訪問看護ステーションの経営戦略(14)

訪問看護ステーションの管理者が地域のニーズを的確に捉えて健全

な経営を行い、その理念を実現するために行うべきことを、公認会

計士・税理士・看護師の資格を持つ筆者が解説します。

決算書を読める管理者になろう(2)
損益計算書

渡邉 尚之

 

皆さんは自分の訪問看護ステーションの決算書の一部である「損益計算書」を見たことはありますか? 損益計算書は1年間の経営成績を示すものです。そのため経営者や管理者は、自ステーションの経営成績を把握するために、これを理解することが重要です。

 

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地域ケアの今(42)

福祉現場をよく知る鳥海房枝さんと、在宅現場をよく知る上野まりさんのお二人が毎月交代で日々の思いを語り、地域での看護のあり方を考えます。

 

「昭和、平成……そして新たな時代へ」

文:上野まり

 

もうすぐ平成時代が終わりを告げます。昭和後期と平成を生き抜き、いよいよ自らが高齢者となる時代が現実となって迫ってくるのを実感します。そこで今回は過去を振り返り、新たな時代について少し考えてみようと思います。

 

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訪問看護ステーションの経営戦略(13)

訪問看護ステーションの管理者が地域のニーズを的確に捉えて健全

な経営を行い、その理念を実現するために行うべきことを、公認会

計士・税理士・看護師の資格を持つ筆者が解説します。

 

決算書を読める
管理者になろう(1)
総論

渡邉 尚之

 

皆さんは自法人の決算書の数値を把握していますか? 例えば、前年度は黒字でしたか赤字でしたか、また売上高や人件費はいくらだったでしょうか。現預金は前期と比較して増減しましたか、借入金の残高は減りましたか。そしてこれらの数値からわかる自ステーションの経営課題を理解しているでしょうか?

 

筆者の経験では、これらの決算書の数値や経営課題を把握している訪問看護ステーション管理者は多くない印象があります。中には「数字は苦手だから」と、一度もじっくり見たことがないという管理者もいました。

 

しかし、決算書には経営課題や経営改善のヒントが豊富に含まれています。そのため決算書が読めないのは、経営管理の観点からは非常にもったいないことです。これは、経営者と管理者が異なるステーションでも同様です。管理者は訪問看護ステーション運営の中心的存在であり、その問題意識・当事者意識・モチベーションの有無が経営に大きく影響するからです。この視点からも、管理者が決算書を読む(読めるようになる)ことは非常に重要です。

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地域ケアの今(41)

福祉現場をよく知る鳥海房枝さんと、在宅現場をよく知る上野まりさんのお二人が毎月交代で日々の思いを語り、地域での看護のあり方を考えます。

 

「舌でつぶせる料理を出すレストラン」

の出現に思う

文:鳥海房枝

 

高齢社会の到来をしみじみと感じるのは、商売の対象を高齢者とするCMがさまざまな分野に及んでいるのを目の当たりにするときです。これは、自らが高齢者の範疇に入る当事者だからかもしれません。以前、本欄に、全国のどこに行っても通所介護サービスの送迎車が必ず目に入ると書いたことがあります(2016年6月号)。今日、介護サービスは日本の隅々にまで行きわたり、地方都市で目立つ大きな建物の多くは高齢者ケア施設です。

 

介護保険法が施行されてから20年を迎えようとしています。同法の施行当初は、要介護認定の申請やサービス利用を躊躇する人々を「当然の権利」という言葉によって、いかに掘り起こすかが議論されていました。それが現在では、介護サービスの利用は多くの人々にとって特別なものではなくなりました。そして介護領域だけでなく、老いや死にまつわるものとして、健康食品や化粧品、葬儀からお墓の管理までが宣伝されています。これらは明らかに高齢者をターゲットにした商業活動です。高齢者人口が3割に達しようとしているのですから、高齢者を対象とする商業活動が活発になるのも当然です。

 

このような動きが、介護現場などより先行していると思わされる出来事がありました。

 

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特別寄稿 特養あずみの里裁判② 弁護側証人の鑑定と意見

長野県にある「特別養護老人ホームあずみの里」で、提供されたおやつを食べた女性入所者が意識を失っているところを発見されました。女性は救急搬送され、意識が戻らないまま病院で亡くなりました。この出来事は、現在、刑事事件として訴追されています。2018年11月号に掲載した「事件の概要と裁判の経過」に続き、本稿では、第19回公判に弁護側証人として出廷した川嶋みどりさんに、その内容の報告と看護師としての立場からのご意見をいただきます。

 

 

弁護側証人として

 

2018年7月2日、私は「特養あずみの里業務上過失致死事件裁判(以下、特養あずみの里裁判)」の弁護側証人として、第19回公判に出廷し、証言台に立ちました。特養あずみの里裁判では、それまで証人尋問や被告人尋問が行われてきましたが、今回の公判をもって証拠調べの段階が終了することになっていました。

 

特養あずみの里裁判は当初から看護職・介護職の注目を集め、無罪を勝ち取るために多くの支援がなされてきました。それはこの裁判が不当なものであり、その判決には日本の看護・介護の未来と高齢者の尊厳がかかっている、と誰もが感じたからではないでしょうか。

 

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