看護管理者のキャリア開発

 

病院の看護管理者を務めた経験を持つ方々が、その経験を生かしながら、新たなキャリアを展開している姿を紹介します。
第1回は、急性期病院の副院長・看護部長から
特別養護老人ホームの施設長に転身した池田惠津子さんです。

 


池田惠津子
社会福祉法人恩賜財団大阪府済生会吹田医療福祉センター
吹田特別養護老人ホーム高寿園施設長・片山地域包括支援センターセンター長
済生会吹田医療福祉センター 連携担当部長/認定看護管理者

 

いけだえつこ◉2002年に大阪府済生会吹田病院に入職。2008年から同院看護部長に就任し、2013年からは副院長を兼任。2016年に認定看護管理者となる。2019年から現職。済生会大阪府支部理事。吹田市養護老人ホーム入所検討会議委員、吹田保健所高齢者施設等感染対策支援検討会委員を務める。

 


第1回

介護施設と地域の課題解決に力を尽くす

 

介護施設こそ看護管理者の専門性が
大いに生かされる場

 

筆者は現在、特別養護老人ホーム(以下:特養)の施設長として勤務しており、看護師キャリアのセカンドステージを歩んでいます。前職は急性期病院の看護部長でした。病院を離れ、新たな領域である介護施設の運営に携わることになった当初は、経営の仕組みや組織運営、制度の違いなど、病院とはまったく異なる環境の中で戸惑うことも多くありました。しかし、徐々に状況を把握でき、施設長として運営全体が理解できるようになると、介護施設こそ、これまで看護管理者として培ってきた視点や専門性が大いに生かされる場であると実感しています。

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改正労働施策総合推進法施行前に知っておく カスタマーハラスメントの基礎知識

 

改正労働施策総合推進法施行を前に、カスタマーハラスメントの実際や、病院にもたらす影響を確認し、具体的に病院が取り組むべきことを伝えます。


三木 明子
関西医科大学 看護学部長 看護学研究科長

1999年、東京大学大学院医学系研究科精神保健・看護学分野博士課程修了。博士(保健学)。宮城大学看護学部、岡山大学医学部、筑波大学医学医療系、関西医科大学看護学部・看護学研究科教授を経て、2026年4月より現職。


第4回

実例から理解する病院に必要な

予防策と対応策①

 

今月号と次号では、実例に基づいて、カスタマーハラスメントの被害を最小にとどめるための予防策や対応策を紹介します。

 

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N.Focus ディーセント・ワークとジョブ・クラフティング 小さな工夫で生き生きと働ける職場へ




ディーセント・ワークとジョブ・クラフティング

小さな工夫で生き生きと働ける職場へ

 


山住 康恵●やまずみ やすえ

共立女子大学看護学部 准教授

 

[略歴]1994年より福岡県内の総合病院で勤務、2009年福岡県立大学看護学部助手、2012年同学部助教、2013年防衛医科大学校医学教育部看護学科講師、2016年共立女子大学看護学部専任講師を経て、2019年より現職。専門は看護管理、看護教育。

 


 

日々の業務に追われて見失った仕事のやりがいを、どう取り戻せばよいのか。働きがいを持って働くための視点として、「ディーセント・ワーク」と「ジョブ・クラフティング」の考え方を、実践例とともに紹介します。

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〈新連載〉わたしの推し本(1)


第 1 回『新装版 嘘の効用』

 

著者:末弘 嚴太郎 価格:2,640円(税込み) 発行:日本評論社

 


今月の推し人

 

任 和子

京都大学大学院 医学研究科人間健康科学系専攻 先端中核看護学講座生活習慣病看護学分野 教授

 


 

正論の板挟みに遭い、組織の硬直化にため息をついたことのない管理者はいないだろう。私は2011年から京都大学大学院で教授を務めているが、それ以前は京都大学医学部附属病院で副看護部長・看護部長を計6年間経験した。大きな組織のかじ取りを担う中で実感したのは、マニュアルや正論といった定規だけではかりきれない、人と人とが織りなす現場の奥深さと、それを整えることの難しさであった。そうした管理職としての私の長年の葛藤を、静かに言語化してくれたのが本書に収められた随筆「嘘の効用」である。

 

