基礎から学ぶ! 事例でわかる! 訪問看護ステーションの事業承継(最終回)

経営者の高齢化等により注目されている事業承継。成功させるにはいくつかのポイントがあります。本連載では、事業承継とは何か、事業承継の流れ・留意点などの基礎知識を解説し、実際の支援事例を紹介します。

 

〈最終回〉

訪問看護の未来に手渡すバトン

坪田 康佑

つぼた こうすけ

訪問看護ステーション事業承継検討委員会

一般社団法人医療振興会代表理事

看護師/国会議員政策担当秘書

 

2025年4月、セントケアホールディングス株式会社は、訪問看護支援システム「看護のアイちゃん」などを所有するセントワークス株式会社の全株式を、ヘルスケアソリューション事業や在宅サービス事業を手がけるインターネットインフィニティ社に株式譲渡しました。この出来事は、訪問看護業界における事業承継が活発化し、日常的なトピックとなりつつあることを示しています。事業の「バトンタッチ」は今や当たり前の経営戦略として定着しつつあることを実感します。

 

さて、本連載もいよいよ最終回となりました。今回はこれまで紹介してきた内容を振り返りながら、訪問看護の事業承継の今後について述べてみたいと思います。

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映画と、生きるということ(18)


(No.18)

その人を“何もできない人”に

してしまわないように

『長いお別れ』

 


宇梶 智子

医療法人社団 一心会初富保健病院 看護部長/認定看護管理者

20〜30代のころは、夜勤明けでもミニシアターをめぐって、世界中のバラエティ豊かな映画を楽しんでいた。

そのほかの趣味は、韓国の食・ポップミュージックをはじめ、さまざまな文化を知ること。

 

 

ストーリー

 

物語は東家の4人を中心に展開していきます。校長を務めた厳格な父・昇平(山崎努)と良妻賢母そのものの母・曜子(松原智恵子)は、東京の郊外で暮らしています。

 

夫婦には2人の娘がいます。カリフォルニアで学者の夫と反抗期の息子・崇と暮らす長女の麻里(竹内結子)、そして実家から自立したものの、仕事も恋愛も続かないことに悩む次女の芙美(蒼井優)です。ある日、昇平の70歳の誕生日を祝うために、曜子から「お父さんの誕生日に帰っていらっしゃい」と招集され、久しぶりに帰省した麻里と芙美。家族4人で食卓を囲んで会話をしていると、娘たちは、昇平が麻里を芙美と間違えたり、自分の誕生日という認識がなかったり、さらには、ささいなことで憤慨して大声を上げるなどの変化を目の当たりに。「まさか……」と動揺しているところ、母親から、父が認知症になったことを告げられます。このシーンを皮切りに、東家の7年間の様子が描かれていきます。

 

本作は、優しさとユーモアにあふれ、父が記憶をなくしても、これまでとは違った形で、より深い絆で結ばれていく家族の姿に心打たれる物語です。

 

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【Book Selection】新刊書籍のご紹介

 

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〈新連載〉能登半島の災害から学ぶべきこと

〈新連載〉

第1 回

被災地の現実と

被災者支援の変革

 

酒井 明子

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福井大学名誉教授/

日本災害看護学会能登半島地震災害

看護プロジェクトリーダー

 

 

連載を始めるにあたって

 

「なぜ、能登半島地震から1年以上が経過した今、連載がスタートするのか?」と疑問に思った人もいるのではないでしょうか。一方で、「いや、今だから、考えるべきことがあり、伝えていく必要がある」と考える人も多いでしょう。

 

令和6年能登半島地震は、あまりにも多くの課題をわれわれに突きつけました。このため、多くの分野で検証が進んでおり、超高齢化・過疎化・人口減少社会に向けた提言がなされています。また、国の動きとしては、防災庁設置に向けた検討が開始されています。

 

筆者にとって、目の前の被災地の現実は、人間の尊厳とは何かを考えるきっかけになりました。石川県内の看護部長たちによる有志の会「能登の灯」では、現地での看護支援の状況について議論が交わされ、参加するたびに大きな学びにつながりました。震災時に看護職がどう動いたか検証をする中で、震災直後から行われた看護は、看護の本質につながるものであると確信するようになり、これをもっと広く伝え、これからの看護は何を変革すべきかについて考える機会を提供したいと思うようになりました。

 

本連載には、2つの目的があります。1つは、能登半島地震で看護がどう動いたかを広く発信することです。そのため、次回は「能登の灯」のメンバーに各病院が一丸となって能登を守った現場の状況について執筆してもらう予定です。さらに3回目以降では、本編とは別に看護がどう動いたかが見えるよう、現場スタッフの声をコラムで伝えます。

 

2つ目は、他の学問分野や関連分野との融合の重要性を伝えることです。学問の世界は専門分化が進み、それぞれの分野内で理論化や実践が行われています。しかし、災害時には、異なる分野との情報共有や協働実践が必要となります。激甚化する災害に対して、諸学問がともに社会に寄与する新たな知識を生み出す必要があります。本連載では、法学・社会学・都市工学の専門家、NPO団体、作家、行政など、それぞれの立場からも被災者支援のあり方について論じてもらう予定です。

 

看護職は人間の命や暮らし、尊厳を守る専門家として、能登半島地震から何を学び、何を明らかにし、何を伝え、何を提言していけるのか。そして、学問横断的知識が求められる災害看護は、どのような切り口から被災者支援の本質に迫ればよいのか。本連載がこうした問いへのヒントになればと思います。

 

→続きは本誌で(看護2025年6月号)

精神科訪問看護へようこそ

 

 

病棟から精神科訪問看護に飛び込んだこころさんが、看護大学で働くカワウソ先生との対話を通して在宅の精神科看護を学び、成長していく物語です。

 

川下 貴士 ●かわしも たかし

松蔭大学看護学部看護学科精神看護学 助教

 


 

第10回 電話対応は難しい? ②不安の背景を考える

 

前回のあらすじ

利用者Bさんは、次回の訪問日等の確認で頻回に電話をかけてきます。対応に困ったこころさんはカワウソ先生を訪ねるものの、「まずはその人自身を見ることが大切」と言われ……?

 

Bさんにとっての不安の種

 

カワウソ お待たせしました。授業はやっぱり難しいですね……どうすれば学生たちは精神科看護に興味を持ってくれるんでしょう?

 

こころ 先生にも難しいことってあるんですね、意外です! ところで授業の間、Bさんが不安に思っていることを私なりに考えてみたんです。

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