「渡辺式家族アセスメント/支援モデル」をベースとした人間関係「見える化」シートによる分析やアプローチ方法、カンファレンスの進め方について解説します。
描いていたストーリーからの脱却
リフレーミングということ
渡辺 裕子
はじめに
本連載では、「人間関係『見える化』シート」をご紹介するに当たり、まずはそのシートの根底にある概念についてご紹介しています。
今回は、前回ご紹介した事例を基に、「リフレーミング」(枠組みの転換)、「ストーリーとしての理解」について考えてみたいと思います。
前号で紹介した事例の概要
駆け出しの保健師だった筆者に、町の要職にあるBさんから「曽祖父の婚外子の配偶者である高齢のAさんが、自宅に引きこもって困っている」と相談があった。なんとかAさんに会いたいと訪問を重ねるが、扉は開かず、手詰まりな状態となる。そんなときに、課内の職員が「見も知らねぇ人が押しかけて来るんじゃ、おっかなくて、自分の身を守るしかねえべなぁ」と漏らした。この一言から、事態が展開し始めた。
課内の職員の一言がもたらしたもの
それまでの私は、Aさんに対して、「認知能力や生活能力が低下した人」「精神症状におびえている人」というイメージを抱いていました。しかし、課内の職員の「おっかなくて身を守る」「もともとまわりと付き合いのなかった家」「役場の人間が行ったって、『はい、そうですか』っていうワケにはいかない」といった発言から、Aさんの言動が、至極当然のこととして腑に落ちたのです。「今までの普通の暮らしがなんらかの原因でできなくなり、なんとか力になろうと周囲の人が呼びかけているけれど、それがAさんにとっては困りごととなっている。Aさんには周囲の人への信頼や社会的な経験が少ないがゆえに、周囲を拒否することで、やっと自分の身を守っている」のだと、私はAさんの状況をストーリーとして理解することができるようになりました。
→続きは本誌で(コミュニティケア2019年6月号)