生きるということ

「生と死」を
思わざるを得なかった日々

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鳥越俊太郎[ニュースの職人]

 

1940年生まれ。福岡県吉井町(現・うきは市)出身。京都大学文学部卒業後、毎日新聞社に入社。新潟支局、大阪社会部、東京社会部、「サンデー毎日」編集部に所属し、外信部(テヘラン特派員)を経て1988年4月より「サンデー毎日」編集長。1989年に退職して以降、テレビ朝日系列「ザ・スクープ」「サンデージャングル」でキャスターを務めるなど、テレビメディアに活動の場を移した。現在もさまざまなメディアで「ニュースの職人」として活躍中。著書に『人間力の磨き方』(講談社新書)『食べてよく寝て鍛えなさい』(内外出版社)など多数。

 

先日私の友人が脊柱管狭窄症で手術を受けた。全身麻酔が初めてで、不安だという。そこで私は言ってやった。

 

「麻酔学はものすごく進んでいるんだって。あんまり心配しなくていいんじゃない?」

 

こういう時には自分の体験を話すに限る。

 

私は全身麻酔の手術を10回受けている。

①難聴解消のための内耳の手術

②大腸がん摘出手術

③左肺への転移摘出手術

④右肺への転移同

⑤肝臓への転移同

⑥胃のGIST摘出手術

⑦脊柱管狭窄症手術

⑧同上

⑨同上

⑩同上

 

ちょっと見ただけでも難解そうな手術。

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【SPECIAL BOOK GUIDE】AI時代、人間にしか果たせない「新たな価値創造」『DXとポートフォリオで未来教育』が刊行

DX(デジタルトランスフォーメーション)★1により社会が大きく変わろうとする今、教育においても根本的な変革が始まっています。鈴木敏恵さん(未来教育デザイナー・一級建築士)による新刊『DXとポートフォリオで未来教育—対話でかなえる学びとキャリアのデザイン』は、DXで教育や人材育成、キャリア支援はどう変わるのか、その実現のプロセス、デジタル空間をステージに、ポートフォリオで躍動的に主体性や創造性を高める手法を解説します。

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生きるということ

 

人生は苦しい。人生は虚しい。

そして人生は美しい

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前川喜平[元・文部科学省 事務次官]

 

1955年奈良県生まれ。1979年東京大学法学部卒業後、文部省(現・文部科学省)入省。大臣官房長、初等中等教育局長などを経て、2016年文部科学事務次官、2017年退官。現在、現代教育行政研究会代表。福島市と厚木市で自主夜間中学のボランティア講師も務める。著書に『面従腹背』『権力は腐敗する』(毎日新聞出版)、『コロナ期の学校と教育政策』(論創社)など。

 

学生時代、私は仏教青年会に入っていた。と言ってもメンバーは各学年に1人か2人しかいなかった。ダンマパダやスッタニパータといった原始仏典(もちろん原語ではなく現代日本語訳)の読書会をやったり、秋月龍珉師という師家の指導で座禅修行をしたりしていた。悟りを開く境地には到底達しなかったが、今日の私の人生観や世界観の大元は仏教を通じて形成されたといっていい。

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生きるということ

 

命の普遍性と、
1回きりの個人の人生を尊ぶ

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小島慶子[エッセイスト・タレント]

 

1972年オーストラリア生まれ。学習院大学法学部政治学科卒業後、1995年にTBSに入社。1999年第36回ギャラクシーDJパーソナリティー賞を受賞。2010年に独立後は各種メディア出演、執筆・講演活動を精力的に行っている。『AERA』『日経ARIA』『講談社mi-mollet』など連載多数。2014年より、オーストラリア・パースに教育移住。夫と2人の息子はオーストラリアで生活し、自身は日本に仕事のベースを置いて、日豪を行き来している。2017年東京大学大学院情報学環客員研究員。新刊『おっさん社会が生きづらい』(PHP新書)が好評発売中。

 

コロナ禍の最中に、2度入院しました。1度目は未明に突然の激しい腹痛と下血に襲われ、自分で救急車を呼びました。到着した救急隊の方がたは、狭い部屋で床に丸まってうんうん唸っている私を手際よく担架に乗せてくれました。運ばれながらオーストラリアで暮らす夫に電話し、「今から〇〇病院に搬送される、生きているから安心して、ではまた後ほど」と報告。夫もさぞ驚いたでしょう。

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生きるということ

経験して初めて思い知る

生と死の深さ

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小池真理子[作家]

 

1952年東京生まれ。成蹊大学文学部卒業。1989年『妻の女友達』で日本推理作家協会賞、1995年『恋』で直木賞、1998年『欲望』で島清恋愛文学賞、2006年『虹の彼方』で柴田錬三郎賞、2011年『無花果の森』で芸術選奨文部科学大臣賞、2013年『沈黙のひと』で吉川英治文学賞を受賞。近著に『神よ憐れみたまえ』、夫との死別を綴ったエッセイ集『月夜の森の梟』、『アナベル・リイ』などがある。

 

 

2009年に父を、2013年に母を、そして2020年に夫を見送り、昨年は愛猫を看取った。友人や作家仲間との別れも相次ぎ、この十年あまりは喪失の連続だった。

 

加えて、考えてもみなかった疫病が蔓延し、会いたい人と自由に会えなくなった。私ほどの年齢になると、残り時間はそう長くはないので、会えないままサヨナラなのか、と思うことも少なくない。有名な漢詩を「サヨナラダケガ人生ダ」と意訳したのは、井伏鱒二という作家だが、本当にその通りだと思う。

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