怒りの感情と上手に付き合う手法“アンガーマネジメント”を看護職が医療・介護現場で生かすための、基礎知識と看護実践への活用のポイントを解説します。
怒りは“第二次感情”
光前 麻由美
怒りは空から急に降ってくるものではありません。その発生には、仕組みや構造があります。怒りは“第二次感情”と呼ばれています。第二次というからには、“第一次感情”が存在します。
怒りを氷山に例えて考えてみましょう。氷山のうち海面から出ているのはほんの一部に過ぎず、水面下に隠れている部分のほうが大きいことはご存知かと思います。怒りは、この海面上に見えている部分に当たります。私たちは自分が怒りを感じたときや他人が怒っているときに、その怒りに意識を向けがちです。しかし、実はその水面下には不安・悲しみ・寂しさ・虚しさ・罪悪感・焦燥感といった感情が隠れているのです。この隠れた感情が第一次感情です。
本当の気持ちに目を向けよう
私たちには、自分がこうしたい・こうありたい、他者にこうしてほしい・こうあってほしいという期待や欲求があります。感情はこれに伴って生まれます。不安や悲しみといった第一次感情をうまく他者に伝えられなかったり、状況が理想どおりにならなかったりするときに、私たちは怒りという第二次感情を使って伝えようとするのです。
しかし、怒りにまかせた発言や行動は言い過ぎたりやり過ぎたりして後悔しやすく、また本当に伝えたいことが伝わりにくいものです。
そんなときは怒りの裏側にある本当の気持ち(第一次感情)に目を向けると、伝わりやすくなります。例えば、「自分の力だけではできるかどうか不安だから助けてほしい」「期限が迫り焦っているので、急がせるような言動をしないでほしい。また、その状況や気持ちを察してほしい」など、第一次感情は何か、本当はどうしてほしいのかを考え、伝えるようにしましょう。
怒りの仕組みを知り、第一次感情に目を向けることは、療養者や家族、医療職・介護職といった周囲の人との関係性の改善にもつながります。自分の本当の気持ちに気づけるようになると、他者の気持ちにも気づきやすくなります。
→続きは本誌で(コミュニティケア2019年6月号)