「渡辺式家族アセスメント/支援モデル」をベースとした人間関係「見える化」シートによる分析やアプローチ方法、カンファレンスの進め方について解説します。
家族内、援助者と家族の
悪循環パターンに気づき是正する①
渡辺 裕子
今回も引き続き、利用者ご本人やご家族、あるいは周囲のスタッフとのかかわりに悩んだときに、その困難な状況をどのように理解したらよいのか、必要となる視点についてお話ししたいと思います。今回と次回の2回にわたって考えるのは、「悪循環パターン」です。
今回は、ある事例をご紹介します。そして次回は、その事例のその後の展開と事例の持つ意味について、「悪循環パターン」という視点から掘り下げてみたいと思います。なお、ご紹介する事例は、いくつかのエピソードをつなぎ合わせたフィクションであることを申し添えます。
サービス付き高齢者向け住宅に
入居するAさんご夫婦
Aさんご夫婦は、とあるサービス付き高齢者向け住宅の夫婦部屋に入居して3年になります。
夫であるAさんは、83歳、要介護1。2年前に転倒し、腰椎を圧迫骨折して以来、車いすが必要となりました。入浴に介助を要するほか、最近では排泄の失敗も見られるようになってきました。年齢相応の物忘れはありますが、毎朝じっくりと新聞に目を通すのを日課としており、認知機能に問題はありません。若いころから酒好きで、毎日2合程度の晩酌を楽しみにしています。
妻であるBさんは82歳、要支援2。専業主婦で、勤めに出た経験はありません。50代のころは、山歩きが趣味で活動的に過ごしていたとのことです。現在は、胸の不快感、胃のつかえ感、頭痛、だるさ、気分不良など、多様な症状を訴えていますが、検査所見はこれといったものがありません。常に「気持ちがスッキリしない」と言うBさんは、週2回、夫婦で連れ立って出かけるデイサービス以外は、部屋にこもっていることが多くなっています。