トシコとヒロミの往復書簡 第9回

本連載では、聖路加国際大学大学院看護学研究科特任教授の井部俊子さんと、訪問看護パリアン看護部長の川越博美さんが、往復書簡をとおして病院看護と訪問看護のよりよい未来を描きます。さあ、どんな未来が見えてくるのでしょう。

 

井部さんイラスト右向き06

 

井部俊子さんから川越博美さんへの手紙

命の絆をみる力

文:井部俊子

 

 

先月の往復書簡の執筆中にお母さまが亡くなられたということですね。お悔やみ申し上げます。あなたの手紙は卓越した訪問看護師のケアのドキュメントとして秀逸でした。

 

91歳のお母さまは広島から東京のあなたがたの家に来て、2年数カ月の生活だったそうですね。月に5泊のショートステイをプランし、要介護5の療養生活を全うされました。

 

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地域ケアの今⑨ 

福祉現場をよく知る鳥海房枝さんと、在宅現場をよく知る上野まりさんのお二人が毎月交代で日々の思いを語り、地域での看護のあり方を考えます。

 

1606鳥海様

団塊の世代として介護予防を考える

文:鳥海房枝

 

 

町から姿を消した高齢者

 

地方都市の空港や主要駅に降り立ち、車で少し街中に入っていくと通所介護サービスの送迎車に必ず出会います。そして、威風堂々とした立派なものから普通の民家風のものまで、高齢者を対象にした事業を行う建物が、幹線道路沿いや細い路地に面して建っているのを数多く目にします。それと反比例するように、シルバーカーを押して道路脇を歩く高齢者や、道端などになんとなく集まった風情で話をしている高齢者たちを見かけることは極めてまれになりました。

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トシコとヒロミの往復書簡 第8回

本連載では、聖路加国際大学大学院看護学研究科特任教授の井部俊子さんと、訪問看護パリアン看護部長の川越博美さんが、往復書簡をとおして病院看護と訪問看護のよりよい未来を描きます。さあ、どんな未来が見えてくるのでしょう。

 

川越さんイラスト

 

川越博美さんから井部俊子さんへの手紙
母の看取りから考えた訪問看護のあり方
文:川越博美

 

 

この歳になって初めて花粉症になりました。そのため、頭がよく働かないまま手紙を書いています。『コミュニティケア』に掲載されるころには症状も収まっていることでしょう。

 

井部さんのお手紙は、診療報酬改定の詳細な内容でした。現場にいる私たちがあの時点で正確な情報を得るには、かなりの努力が必要です。大変参考になりました。ありがとうございます。

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地域ケアの今⑧

福祉現場をよく知る鳥海房枝さんと、在宅現場をよく知る上野まりさんのお二人が毎月交代で日々の思いを語り、地域での看護のあり方を考えます。

 

地域ケア上野さん

「世話すること・されること」の価値を実感できる社会に

文:上野まり

 

「認知症事故 家族責任なし」。2016年3月2日の読売新聞朝刊の一面の見出しが目に入りました。2007年に徘徊中の91歳(当時)男性が列車にはねられた事故をめぐり、最高裁の判決が下されたのです。監督義務者とされていた当時80代で要介護1の妻と別居の長男に対する1審、2審の賠償命令は棄却されました。この判決が出るまで、認知症者にかかわる人々の意見が新聞などにも取り上げられ、認知症者の家族の逆転勝訴という結果に対して、世間はおおむね妥当と落ち着いたように思います。

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トシコとヒロミの往復書簡 第7回

本連載では、聖路加国際大学学長の井部俊子さんと、訪問看護パリアン看護部長の川越博美さんが、往復書簡をとおして病院看護と訪問看護のよりよい未来を描きます。さあ、どんな未来が見えてくるのでしょう。

 

井部さんイラスト右向き

 

井部俊子さんから川越博美さんへの手紙

診療報酬改定と訪問看護の「評価」

文:井部俊子

 

 

2016年の立春も過ぎ、「春は名のみの風の寒さや」と歌う『早春賦』が思い出されます。『コミュニティケア』4月号が読者に届くころは、新人看護師が初めての職場で、“恍惚と不安”の中にいるかもしれません。

 

看護管理者は、活躍してくれた仲間の退職の申し出に「とても悲しい思い」をすると、前回の手紙に書いていましたね。私も同感です。管理者は毎年、スタッフの退職という“対象喪失”を経験して悔やみます。そして辞めていく看護師に苛立ち、退職を申し出た日から退職の日まで、ツンツンしてしまうという事態が起きることもあります。一方、スタッフからみると、それまで同志のように働いてきた上司が、手のひらを返したような冷たい対応をとることに心を痛めます。新人管理者は、対象喪失からなかなか抜け切れないでいると、抑うつ的になり意欲を失います。管理者はこのような体験を積み重ねて、自己を律して気持ちを切り替えるという修練をするのですよね。私は、そうした中にいる若い管理者には、「それでも『あなたとまた仕事をしたいと思っている』というメッセージを退職するスタッフに伝えなければならない」と言いたいと思います。決して“けんか別れ”をしてはいけないのです。

 

→続きは本誌で(コミュニティケア2016年4月号)