トシコとヒロミの往復書簡 第11回

本連載では、聖路加国際大学大学院看護学研究科特任教授の井部俊子さんと、訪問看護パリアン看護部長の川越博美さんが、往復書簡をとおして病院看護と訪問看護のよりよい未来を描きます。さあ、どんな未来が見えてくるのでしょう。

 

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井部俊子さんから川越博美さんへの手紙

訪問看護ステーションビジネス

文:井部俊子

 

 

先月号は、お互いの親の看取りを語り合いましたね。拙著『マネジメントの探究』(ライフサポート社, 2007)も手にとっていただきありがとうございました。余談ですが、先日、日本クリティカルケア看護学会学術集会で看護管理の講演をする機会があり、自分の本の紹介をしました。講演を終えると参加者の1人が「本が売れていますよ」と言って近づいて来たので、どうしてわかるのかと問うたところ、講演中にAmazonで購入を始めた人がいて、売れ行きがわかったというのです。何人かは私の話を聞きながら、Amazonで注文していたようです。翌日、ライフサポート社から連絡があり、『マネジメントの探究』が急に動き始めたが、残り少ないので増刷すべきか考えているということでした。私は元来、自分の著書を自分で宣伝することは「恥ずかしながら」避けてきましたが、本が売れないと絶版になってしまうので「恥ずかしながら」はやめようと思った次第です。

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地域ケアの今⑪

福祉現場をよく知る鳥海房枝さんと、在宅現場をよく知る上野まりさんのお二人が毎月交代で日々の思いを語り、地域での看護のあり方を考えます。

 

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災害への新しい備え方

文:鳥海房枝

 

 

震度7という途方もない揺れに2度もみまわれ、2カ月半が過ぎても震度3〜4の余震が熊本県、大分県を襲っています。揺れのすさまじさは、勇壮な武者返しの石垣に象徴される熊本城が映画のセットに見えるほど破壊されている映像や、大きな被害がないように見えても地割れが家屋の下を縦走している映像から伝わってきます。

 

1995年1月の阪神淡路大震災、2004年10月の新潟県中越地震、2011年3月の東日本大震災、そしてこのたびの熊本地震は、ここ20年の間に相次いで発生し、大きな災害として歴史に残るでしょう。日常をなんとなく過ごしながら、実は「歴史的な事象の真っただ中にいるのかもしれない」と感じる自分がいます。そして、震災に対する人々の受け止め方も目に見える形で変化しているように思います。

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さまざまな生活の場での看取りに学ぶ「最期までその人らしく生ききる」ことを支援する看護ケア

宮崎 和加子(みやざき・わかこ)さん
前・一般社団法人全国訪問看護事業協会事務局長
1977年、東京大学医学部附属看護学校卒業。
健和会柳原病院にて訪問看護に従事した後、1992年に東京都指定第1号となる北千住訪問看護ステーションを開設、
同所長に就任。
その後、健和会訪問看護ステーション統括所長、グループホーム福さん家ホーム長、社会福祉法人すこやか福祉会理事、
健和会看護介護政策研究所所長、
社団法人全国訪問看護事業協会事務局次長、
一般社団法人全国訪問看護事業協会事務局長を歴任。

 

在宅・施設での看取りのケア本人・家族が満足できる看取りとは―?「生活の場」での看取りケアの実践書『在宅・施設での看取りのケア―自宅、看多機、ホームホスピス、グループホーム、特養で最期まで本人・家族を支えるために』の著者の1人で、日本の訪問看護の第一人者である宮崎和加子さんに、看取りのケアにおいて大切なことや本書の活用方法についてうかがいました。

 

 

 

 

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トシコとヒロミの往復書簡 第9回

本連載では、聖路加国際大学大学院看護学研究科特任教授の井部俊子さんと、訪問看護パリアン看護部長の川越博美さんが、往復書簡をとおして病院看護と訪問看護のよりよい未来を描きます。さあ、どんな未来が見えてくるのでしょう。

 

井部さんイラスト右向き06

 

井部俊子さんから川越博美さんへの手紙

命の絆をみる力

文:井部俊子

 

 

先月の往復書簡の執筆中にお母さまが亡くなられたということですね。お悔やみ申し上げます。あなたの手紙は卓越した訪問看護師のケアのドキュメントとして秀逸でした。

 

91歳のお母さまは広島から東京のあなたがたの家に来て、2年数カ月の生活だったそうですね。月に5泊のショートステイをプランし、要介護5の療養生活を全うされました。

 

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地域ケアの今⑨ 

福祉現場をよく知る鳥海房枝さんと、在宅現場をよく知る上野まりさんのお二人が毎月交代で日々の思いを語り、地域での看護のあり方を考えます。

 

1606鳥海様

団塊の世代として介護予防を考える

文:鳥海房枝

 

 

町から姿を消した高齢者

 

地方都市の空港や主要駅に降り立ち、車で少し街中に入っていくと通所介護サービスの送迎車に必ず出会います。そして、威風堂々とした立派なものから普通の民家風のものまで、高齢者を対象にした事業を行う建物が、幹線道路沿いや細い路地に面して建っているのを数多く目にします。それと反比例するように、シルバーカーを押して道路脇を歩く高齢者や、道端などになんとなく集まった風情で話をしている高齢者たちを見かけることは極めてまれになりました。

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