地域ケアの今⑬

福祉現場をよく知る鳥海房枝さんと、在宅現場をよく知る上野まりさんのお二人が毎月交代で日々の思いを語り、地域での看護のあり方を考えます。

 

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生活習慣を尊重する介護
時代と地域性を反映させる

文:鳥海房枝

 

私は福祉サービスの第三者評価に携わっており、その際に保育園を訪れたときは、園児と同じ献立の食事を一緒にいただいています。3歳児以上のクラスでは、私たち評価者は子どもから見ると祖父母の年齢に近いためか、細々と食事の世話をしてくれます。世話をされるより世話をすることが「好き」な気持ちはよくわかります。また、2歳児のクラスでは、はしを上手に使って食事する子どもと、スプーンで食べる子どもがいて、はしを使っている子どもが誇らしそうに食べている姿が印象的です。食事が終わるとトイレに向かう子どもも多くいます。

 

0歳から年長さん(5、6歳)までを集団でみる保育園では、子どもが生活習慣を身につけていくプロセスがよくわかります。そして入浴がないだけで、子どもの食事・排泄動作を誘導する職員の姿は高齢者ケア施設の職員に共通するものを感じます。

 

介護の世界で“3大ケア”として支援の基本にしているのが、食事・排泄・入浴です。さらに、入所施設では就寝時の更衣支援も、QOLの向上に位置づけて取り組まれています。そしてこれらの支援の際には、高齢者個々の生活習慣を尊重することを重要視しています。

 

今回は、高齢者への介護で極めて当然のように言われている生活習慣についてあらためて考えてみます。3大ケアのそれぞれに「習慣」の文字をつなぐと、食事習慣・排泄習慣・入浴習慣のようになんの違和感もなく意味が通じます。また「文化」の文字も同様につなぐことができます。

 

 

 

生活習慣と人間の生理

 

食事習慣とは、食べ物を素手やはし・スプーン・フォーク等で口まで運ぶ方法や、正座・あぐら・椅子に座る等の食事の姿勢などを指します。

 

子どもの誕生時からの食事の世話は育児として周囲の人々が行いますが、嚥下や咀嚼は生き物の生理機能として獲得しているため、特に誰かが教えなくてもできます。一方、食べ物を口まで運ぶ方法は、幼児期に手づかみで口に運ぶところまでは人類共通ですが、その後、指先を上手に使う、はし・スプーン・フォーク等の道具を使うといった食べ方に分かれます。また、安全な嚥下のために顎を引いた軽い前傾の姿勢(食事摂取の姿勢)は人類共通ですが、正座・片ひざ立ち・あぐら・椅子に座るなどの食事の姿勢は国や民族などによって異なります。

 

→続きは本誌で(コミュニティケア2016年10月号)