精神科訪問看護へようこそ

 

 

病棟から精神科訪問看護に飛び込んだこころさんが、看護大学で働くカワウソ先生との対話を通して在宅の精神科看護を学び、成長していく物語です。

 

川下 貴士 ●かわしも たかし

松蔭大学看護学部看護学科精神看護学 助教

 


 

第6回 100点満点じゃなくても

 

前回のあらすじ

こころさんは調子を崩して入院してしまったAさんになにができるか、悩みました。しかし、「心理教育」の一環としての服薬支援や治療同盟についてカピバラ先生から教わり、再び前を向きます!

 

 

こころ カワウソ先生、実はとってもうれしい報告があります!

 

カワウソ こころさん、すごく素敵な笑顔ですね。どうしましたか?

 

こころ それが……Aさんが退院してから、2週間ほどたっているのですが、状態が安定しているんです。

 

カワウソ それはよかったです! 状態が安定している、ということはお薬も継続的に飲めているのでしょうか?

 

こころ 実はAさん、入院したときに糖尿病であることがわかって、薬が増えたらしく……。その際に病棟の看護師さんから服薬支援を受けていたという話も聞いたのですが、薬を飲むことに関する考えは入院前とあまり変わらないように感じました。ただ、カピバラ先生から教わったこと*1を実践してみたら、今のところうまくいっているんです!

 

カワウソ ふむふむ。どんな説明をしたのか、ぜひ聞かせてください。

 


POINT①

現実世界では、患者さんの個人情報を公にするのは厳禁ですよ!


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行動変容をそっと促す ナッジを使ったアプローチ㉚

ナッジとは、人の心理特性に沿って望ましい行動へと促す設計のこと。ゲストスピーカー・医療職のタマゴたちとともに、看護・介護に役立つヒントを示します。

 

 

 

みんらぼカードの広告で
人生会議を周知する

 

竹林 正樹

たけばやし まさき

青森大学 客員教授/行動経済学研究者

 

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医療職のタマゴたちが交代でナッジを学びます。

金田 侑大さん

城戸 初音さん

難波 美羅さん

 

 

竹林 2024年11月号、12月号では、一般社団法人みんなの健康らぼ*1(以下:みんらぼ)の理事、坪谷透先生(総合内科専門医)をお招きし、どうすれば「人生会議(アドバンス・ケア・プランニング:ACP)」がうまく進められるかについて伺いました。

 

あらためて、坪谷先生のお話の中で、何が印象的でしたか?。

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N.Focus  窒息リスク評価の標準化をめざして

 

窒息リスク評価の標準化をめざして

 

迫田 綾子 ● さこだ あやこ

日本赤十字広島看護大学 名誉教授
POTTプロジェクト代表

 

[略歴]

広島大学医学部附属看護学校卒業後、病院勤務を経て2021年広島大学大学院医学系研究科前期修了。日本赤十字広島看護大学基礎看護学、摂食嚥下障害看護認定看護師教育課程主任教員を兼務。

 


 

窒息のリスクを誰でも・どこでも・短時間で・包括的に評価できるものにすることを目標に考案された「窒息リスク評価表」。食事におけるポジショニングやケアのあり方を追求する筆者が、その開発経緯や具体的な利用法などを紹介します。

 

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基礎から学ぶ! 事例でわかる! 訪問看護ステーションの事業承継(18)

経営者の高齢化等により注目されている事業承継。成功させるにはいくつかのポイントがあります。本連載では、事業承継とは何か、事業承継の流れ・留意点などの基礎知識を解説し、実際の支援事例を紹介します。

 

 

 

訪問看護ステーションの事業評価
デューデリジェンスの重要性

 

坪田 康佑

つぼた こうすけ

訪問看護ステーション事業承継検討委員会

一般社団法人医療振興会代表理事

看護師/国会議員政策担当秘書

 

 

訪問看護ステーションの
過去と未来を評価する

 

「デューデリジェンス」(Due Diligence)とは、経営状況や財務状況を調査して企業を適正に評価することであり、一般的に買い手側が売り手に対して、専門家を介し実施するものです。過去・現在の評価に加え、事業の将来展望の分析も行います。

 

過去・現在の評価は、主に「財務」「税務」「債務」「法務」「人事」の観点から行われ、事業承継後に発覚する可能性のある問題を事前に把握し、抱えるリスクを最小限に抑えます。例えば、過去の不正請求や未払いの残業代などが後日明らかになった場合、その責任と財務的負担は新しい経営者に移ることになります。そのため、デューデリジェンスでは過去から現在に至る事業運営の適正性を綿密に調査します。

 

一方、将来展望の分析は「事業戦略」「オペレーション」「知的財産」などの側面から多角的に実施され、事業承継後の成長可能性や発展性を評価します。ここでは事業の収益力、人材の融和と活性化、知的財産の活用などが重点的に検討されます。また、承継先の既存事業とのシナジー効果が期待できるかどうかも重要な検討事項となります。

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〈新連載〉市民とともに歩むナースたち

〈新連載〉

 

「People-Centered Care(PCC)」とは、市民が主体となり保健医療専門職とパートナーを組み、個人や地域社会における健康課題の改善に取り組むことです。本連載では聖路加国際大学のPCC 事業の中で経験した「個人や地域社会における健康課題の改善」を紹介します。

 

射場 典子いば のりこ

聖路加国際大学PCC開発・地域連携室

 

中村 めぐみなかむら めぐみ

聖路加国際大学PCC開発・地域連携室

 


連載のはじめに

市民主体のケアにおける

看護職のありよう

 

 

市民が主体となるケアとは

 

聖路加国際大学では2003年よりピープル・センタード・ケア(PCC)という新たなケアの開発に取り組んでいます。

 

「医療の主人公は誰か?」そんな当たり前の問いからPCCの探求は始まりました。誰もが自分の人生の主人公であり、生活の主体であるにもかかわらず、医療の場では受け身となり、医療者がよかれと思う道筋へと進んでしまいがちなのはなぜでしょうか。

 

PCCのPは“Patient”ではなく、“People”であり、看護の対象を「患者」という医療の枠組みのみで捉えるのではなく、地域社会で暮らしている人(市民)と捉えます。そして、市民1人ひとりが医療者とパートナーを組み、自分自身や地域社会における健康課題の改善に向けて取り組むことが市民主体のケアと言えます。

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