行動変容をそっと促す ナッジを使ったアプローチ㉑

ナッジとは、人の心理特性に沿って望ましい行動へと促す設計のこと。ゲストスピーカー・医療職のタマゴたちとともに、看護・介護に役立つヒントを示します。

 

対象者を細分化する・相手に聞く

 

竹林 正樹

たけばやし まさき

青森大学 客員教授/行動経済学研究者

 

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医療職のタマゴたちが交代でナッジを学びます。

金田 侑大さん

城戸 初音さん

難波 美羅さん

 

 

対象者を細分化して情報を提供する

 

竹林 前回*1、前々回*2と、溝田友里先生(静岡社会健康医学大学院大学)から、ソーシャルマーケティングを組み合わせたがん検診受診や予防行動促進の実践的なお話をうかがいました。難波さんはどう感じましたか?

 

難波 大学でソーシャルマーケティングを学びましたが、正直、具体的なイメージがわきませんでした。でも、溝田先生から「問題の対象を細分化し、ターゲットに合ったアプローチを実施する手法」と教えていただいたおかげで、よくわかりました。

 

竹林 私たちは「誰一人取り残さない」と願うあまり、対象の全員をターゲットにする手法を使いたくなることが多いのです。例えば、がん検診の受診促進に関するチラシをつくるとき、全員をターゲットにしようとすると、「検診のことをよく知らないから受けない」「検診に批判的な意見を持っているから受けない」という人へのメッセージも入れることになりますね。しかし、こういった人たちは実は少数派で、さらにチラシを送られてもあまり読まない人が多いのです。数字で考えてみましょう。難波さんの地域では、がん検診に対して無関心な人は何割くらいいると思いますか?

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折々のはなし㉓

教育現場の立場から角田直枝さん、在宅現場の立場から大槻恭子さん、福祉現場の立場から鳥海房枝さんに、日々考えていること・気になっていること・感じていることなどを述べていただく私的エッセイ。

 

 

大槻 恭子

おおつき きょうこ

一般社団法人ソーシャルデザインリガレッセ 代表理事

 

京都府南丹市出身。子どもの療養をきっかけに兵庫県但馬に移住し、築150年の古民家を購入。現在、その古民家を再生し看護小規模多機能型居宅介護事業所や訪問看護ステーションを運営。

 


 

「いのちのスープ」

 

1枚の写真

 

忘れられない1枚の写真があります。

 

それは、もう20年も前、息子の1歳のお誕生日の写真です。

 

息子は生まれてすぐに全身性の重度アトピーのような状態となり、ミルクはもちろん、母乳でさえアレルギー反応が出てしまいました。検査の結果では、食品そのものに大きな反応は見られず、化学物質などに反応しているのではないか、とのことでした。当時の私は、自分自身、そして息子にとって安心して食べられるものを見つけようと試行錯誤の日々でした。

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だから面白い訪問看護管理(15)

大学教授から転身し「らふえる訪問看護ステーション」を開設。10年を経た今、訪問看護の未来を見すえて管理者としての思い・考えを語っていただきます。

 

 

3.11を忘れない

 

林 啓子

株式会社らふえる 代表取締役
らふえる訪問看護ステーション 管理者
一般社団法人茨城県訪問看護事業協議会 会長

 

 

とっさの行動が生死を分ける

 

今年は新年早々、能登半島で最大震度7の地震と、津波が発生しました。そして、東日本大震災から13回目の3.11がめぐってきます。あの日、私は筑波大学の研究棟5階の部屋にいて、経験したことのない大きな揺れに、慌てて廊下に飛び出し、エレベーターホールの太い柱にしがみつきました。そこが安全だと思ったのは、その数週間前にニュージーランドで起こった地震(日本の留学生が何人も犠牲になりました)で、建物は倒壊したもののエレベーターだけが直立して残っていた映像が脳裏をよぎったからです。

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患者の望む在宅医療を実現する退院支援(3)

 

オレム・アンダーウッドのセルフケアプログラムの実践技法を再体系化した最新セルフケアプログラムの概要と援助関係の展開方法、「PASセルフケアセラピィ」の活用法について紹介します。

 

 

最新セルフケアプログラム③

ケース・フォーミュレーション

 

宇佐美 しおり

式会社ソラヒロ訪問看護ステーションそらひろ 管理者

セルフケア実践教育研究所 代表

精神看護専門看護師

 

今号では、最新セルフケアプログラムの第3回目として「ケース・フォーミュレーション」について述べます。ケース・フォーミュレーションとは、前号で紹介した総合アセスメントを基にセルフケア上の目標を定め、ケアを組み立て、セルフケアプログラムを展開することです。これは看護において重要な機能の1つです。

ケース・フォーミュレーションとは

日本におけるケース・フォーミュレーション

 

ケース・フォーミュレーションは、最新セルフケアプログラムを展開する上で欠かせないものです。

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コンサルテーションを看護に活かす

新連載(1)

コンサルテーションとは

 

野末 聖香

 

 

医療が高度化し、人々の価値観が多様化している現代において、1人ひとりの患者に沿った看護を実践するには、さまざまな専門性を持つ看護職間で、また多職種間で連携し、異分野の知識や技も柔軟に取り入れながら、個別的で統合的な支援を提供することが求められます。その実現のためには、連携し、協働する力を身につけることが必須であり、連携・協働の形の1つが、本連載で紹介する「コンサルテーション」です。
これから3回にわたり、看護においてコンサルテーションがなぜ有用なのか、その定義、目的、方法、留意点などについて、事例を交えながら述べていきます。

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