基礎から学ぶ! 事例でわかる! 訪問看護ステーションの事業承継(18)

経営者の高齢化等により注目されている事業承継。成功させるにはいくつかのポイントがあります。本連載では、事業承継とは何か、事業承継の流れ・留意点などの基礎知識を解説し、実際の支援事例を紹介します。

 

 

 

訪問看護ステーションの事業評価
デューデリジェンスの重要性

 

坪田 康佑

つぼた こうすけ

訪問看護ステーション事業承継検討委員会

一般社団法人医療振興会代表理事

看護師/国会議員政策担当秘書

 

 

訪問看護ステーションの
過去と未来を評価する

 

「デューデリジェンス」(Due Diligence)とは、経営状況や財務状況を調査して企業を適正に評価することであり、一般的に買い手側が売り手に対して、専門家を介し実施するものです。過去・現在の評価に加え、事業の将来展望の分析も行います。

 

過去・現在の評価は、主に「財務」「税務」「債務」「法務」「人事」の観点から行われ、事業承継後に発覚する可能性のある問題を事前に把握し、抱えるリスクを最小限に抑えます。例えば、過去の不正請求や未払いの残業代などが後日明らかになった場合、その責任と財務的負担は新しい経営者に移ることになります。そのため、デューデリジェンスでは過去から現在に至る事業運営の適正性を綿密に調査します。

 

一方、将来展望の分析は「事業戦略」「オペレーション」「知的財産」などの側面から多角的に実施され、事業承継後の成長可能性や発展性を評価します。ここでは事業の収益力、人材の融和と活性化、知的財産の活用などが重点的に検討されます。また、承継先の既存事業とのシナジー効果が期待できるかどうかも重要な検討事項となります。

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映画と、生きるということ(12)


(No.12)

勇気と敬意が「友情」を築く

『グリーンブック』

 

宇梶 智子

 


宇梶 智子

医療法人社団 一心会初富保健病院看護部長/認定看護管理

20~30代のころは、夜勤明けでもミニシアターをめぐって、世界中のバラエティ豊かな映画を楽しんでいた。

そのほかの趣味は、韓国の食・ポップミュージックをはじめ、さまざまな文化を知ること。

 


 

ストーリー

 

1962年、イタリア系アメリカ人の〈トニー〉は、ニューヨークの高級クラブの用心棒として働いていました。腕力が強いだけでなく、機転が利き弁も立つので、そのかいわいで名をはせていました。しかし、クラブの改装による閉店で無職になってしまいます。職探しのさなか、知人から「どっかのドクターが運転手を探している」と連絡が入り、教えられた住所を頼りに面接に向かいます。するとそこは、かの有名なカーネギーホールでした。

 

ホール2階の豪邸に住む依頼主の〈ドクター・シャーリー〉は、有名な黒人ジャズピアニストだったのです。シャーリーの要求は、「8週間にわたるアメリカ南部でのコンサートツアーに、運転手兼付き人として同行すること」でした。トニーは「身の回りの世話はまっぴらごめんだ」と断ります。そのほかにも、家を空ける期間が長すぎること、差別地域で黒人の用心棒をするには給料が安すぎることも主張します。シャーリーはトニーの評判を知っていましたので、給料アップの要求を受け入れ、さらにトニーの妻の了承を得るという作戦に出ます。結局、トニーは運転手兼付き人として、ジャズユニット“ドン・シャーリートリオ”のツアーに同行することになりました。

 

劇中にも何度も登場し、映画の題名ともなっている「グリーンブック」とは、黒人が使用可能なホテルやレストランを掲載した黒人専用ガイドブックのこと。トニーは、出発時にレコード会社からグリーンブックを渡されます。それを頼りにシャーリーのホテルや食事場所を手配するわけですが、活用するにつれ、アメリカ南部の人種差別の現状をあらためて知ることになるのです。

 

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【Book Selection】新刊書籍のご紹介

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〈新連載〉暮らしは筋書きのないドラマ

〈新連載〉

 

第 1 回
「なりわい」
人生最期の最高の他人

 

なるせ ゆうせい
脚本家/演出家
株式会社オフィスインベーダー代表

 

「これからこの国は少子高齢化社会です!」
なんて誰もがわかりきってることをどこかのお偉い方々はちょくちょく発信したりするけれども、だからと言って看護や介護などの業界で働く人たちの待遇やらが劇的によくなってるかと言えば、なんだか、うーん、て首をかしげてしまう(というと怒られるから「これはあくまで私の主観です」と付け足しておきましょう)。

 

そんな業界に少しでもスポットライトが当たればいいなと思って、数年前、「ヘルプマン!」という介護関連の漫画を舞台化させてもらったことがありました(申し遅れましたが、わたくし舞台や映画づくりをなりわいとしてる生き物です)。

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〈新連載〉実践に役立つ訪問看護の注目論文

〈新連載〉

 

第 1 回
認知症の家族介護者への心理的支援
山川 みやえ・繁信 和恵・関口 亮子

 

今月の注目論文
認知症が高齢者夫婦の夫婦関係、親密さ、セクシュアリティに与える影響:質的系統的文献検討

Holdsworth K, McCabe M.: The Impact of Dementia on Relationships, Intimacy, and Sexuality in Later Life Couples: An Integrative Qualitative Analysis of Existing Literature. Journal of Clinical Gerontology and Geriatrics, 41(1) : p.3-19, 2018. doi:10.1080/07317115.2017.1380102.

 

論文の要旨(研究結果の概要)
認知症の発症と進行は、夫婦関係に深刻な影響を与える。研究チームは、認知症が高齢者夫婦の夫婦関係、親密さに与える影響を調査した質的研究論文を系統的にレビューした。対象論文は2016年5月に行ったWeb of Science、PsycINFO、MEDLINE、Scopus、CINAHLの5つのデータベース検索より、13の関連研究を特定した。分析結果として浮かび上がったテーマは以下のとおりである。

 

1.責任と役割の変化:認知症の進行により、夫婦間の責任分担が大きく変わる。
2.アイデンティティと自尊心の問題:認知症は個人のアイデンティティや自尊心に深刻な影響を与える。
3.愛情や献身、相互性の変化:夫婦関係の基盤をなす愛情や献身、関わり合いが、認知症の進行によって揺るがされる。
4.夫婦関係の変化:認知症の進行に伴い、夫婦関係そのものが変わることが多い。

 

本レビューにより、認知症は夫婦関係に大きな影響を与えることが明らかになった。しかし、認知症を持つ本人や夫婦共同の視点を含む研究が依然として不足しているため、将来的には配偶者、認知症を持つ本人、および夫婦共同の視点からさらなる研究が必要である。認知症が夫婦関係にもたらす影響は深刻であり、臨床的には個別のニーズに応じた支援が不可欠である。夫婦が直面する親密さや関係性の変化に的確に対処するため、個別性を踏まえた情報とサポートを提供することが重要である。

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