骨太方針2025を閣議決定
社会保障費の伸びに物価・賃上げ相当分を反映
「社会保険旬報」編集部
政府は6月13日、「経済財政運営と改革の基本方針2025」(骨太の方針2025)を閣議決定しました(図表1)。来年度予算編成における社会保障費については、高齢化による増加分に相当する伸びに加え、「経済・物価動向等を踏まえた対応に相当する増加分を加算する」と明記。物価・賃金の上昇によって厳しい経営環境に置かれている医療・介護分野に対し、診療報酬や介護報酬で対応する考えを示しています。
「People-Centered Care(PCC)」とは、市民が主体となり保健医療専門職とパートナーを組み、個人や地域社会における健康課題の改善に取り組むことです。本連載では聖路加国際大学のPCC 事業の中で経験した「個人や地域社会における健康課題の改善」を紹介します。
亀井 智子 ● かめい ともこ
聖路加国際大学看護学部 学部長
大学院看護学研究科 教授
多世代交流型デイプログラム 聖路加 和みの会
一人ひとりが輝くための世代間交流支援
わが国は世界でも類を見ないスピードで少子超高齢化が進展し、現在では総人口の約30%を65歳以上の高齢者が占めています1)。こうした社会の変化は、医療・看護のあり方を根本から見直す必要性を私たちに突きつけています。特に看護においては、病気等の治療だけでなく、高齢者が住み慣れた地域で、自らの生活を意味あるものと感じ、社会の一員として役割を持ち続けられるよう支える視点が求められます。
これまでの高齢者ケアでは、加齢に伴う心身・認知的な機能低下に焦点が当てられ、「支える側(若い世代・専門職)」「支えられる側(高齢者)」という一方向的な関係性が前提とされてきました。しかし、高齢者の語りに耳を傾けると、彼らは単に援助を受ける対象ではなく、人生経験の豊かさや深い知恵、社会に貢献したいという意欲を持つ主体的な存在であることがわかります。
そこで本稿では、筆者らがこれまで老年看護の実践・教育・研究を通じて重視してきた2つの概念である「互恵性」「世代継承性」を中心に、高齢者と子どもがともに輝く支援の実際を説明します。
●監修 福井 トシ子
国際医療福祉大学大学院副大学院長/教授
●企画協力
鳥海 和輝
『Gem Med』編集主幹
小野田 舞
一般社団法人看護系学会等社会保険連合 事務局長
診療報酬等に関連する用語の理解や管理指標の持つ意味、病院機能ごとの経営の考え方について解説するとともに、事例を通じて、看護管理者が病院経営に貢献するためのヒントを探ります。
*vol.1〜6は【解説編】、vol.7以降は【実践編】となります。
vol.16 実践編⑩
看護部・診療部・医事課が連携し「加算の確実な算定」を
鳥海 和輝
とりうみ・かずき◉大学卒業後、社会保障系出版社に勤務。医療保
険専門誌、介護保険専門誌の記者やデスク等を経て現職。現在、
ニュースサイト『Gem Med』にて、医療政策・行政情報を発信し
ている。
病院の「収益増」のために、最も重要な取り組みの一つとして「加算の取得・算定」が挙げられます。出来高病院ではもちろん、DPC病院でも「加算」の取得が極めて重要であるため、今号では、適切な取得・算定方法を考えてみます。
第2回
震災時に看護はどう動いたか
「能登の灯」の会からの報告
中村 真寿美◉金沢医科大学病院病院企画室部長 前副院長兼看護部長
2013年石川県立看護大学大学院看護学研究科博士前期課程修了。2024年10月より現職。認定看護管理者。
澤味 小百合◉公立能登総合病院 副院長兼看護部長
2014年石川県立看護大学大学院看護学研究科博士前期課程修了。2019年4月より現職。認定看護管理者。
中西 容子◉金沢市立病院教育研究開発センターセンター長前看護部長
2011年金沢大学大学院医学系研究科博士前期課程修了。2024年4月より現職。認定看護管理者。
想定外の連続に立ち向かった看護活動
中村真寿美
はじめに
令和6年能登半島地震から1年以上が経過しましたが、能登はようやく復旧・復興が始まったばかりです。この震災は、地域医療体制の脆弱さを浮き彫りにしました。当時、筆者を含め、災害対応に奔走した医療機関の看護部長は、それぞれの知見と経験を生かし、困難に立ち向かいました。しかし、災害は一つの医療機関だけではなく、地域全体の問題です。被災地を含むすべての医療機関の間で情報共有・病床調整・看護職員の人員調整をする仕組みがないために、苦慮する経験が多々ありました。
(No.18)
その人を“何もできない人”に
してしまわないように
『長いお別れ』
宇梶 智子
医療法人社団 一心会初富保健病院 看護部長/認定看護管理者
20〜30代のころは、夜勤明けでもミニシアターをめぐって、世界中のバラエティ豊かな映画を楽しんでいた。
そのほかの趣味は、韓国の食・ポップミュージックをはじめ、さまざまな文化を知ること。
ストーリー
物語は東家の4人を中心に展開していきます。校長を務めた厳格な父・昇平(山崎努)と良妻賢母そのものの母・曜子(松原智恵子)は、東京の郊外で暮らしています。
夫婦には2人の娘がいます。カリフォルニアで学者の夫と反抗期の息子・崇と暮らす長女の麻里(竹内結子)、そして実家から自立したものの、仕事も恋愛も続かないことに悩む次女の芙美(蒼井優)です。ある日、昇平の70歳の誕生日を祝うために、曜子から「お父さんの誕生日に帰っていらっしゃい」と招集され、久しぶりに帰省した麻里と芙美。家族4人で食卓を囲んで会話をしていると、娘たちは、昇平が麻里を芙美と間違えたり、自分の誕生日という認識がなかったり、さらには、ささいなことで憤慨して大声を上げるなどの変化を目の当たりに。「まさか……」と動揺しているところ、母親から、父が認知症になったことを告げられます。このシーンを皮切りに、東家の7年間の様子が描かれていきます。
本作は、優しさとユーモアにあふれ、父が記憶をなくしても、これまでとは違った形で、より深い絆で結ばれていく家族の姿に心打たれる物語です。