福祉現場をよく知る鳥海房枝さんと、在宅現場をよく知る上野まりさんのお二人が毎月交代で日々の思いを語り、地域での看護のあり方を考えます。
災害への新しい備え方
文:鳥海房枝
震度7という途方もない揺れに2度もみまわれ、2カ月半が過ぎても震度3〜4の余震が熊本県、大分県を襲っています。揺れのすさまじさは、勇壮な武者返しの石垣に象徴される熊本城が映画のセットに見えるほど破壊されている映像や、大きな被害がないように見えても地割れが家屋の下を縦走している映像から伝わってきます。
1995年1月の阪神淡路大震災、2004年10月の新潟県中越地震、2011年3月の東日本大震災、そしてこのたびの熊本地震は、ここ20年の間に相次いで発生し、大きな災害として歴史に残るでしょう。日常をなんとなく過ごしながら、実は「歴史的な事象の真っただ中にいるのかもしれない」と感じる自分がいます。そして、震災に対する人々の受け止め方も目に見える形で変化しているように思います。
首都圏での意識の変化
特に東日本大震災以降は、地震発生をめぐって、「南海トラフ」や「首都直下型」などの言葉とともに、被害予測まで報じられるようになりました。これを受け、首都圏では震災の捉え方も、「もしかしたら」から、近い将来「必ず来る」に変わったように感じます。
私がかかわっている福祉サービスの第三者評価の項目(東京都版)には、大規模災害を意識した事業継続計画の策定があります。また特養などの入所施設でも、例えば備蓄食料を3日分から7日分に変更した所が多くなりました。「3日間をしのげば救援物資が届く」から、「7日間を自分たちの力で生き抜く」に変わっているのです。