地域ケアの今(28)

福祉現場をよく知る鳥海房枝さんと、在宅現場をよく知る上野まりさんのお二人が毎月交代で日々の思いを語り、地域での看護のあり方を考えます。

AIが活躍する新たな社会とは

文:上野まり

 

最近、「AI」(Artificial Intelligence:人工知能)という言葉を頻繁に目や耳にするようになりました。AIの定義はあいまいですが、コンピューターを進化させて人工的につくられた人間と同様の知能のことです。目的を設定すると多大な情報を統合して分析し、その結果に基づいて行動するため、最近ではプロの棋士と将棋の対戦をしたり、車の自動走行に活用したり、時には人間の能力を超える力をさまざまな場で披露し、とても頼もしい存在になりつつあります。


AIが活躍する時代の到来

先日、脳神経外科の医師からAIについて話を聞く機会がありました。わが国の脳神経外科の分野では、10年以上前に国家プロジェクトで、人間の脳とコンピューターを接続して脳の深部に刺激を与える脳深部刺激療法(DBS: Deep Brain Stimulation)が開発されたそうです。現在では、パーキンソン病やジストニアの患者に用いられ、正常に働かなくなった脳の特定部位にコンピューター(刺激装置)を接続し、電気刺激を与え、神経症状を緩和・改善させる治療法です。これにより、患者の生活の大きな支障となる不随意運動を抑制します。その効果は画期的で、今日では保険適用となっています。今後は、このコンピューターの機能を、AIが担う時代が来るのではないかという話でした。

AIに代わるとどうなるのでしょうか。AIは単に膨大な情報を処理するだけではなく、AI自身が学習し、人間の指示を待たずに自動的に進化を続けます。この仕組みは“ブラックボックス”といわれ、AIが判断した結果の根拠となるデータやその分析方法を人間がわからなくなっていくわけです。もし、AIの判断に疑問を持ったとしても、ブラックボックスを理解できないため、人間には反論する術はなく、ただAIの判断に従うしかなくなるのでしょう。つまり、現在のコンピューターを用いた治療では、傷害を受けた一部の脳機能をコンピューターで補うという、あくまで人間の脳が主体ですが、脳がAIとつながると、脳の中でAIが進化し、支配する可能性が出てくるというのです。

 

→続きは本誌で(コミュニティケア2018年1月号)