社会を回す“ゆとり”としての知恵

著者の末弘嚴太郎氏は、大正から昭和にかけて活躍した法学者である。本書で彼は、一般に悪とされる嘘が、実は法律や社会を円滑に動かすための重要な擬制(フィクション)や潤滑油として機能していることをユーモアたっぷりに論じている。

 

正直は美徳だが、実態に即さない厳格なルールを現場に強いれば、スタッフの自律性は失われ、結果として組織の活力を削ぐ。硬直した法律(ルール)と、変化し続ける複雑な人間社会。その間にあるギャップを埋めるためには、機械の「遊び」に相当する、適度な“ゆとり”が必要なのだ。

 

本書に出合ったのは、新装版が出版されたころであった★1。管理職時代から抱えていた後ろめたさの正体が解き明かされたように感じた。例えば、スタッフAがBの「言い方のきつさ」に悩み、一方でBはAの「仕事の雑さ」にいら立っているとする。管理者は両者の思いを受け止め、組織としての調和を保つために、対話を重ね、着地点を探る。こうした振る舞いは決して八方美人的な態度ではなく、相反する要素が絡み合う連立方程式を解くような、高度な知的作業なのである。

 

組織を救う「伸縮する尺度」

末弘氏が説く「規則的に伸縮する尺度」という考え方は、建前に縛られがちな組織を救う示唆に富む。医療現場において、安全を守るマニュアルは不可欠だが、それが現場の状況を無視した守れないルールの押しつけになってはいないだろうか。

 

末弘氏は「子どもに嘘つきが多いのは、親が頑迷な証拠」と述べている。これは、原因をスタッフ個人の資質に求めるのではなく、組織のルールの「硬さ」に目を向けてみようという、管理者への示唆に富んだ提言である。管理者の役割は、正論を振りかざすことではない。ルールやマニュアルという公平な尺度を持ちつつ、状況に応じて納得感のある“伸縮”をさせていくことだ。管理者が遊びを認め、現実的な解を見いだすその柔軟性が、スタッフが安心して誠実に働ける環境をつくる。

 

組織の壁に突き当たり、閉塞感を覚えたとき、ぜひこの古くて新しい名著を開いてほしい。そこには、しなやかに組織を導き、管理者をやさしく包んでくれる、自由で温かな知恵が詰まっている。

 

1 本書1980 年刊『末弘著作集Ⅳ』 底本とし、新装版として 2018 刊行された

 

→看護2026年3月号掲載

 

コミュニティケア冬号 寄稿

語りは重層的です。ある人のものがたりが語られるとき、記憶される経験が時を経て感じ方や考え方を変え、時にその人のものの見方を新たな視野へ、次の成長へと導いていきます。

 

嶋守 さやか しまもり さやか

桜花学園大学教育保育学部 教授

 

金城学院大学大学院文学研究科博士後期課程修了、社会学博士。著書に『孤独死の看取り』『虐待被害者という勿れ 虐待サバイバーという生き方』(新評論)などがある。2025年11月、研究テーマ「生ききるケアを生きる──よい訪問看護とは何か」を基に書き下ろした、『訪問看護ものがたり ご在宅の力』(同)を刊行。

 


 

看護とことば「ちょっと、やっぱり」

 

看護師たちの“語りの揺れ”

 

昨年の11月に『訪問看護師ものがたり ご在宅の力』を上梓しました。6人の訪問看護師へのインタビューをもとにしたこの書籍には、「人として生ききる」ことを最期まで諦めない人々に「沿う」ことで生まれた訪問看護師の語りが収録されています。社会学者として現象学的質的研究に取り組む私にとっては、一人の語り手によって語られる内容の順序や繰り返し、癖や言い淀みなどの“語りの揺れ”が、分析のための重要な手がかりとなります。それらを丁寧に追うことで、一人ひとりの看護師によって生きられる経験世界のかたちが見えてくるのです。

 

本稿では、そんなインタビューの中で、ある病棟の看護師が自身の看護についてどのように語ったのかを示したいと思います。その看護師をここではEさん(50歳代)と呼びましょう。彼女が過ごしてきた病棟での日常で何を目にし、どのように心に留め、自身の看護観に連動させていったのか。それを「ものがたり」、つまりEさんのナラティブ分析として描いていこうと思います。

 

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