基礎から学ぶ! 事例でわかる! 訪問看護ステーションの事業承継(22)

経営者の高齢化等により注目されている事業承継。成功させるにはいくつかのポイントがあります。本連載では、事業承継とは何か、事業承継の流れ・留意点などの基礎知識を解説し、実際の支援事例を紹介します。

 

 

事業承継・引継ぎ支援センター」と

「よろず支援拠点」

坪田 康佑

つぼた こうすけ

訪問看護ステーション事業承継検討委員会

一般社団法人医療振興会代表理事

看護師/国会議員政策担当秘書

 

 

事業承継のご相談はお早めに

 

訪問看護ステーションの経営者は、事業を始めた段階から「いつかは自分も誰かに引き継ぐのだ」という意識を持ち、日常的に準備を進めておくことが非常に重要です。しかし実際には、「自分はまだ元気だし、経営も順調だから」と、事業承継について考えることに抵抗を感じる経営者も少なくありません。

 

また、中小企業庁の「2023年版 中小企業白書」1)によると、後継者へのバトンタッチに向けた準備には少なくとも1年以上を要したケースが半数以上でした。本格的な承継に向けた組織体制の調整・整備などにかかる手間を考慮すれば、より長い期間が必要になることも珍しくないため、すでに事業承継を考え始めている人も、できるだけ早くから準備をしておく必要があります。

 

3月号では、経済産業省による事業承継の支援施策である「事業承継・引継ぎ支援センター」(以下、支援センター)2)を紹介しました。全国47都道府県に設置されており、いざというときに頼れる公的な支援機関ですが、実際にはどう活用すればよいのかがわからず、利用に踏み出せない訪問看護事業者も多いのではないでしょうか。そこで今回は、そのような経営者が将来の事業承継に向けて一歩踏み出せるように、支援センターについてあらためて説明し、その母体である経営相談の窓口「よろず支援拠点」の活用方法も併せて紹介します。

 

「事業承継・引継ぎ支援センター」の活用

 

❶多様な売却対象でのサポート

支援センターは、2011年に経済産業省が全国に設置した「事業引継ぎ支援センター」と、2014年度にスタートした「後継者人材バンク事業」を合併して設立しました。第三者への売却だけでなく、親族や社内の役員・従業員への承継、M&A(事業の売買)に関することまで幅広い相談に対応します。また、M&Aアドバイザーや仲介会社の場合は第三者への事業承継を中心とした相談を対象としていますが、支援センターでは、事業主が引退を考える場合のあらゆるケースをサポートします。

 

例えば、親族内での承継では「事業承継計画」の策定支援が受けられるほか、税務面の相談も可能です。社内での承継を進めたい場合には、後継者となる役員や従業員側へのアドバイスやフォローも丁寧に行ってくれます。また、M&Aを視野に入れている事業主であれば、買い手の探し方やさまざまな手続きについてもしっかりとサポートするなど、多様なニーズに柔軟に対応しています。

 

そのほかに、訪問看護事業ならではの悩みとして利用者との関係やスタッフの雇用の問題など、引き継ぎに伴うデリケートな問題が挙げられるでしょう。こうした課題についても、プロの視点でアドバイスを受けることができます。

 

→続きは本誌で(コミュニティケア2025年5月号)

市民とともに歩むナースたち(5)

「People-Centered Care(PCC)」とは、市民が主体となり保健医療専門職とパートナーを組み、個人や地域社会における健康課題の改善に取り組むことです。本連載では聖路加国際大学のPCC 事業の中で経験した「個人や地域社会における健康課題の改善」を紹介します。

 

田中 加苗 ● たなか かなえ

聖路加国際大学大学院看護学研究科 助教

 

小野 若菜子 ● おの わかなこ

東京都立大学健康福祉学部看護学科 教授

 

中村 めぐみ ● なかむら めぐみ

聖路加国際大学PCC開発・地域連携室 マネジャー

 


まちのグリーフカフェ「しん・呼吸」

市民活動団体や市民サポーターとの協働

 

 

まちのグリーフカフェをつくる

 

グリーフとは、「喪失によって生じる深い悲しみや苦悩」であり、悲嘆とも言います。そして、グリーフとして現れるさまざまな感情や行動を正常なものとして受け止め、その気持ちを察し、寄り添う姿勢に基づいた支援がグリーフケアです。筆者らは、喪失の中でも死別に着目し、“大切な人を亡くされた経験を語りあう会:まちのグリーフカフェ「しん・呼吸」”(以下:「しん・呼吸」)を市民活動団体や市民サポーターと協力して開催しています。

 

最初に、「しん・呼吸」の始まり、協働のプロセスをご説明します。

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医療安全トピックス vol.173

 

■VOL.173

吉田 ちひろ

日本看護協会看護開発部看護業務・医療安全課

 

医療安全の確保・推進に向けた

2025年度の日本看護協会の取り組みについて

 

日本看護協会は、看護が提供されるあらゆる場での安全の確保と推進をめざして、事故の未然防止・再発防止の視点で医療安全事業の取り組みを進めています。本稿では、2024年度の主な取り組みを踏まえ、2025年度の医療安全事業を概観します。

 

●2024年度の取り組みの概要について

2024年度は、事故の未然防止、再発防止に向けた取り組みを中心に行いました。

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【Book Selection】新刊書籍のご紹介

 

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看護職に選ばれる病院・施設(18)

各都道府県ナースセンターが病院や施設向けに実施している定着・促進事業の中で得られた「看護職に選ばれる病院・施設」になるためのポイントや、具体例を紹介します!

 

 

vol.18 大分県ナースセンターからの提案!

求職者一人ひとりの状況に合わせた

柔軟な対応と支援を!

 

玉井 保子

大分県看護協会 副会長

大分県ナースセンター ナースセンター長

 

本稿では新規事業として取り組んだ「看護師等再就職おうえん事業」について報告。さらに、支援の中で見いだされた選ばれる病院・施設の特徴を解説し、看護管理者が実践すべきことを提言します。

 

大分県の現状

 

大分県の総人口は、2022年の約110万人から2035年には約89万人まで減少し、高齢化率は33.9%から39.3%に増加すると推計されています。人口減少や高齢化が進む中、今後看護職をどう確保していくかは大きな課題となっています。

 

2022年度の看護職数は約2万1,000人で、人口10万人当たりの看護職数は全国7位と高い水準にありますが、県庁所在地の大分市や隣接する別府市に偏在しており、それ以外の医療圏との差が顕著です。また、中小規模病院が多く、人口10万人当たりの病院病床数は全国7位(2023年度)と多いことから、各医療圏とも看護職の充足率が低く、不足感が強くなっていると考えられます。

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