看護と経営(21)

 

●監修 福井 トシ子

国際医療福祉大学大学院副大学院長/教授

●企画協力

鳥海 和輝

『Gem Med』編集主幹

小野田 舞

一般社団法人看護系学会等社会保険連合 事務局長

 

診療報酬等に関連する用語の理解や管理指標の持つ意味、病院機能ごとの経営の考え方について解説するとともに、事例を通じて、看護管理者が病院経営に貢献するためのヒントを探ります。

 


vol.21 実践編

業務の見直しにより人員を有効活用する

 

鳥海 和輝

とりうみ・かずき◉大学卒業後、社会保障系出版社に勤務。医療保

険専門誌、介護保険専門誌の記者やデスク等を経て現職。現在、

ニュースサイト『Gem Med』にて、医療政策・行政情報を発信し

ている。

 

 

病院経営の基本は「収益を最大化し、費用(コスト)を最小化する」ことです(収益とコストの差が「利益」となる)。前号から「コストの最小化」に向けた方策を検討しており、引き続き、本号では「人件費の適正化」の方策を考えます。

 

無駄な業務が発生していないか

 

2022年度の医療経済実態調査結果1)の中で一般病院のコストを見てみると、最も大きなシェアを占めているのは「人件費」です(56.4%)。次いで、医薬品費(9.3%)、材料費(7.8%)と続いています。

 

コストの最小化を進める上では、「大きなシェアを占める部分」から適正化を進めることが鉄則です。例えば、コストの1%しか占めていない費目を半減できたとしても、その効果は「コスト全体の0.5%」に留まります。一方、30%を占める費目を10%縮減できれば、その効果は「コスト全体の3%」になるのです

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N.Focus 災害時における情報管理の手法「クロノロジー」 東京都多摩府中保健所における災害時保健活動の充実に向けたクロノロジー研修から

 

災害時における情報管理の手法「クロノロジー」

東京都多摩府中保健所における

災害時保健活動の充実に向けたクロノロジー研修から

 


石田 千絵●いしだ ちえ

日本赤十字看護大学 看護学部地域看護学 教授

 

佐藤 茜●さとう あかね

東京都多摩府中保健所市町村連携課 市町村連携担当 課長代理

 

佐藤 太地●さとう たいち

日本赤十字看護大学 看護学部地域看護学 講師

 

河西 あかね●かさい あかね

東京都多摩府中保健所 地域保健推進担当課長(保健所統括保健師)

 


 

自治体保健師は、大規模地震災害やパンデミック等の健康危機発生時に、被災地自治体において、また、被災地自治体への保健師等支援チームの一員として活躍しているところですが、自治体保健師が平時にどのような役割を担っているのか、有事に向けてどのような演習をしているのかあまり知られていません。そこで本稿では、東京都多摩府中保健所が管内の市町村向けに実施した、災害初期に重要となる情報管理の手法「クロノロジー」研修について紹介します。

 

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【Book Selection】新刊書籍のご紹介


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特別記事 島の人々の生活と健康を支える看護職 トカラ列島の群発地震レポート②

鹿児島大学病院看護部、鹿児島県看護協会、NPO法人メッセンジャーナースかごしまの活動等を通じて、離島へき地における看護の課題に取り組む筆者からの報告を2回にわたって紹介します。

 


田畑 千穂子 たばた ちほこ

NPO 法人メッセンジャーナースかごしま 代表
鹿児島県看護連盟 会長


 

今回は、十島村における看護師2人体制実現の経緯をはじめ、中之島で行った健康教室、口之島での人生会議、そして島民への自宅訪問の様子を通して、離島での看護職の活躍と住民との深いかかわりについて報告します。

 

十島村における看護師2人体制の実現

 

2016年、鹿児島大学地域防災教育センター主催の「第4回かごしま国際フォーラム」が開催されました。大会テーマは「島嶼・へき地のルーラルナーシングと災害看護」でした1)。カナダのサスカチュワン大学看護学講師Mary E. Andrews氏が「カナダのへき地における看護実践の課題」を講演し、その質疑応答で十島村の参加者から看護師配置人数について聞かれたAndrews氏は、「カナダでは、看護師の在宅訪問の移動はセスナ機で、看護師は2人体制」だと回答しました。

 

この「看護師2人体制」の情報を受けた十島村の村長は、すぐさま「十島でも看護師2人体制を導入する」と決断し、予算化が進められました。それから9年がたち、現在では5つの島で2人体制が実現しています。

 

この国際フォーラムの開催が十島の医療体制に影響を与えたことが成功体験となり、「看護研究活動は社会を変える」「一歩でも前へ動かす行動力が誰かの心を動かし、いつか山が動く」という信念が筆者の看護活動の「芯」となりました。

 

その後、県看護協会長であった筆者は、十島村の看護師確保のため、eナースセンターへの募集協力や県看護協会の広報誌への記事掲載などを続けました。

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市民とともに歩むナースたち(12)〈最終回〉

「People-Centered Care(PCC)」とは、市民が主体となり保健医療専門職とパートナーを組み、個人や地域社会における健康課題の改善に取り組むことです。本連載では聖路加国際大学のPCC 事業の中で経験した「個人や地域社会における健康課題の改善」を紹介します。

 

鈴木 貴子 すずき たかこ

聖路加国際大学PCC開発地域連携室
看護師・鍼灸師

 


「聖路加健康ナビスポット「るかなび」:健康相談」

その人の持つ力を信じて、できることをともに考える

 

 

看護師による健康相談

 

今回は、本誌2025年1・2月号で紹介した聖路加健康ナビスポット「るかなび」(以下:るかなび)の活動の1つ「健康相談」について詳しく説明します(次ページ囲み参照)。

 

●相談に訪れる人々の困り事
医療機関ではない、地域に開かれた場所のため、看護師に話をする気軽さもあるのでしょう。複数の身体的な困り事を抱えている人や、生活上の制限にストレスも相まって悩みが複雑化している人、医療機関で異常は指摘されないが不調が続き途方に暮れている人、病院での検査結果を一緒に見てほしい人、精神的な不安を話しに来る人、子どもとの接し方に悩む人など、来訪者は多種多様です。疾患も、がんや脳血管系、運動器系、不定愁訴など多岐にわたります。

 

医療現場では、患者への説明に時間をかけたのに、後日確認すると「実は理解していなかった」ということがよくあります。るかなびへ相談に訪れる人々も「食事に気をつけるには、具体的にどうすればよいのか」「医師の説明は受けたけど、結局どういう病気かよくわからない」「家で考えていたら、わからないことがたくさん出てきた」「主治医に聞いていいのかわからない」「先生も看護師さんも忙しそうだし、声をかけられない」と、病気の理解のみならず、病院で説明されたことを生活の中に落とし込めない、知りたいことを医療者にうまく聞けない、といった困り事で訪れます。

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