地域ケアの今⑪

福祉現場をよく知る鳥海房枝さんと、在宅現場をよく知る上野まりさんのお二人が毎月交代で日々の思いを語り、地域での看護のあり方を考えます。

 

1608鳥海様

災害への新しい備え方

文:鳥海房枝

 

 

震度7という途方もない揺れに2度もみまわれ、2カ月半が過ぎても震度3〜4の余震が熊本県、大分県を襲っています。揺れのすさまじさは、勇壮な武者返しの石垣に象徴される熊本城が映画のセットに見えるほど破壊されている映像や、大きな被害がないように見えても地割れが家屋の下を縦走している映像から伝わってきます。

 

1995年1月の阪神淡路大震災、2004年10月の新潟県中越地震、2011年3月の東日本大震災、そしてこのたびの熊本地震は、ここ20年の間に相次いで発生し、大きな災害として歴史に残るでしょう。日常をなんとなく過ごしながら、実は「歴史的な事象の真っただ中にいるのかもしれない」と感じる自分がいます。そして、震災に対する人々の受け止め方も目に見える形で変化しているように思います。

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トシコとヒロミの往復書簡 第9回

本連載では、聖路加国際大学大学院看護学研究科特任教授の井部俊子さんと、訪問看護パリアン看護部長の川越博美さんが、往復書簡をとおして病院看護と訪問看護のよりよい未来を描きます。さあ、どんな未来が見えてくるのでしょう。

 

井部さんイラスト右向き06

 

井部俊子さんから川越博美さんへの手紙

命の絆をみる力

文:井部俊子

 

 

先月の往復書簡の執筆中にお母さまが亡くなられたということですね。お悔やみ申し上げます。あなたの手紙は卓越した訪問看護師のケアのドキュメントとして秀逸でした。

 

91歳のお母さまは広島から東京のあなたがたの家に来て、2年数カ月の生活だったそうですね。月に5泊のショートステイをプランし、要介護5の療養生活を全うされました。

 

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地域ケアの今⑨ 

福祉現場をよく知る鳥海房枝さんと、在宅現場をよく知る上野まりさんのお二人が毎月交代で日々の思いを語り、地域での看護のあり方を考えます。

 

1606鳥海様

団塊の世代として介護予防を考える

文:鳥海房枝

 

 

町から姿を消した高齢者

 

地方都市の空港や主要駅に降り立ち、車で少し街中に入っていくと通所介護サービスの送迎車に必ず出会います。そして、威風堂々とした立派なものから普通の民家風のものまで、高齢者を対象にした事業を行う建物が、幹線道路沿いや細い路地に面して建っているのを数多く目にします。それと反比例するように、シルバーカーを押して道路脇を歩く高齢者や、道端などになんとなく集まった風情で話をしている高齢者たちを見かけることは極めてまれになりました。

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トシコとヒロミの往復書簡 第8回

本連載では、聖路加国際大学大学院看護学研究科特任教授の井部俊子さんと、訪問看護パリアン看護部長の川越博美さんが、往復書簡をとおして病院看護と訪問看護のよりよい未来を描きます。さあ、どんな未来が見えてくるのでしょう。

 

川越さんイラスト

 

川越博美さんから井部俊子さんへの手紙
母の看取りから考えた訪問看護のあり方
文:川越博美

 

 

この歳になって初めて花粉症になりました。そのため、頭がよく働かないまま手紙を書いています。『コミュニティケア』に掲載されるころには症状も収まっていることでしょう。

 

井部さんのお手紙は、診療報酬改定の詳細な内容でした。現場にいる私たちがあの時点で正確な情報を得るには、かなりの努力が必要です。大変参考になりました。ありがとうございます。

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地域ケアの今⑧

福祉現場をよく知る鳥海房枝さんと、在宅現場をよく知る上野まりさんのお二人が毎月交代で日々の思いを語り、地域での看護のあり方を考えます。

 

地域ケア上野さん

「世話すること・されること」の価値を実感できる社会に

文:上野まり

 

「認知症事故 家族責任なし」。2016年3月2日の読売新聞朝刊の一面の見出しが目に入りました。2007年に徘徊中の91歳(当時)男性が列車にはねられた事故をめぐり、最高裁の判決が下されたのです。監督義務者とされていた当時80代で要介護1の妻と別居の長男に対する1審、2審の賠償命令は棄却されました。この判決が出るまで、認知症者にかかわる人々の意見が新聞などにも取り上げられ、認知症者の家族の逆転勝訴という結果に対して、世間はおおむね妥当と落ち着いたように思います。

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