映画と、生きるということ(20)


(No.20)

虚構世界と現実世界

『バービー』

 


岩田 健太郎

神戸大学大学院医学研究科 教授/神戸大学医学部附属病院感染症内科 診療科長
感染症内科医。『ワクチンを学び直す』『抗HIV/エイズ薬の考え方、使い方、そして飲み方ver.3』など著書多数。趣味は、映画や落語の鑑賞、スポーツ観戦など。

 

 

着せ替え人形「バービー」の実写映画

 

2023年のヒット作。超面白かった。未見の方はぜひご覧いただきたい素晴らしい作品だ。バービー(Barbie)は言わずと知れた着せ替え人形である。私も娘に買ったことがあるけれども、本作を観るまではバービーを製造したマテル社のことも、バービーを考案したマテル社のルース・ハンドラーのことも何も知らなかった。しかし、それでも心配はない。本作はバービーや着せ替え人形の知識や思い出が皆無な人も、バービー大好きで遊びまくっていた人も、等しく楽しめる娯楽映画になっている。本作は非常に巧妙につくられた映画で、観客のバックグラウンドによって観方が異なる映画であるにもかかわらず、それぞれ異なる楽しみ方ができる重層構造をしているのだ。そこが作り手の巧みさだと私は思った。海原雄山的なうんちく満載の食マニアも、日本食は初めての外国人も、等しく満足させるような懐石料理と言えば伝わるだろうか……いや、伝わらない(笑)。

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【Book Selection】新刊書籍のご紹介

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医療行政なるほど塾

骨太方針2025を閣議決定
社会保障費の伸びに物価・賃上げ相当分を反映

 

「社会保険旬報」編集部

 

 

政府は6月13日、「経済財政運営と改革の基本方針2025」(骨太の方針2025)を閣議決定しました(図表1)。来年度予算編成における社会保障費については、高齢化による増加分に相当する伸びに加え、「経済・物価動向等を踏まえた対応に相当する増加分を加算する」と明記。物価・賃金の上昇によって厳しい経営環境に置かれている医療・介護分野に対し、診療報酬や介護報酬で対応する考えを示しています。

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市民とともに歩むナースたち(8)

「People-Centered Care(PCC)」とは、市民が主体となり保健医療専門職とパートナーを組み、個人や地域社会における健康課題の改善に取り組むことです。本連載では聖路加国際大学のPCC 事業の中で経験した「個人や地域社会における健康課題の改善」を紹介します。

 

亀井 智子  かめい ともこ

聖路加国際大学看護学部 学部長

大学院看護学研究科 教授

 


多世代交流型デイプログラム 聖路加 和みの会

一人ひとりが輝くための世代間交流支援

 

わが国は世界でも類を見ないスピードで少子超高齢化が進展し、現在では総人口の約30%を65歳以上の高齢者が占めています1)。こうした社会の変化は、医療・看護のあり方を根本から見直す必要性を私たちに突きつけています。特に看護においては、病気等の治療だけでなく、高齢者が住み慣れた地域で、自らの生活を意味あるものと感じ、社会の一員として役割を持ち続けられるよう支える視点が求められます。

 

これまでの高齢者ケアでは、加齢に伴う心身・認知的な機能低下に焦点が当てられ、「支える側(若い世代・専門職)」「支えられる側(高齢者)」という一方向的な関係性が前提とされてきました。しかし、高齢者の語りに耳を傾けると、彼らは単に援助を受ける対象ではなく、人生経験の豊かさや深い知恵、社会に貢献したいという意欲を持つ主体的な存在であることがわかります。

 

そこで本稿では、筆者らがこれまで老年看護の実践・教育・研究を通じて重視してきた2つの概念である「互恵性」「世代継承性」を中心に、高齢者と子どもがともに輝く支援の実際を説明します。

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看護と経営(16)

 

●監修 福井 トシ子

国際医療福祉大学大学院副大学院長/教授

●企画協力

鳥海 和輝

『Gem Med』編集主幹

小野田 舞

一般社団法人看護系学会等社会保険連合 事務局長

 

診療報酬等に関連する用語の理解や管理指標の持つ意味、病院機能ごとの経営の考え方について解説するとともに、事例を通じて、看護管理者が病院経営に貢献するためのヒントを探ります。

*vol.1〜6は【解説編】、vol.7以降は【実践編】となります。

 


 

vol.16 実践編⑩

看護部・診療部・医事課が連携し「加算の確実な算定」を

 

鳥海 和輝

とりうみ・かずき◉大学卒業後、社会保障系出版社に勤務。医療保

険専門誌、介護保険専門誌の記者やデスク等を経て現職。現在、

ニュースサイト『Gem Med』にて、医療政策・行政情報を発信し

ている。

 

 

病院の「収益増」のために、最も重要な取り組みの一つとして「加算の取得・算定」が挙げられます。出来高病院ではもちろん、DPC病院でも「加算」の取得が極めて重要であるため、今号では、適切な取得・算定方法を考えてみます。

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