訪問看護ステーションの経営戦略(2)

訪問看護ステーションの管理者が地域のニーズを的確に捉えて健全

な経営を行い、その理念を実現するために行うべきことを、公認会

計士・税理士・看護師の資格を持つ筆者が解説します。

訪問看護ステーションの経営理念

渡邉 尚之

 

 

皆さんの訪問看護ステーションに「経営理念」はありますか?

 

経営理念とは、端的にいえば「訪問看護ステーションという事業を通じて何をしたいか」という“思い”です。法人の存在意義といってもよいでしょう。最近では「クレド」(ラテン語で「信条」の意味)と呼ぶ会社もあります。

 

この経営理念について、「抽象的でよくわからない」「必要だとは思うが、決め方がわからない」といった声も多く聞かれます。そこで、今回は経営理念の必要性とつくり方について解説します。

 

経営理念が必要な理由
“行き当たりばったり経営”のリスク

 

自身の病院での勤務経験などを振り返るとイメージしやすいと思いますが、ほとんどの病院には理念があります。時々、病院の理念と経営理念は違うのではないかという質問がありますが、病院も収益を上げ、利益を得なければ倒産してしまいます。経営活動を行う点では共通しており、病院の理念も経営理念といえます。

 

過去に勤務した病院などで、この理念を唱和したこと、あるいは1ページ目に理念が掲載された「職員心得」のような小冊子を配布されたことはありませんか? 私の以前の勤務先では、隔週月曜日の朝礼で全社員が経営理念を唱和していました(今でも暗記しています)。

 

このように経営理念を掲げ、それを浸透させる意味や効果はどこにあるのでしょうか。経営理念がなければ、経営者自身がなんのために事業を行っているかの目的を見失う可能性があります。また一緒に働くスタッフにステーションや創設者の考え・価値観などを共有することもできません。さらに利用者やその家族・外部業者などにも自ステーションの存在意義を理解してもらうことも難しいでしょう。ステーションの思いを表現した経営理念があれば、そのステーションが何を大切にしているのか、利用者にどんな看護を提供したいのかという価値観をスタッフと共有し、同時に利用者や地域へアピールすることができます。

 

つまり、経営理念を掲げることで、経営において1本の大きな柱ができるのです。この柱がないと、理念の一貫しない“行き当たりばったり経営”となる危険性があります。そのため、訪問看護ステーションが経営理念を掲げることは重要だといえます。

 

 

経営理念のつくり方

 

経営理念は事業への思いを示すものなので、決まった作成手順があるわけではありません。経営者自身が「経営理念は○○」と掲げれば、それが経営理念となります。とはいえ、いきなり自分の思いを掲げるといっても、ピンと来ない人も多いでしょう。

 

そこで、1つの方法として、次の3ステップで経営理念を作成する方法を紹介します。

 

 

→続きは本誌で(コミュニティケア2018年2月号)