的です。

 

私が属しているNPO法人メイアイヘルプユーも、東京都福祉サービス評価推進機構に第三者評価を実施する評価機関として登録しており、利用者面接で高齢者ケア施設を訪問しています。その際、私は利用者と一緒に同じ食事をいただくようにしています。その理由は食事を一緒にすると、職員の利用者へのかかわり方がごく自然にわかるためです。こういった食事場面や利用者面接で出会う高齢者からは、いい意味で“心優しいしたたかさ”を感じます。今回は、そんな高齢者の姿を紹介しながら、老いるということについて考えてみたいと思います。

 

→続きは本誌で(コミュニティケア2016年4月号)

 

 

 

地域ケアの今⑥

福祉現場をよく知る鳥海房枝さんと、在宅現場をよく知る上野まりさんのお二人が毎月交代で日々の思いを語り、地域での看護のあり方を考えます。

 

 地域ケア上野さん

「いちばんたいせつなことは、目に見えない」

文:上野まり

 

昨年、東日本大震災の被災地に連泊した際、はるか昔に見た覚えのある挿絵に出会い、懐かしく思って久々に映画館に入りました。その映画は「リトルプリンス 星の王子さまと私」。以前読んだストーリーはほとんど記憶になかったので、その後、原作本『星の王子さま』(新潮社)を買ってあらためて読んでみました。

 

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トシコとヒロミの往復書簡 第6回

本連載では、聖路加国際大学学長の井部俊子さんと、訪問看護パリアン看護部長の川越博美さんが、往復書簡をとおして病院看護と訪問看護のよりよい未来を描きます。さあ、どんな未来が見えてくるのでしょう。

 

川越さんイラスト

 

川越博美さんから井部俊子さんへの手紙

病院や訪問看護ステーションで

看護師のキャリアアップを支えていきましょう

文:川越博美

 

 

訪問看護のキャリアパスについてご意見をいただき、ありがとうございました。

 

「新卒看護師を訪問看護師に」という動きは、政策的に、厚生労働省や日本看護協会、全国訪問看護事業協会などが率先して推し進めています。訪問看護師の量と質をどのように確保するかという課題への新しいチャレンジだと思います。

 

私が「新卒の看護師が訪問看護をするのは、今の教育システムでは乗り気ではない」と書いたのは、1人で訪問看護をするには最低限の知識と技術が要求されるからです。訪問看護サービスは、利用の仕方により、また介護保険・医療保険によっても利用料は若干異なりますが、おおよそ1万円のサービスと考えてよいと思います。訪問看護ステーションによってそれぞれ得意分野・特徴があるにせよ、ステーションや訪問看護師によって看護サービスの質が異なるというのは、利用者である国民が許してはくれません。サービスの質を担保するために、訪問看護師に必要な能力を各ステーションで教育できればよいのですが、小規模なステーションが多い現状では経営上の問題もあり、病院で基礎的な知識・技術を習得した看護師を雇用しているのが現状です。

 

そもそも、訪問看護師にとって最低限必要な知識・技術とはなんでしょうか。

 

→続きは本誌で(コミュニティケア2016年3月号)