
「People-Centered Care(PCC)」とは、市民が主体となり保健医療専門職とパートナーを組み、個人や地域社会における健康課題の改善に取り組むことです。本連載では聖路加国際大学のPCC 事業の中で経験した「個人や地域社会における健康課題の改善」を紹介します。
鈴木 貴子 ● すずき たかこ
聖路加国際大学PCC開発地域連携室
看護師・鍼灸師
「聖路加健康ナビスポット「るかなび」:健康相談」
その人の持つ力を信じて、できることをともに考える
看護師による健康相談
今回は、本誌2025年1・2月号で紹介した聖路加健康ナビスポット「るかなび」(以下:るかなび)の活動の1つ「健康相談」について詳しく説明します(次ページ囲み参照)。
●相談に訪れる人々の困り事
医療機関ではない、地域に開かれた場所のため、看護師に話をする気軽さもあるのでしょう。複数の身体的な困り事を抱えている人や、生活上の制限にストレスも相まって悩みが複雑化している人、医療機関で異常は指摘されないが不調が続き途方に暮れている人、病院での検査結果を一緒に見てほしい人、精神的な不安を話しに来る人、子どもとの接し方に悩む人など、来訪者は多種多様です。疾患も、がんや脳血管系、運動器系、不定愁訴など多岐にわたります。
医療現場では、患者への説明に時間をかけたのに、後日確認すると「実は理解していなかった」ということがよくあります。るかなびへ相談に訪れる人々も「食事に気をつけるには、具体的にどうすればよいのか」「医師の説明は受けたけど、結局どういう病気かよくわからない」「家で考えていたら、わからないことがたくさん出てきた」「主治医に聞いていいのかわからない」「先生も看護師さんも忙しそうだし、声をかけられない」と、病気の理解のみならず、病院で説明されたことを生活の中に落とし込めない、知りたいことを医療者にうまく聞けない、といった困り事で訪れます。
医療現場の多忙さに起因することもありますが、病院の緊張した中で説明を聞き、「家に帰ってホッしたら、いろいろと聞きたいことやわからないことが出てきて……」と話す人も少なくありません。中には、主治医との意思疎通がうまくいかず、医療者や医療機関に対する不満を訴える場合もあります。そのため、相談者が病気や困り事についてどのように感じ、何を考えているのか、相談に来るまでにどんな出来事があったのか、価値観や人生観も含めて、「語りをありのままに聴くこと」を大切にしています。
→続きは本誌で(コミュニティケア2025年12月号)







