看護と経営(16)

 

●監修 福井 トシ子

国際医療福祉大学大学院副大学院長/教授

●企画協力

鳥海 和輝

『Gem Med』編集主幹

小野田 舞

一般社団法人看護系学会等社会保険連合 事務局長

 

診療報酬等に関連する用語の理解や管理指標の持つ意味、病院機能ごとの経営の考え方について解説するとともに、事例を通じて、看護管理者が病院経営に貢献するためのヒントを探ります。

*vol.1〜6は【解説編】、vol.7以降は【実践編】となります。

 


 

vol.16 実践編⑩

看護部・診療部・医事課が連携し「加算の確実な算定」を

 

鳥海 和輝

とりうみ・かずき◉大学卒業後、社会保障系出版社に勤務。医療保

険専門誌、介護保険専門誌の記者やデスク等を経て現職。現在、

ニュースサイト『Gem Med』にて、医療政策・行政情報を発信し

ている。

 

 

病院の「収益増」のために、最も重要な取り組みの一つとして「加算の取得・算定」が挙げられます。出来高病院ではもちろん、DPC病院でも「加算」の取得が極めて重要であるため、今号では、適切な取得・算定方法を考えてみます。

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能登半島の災害から学ぶべきこと

 

第2回

震災時に看護はどう動いたか
「能登の灯」の会からの報告

 

中村 真寿美◉金沢医科大学病院病院企画室部長 前副院長兼看護部長

2013年石川県立看護大学大学院看護学研究科博士前期課程修了。2024年10月より現職。認定看護管理者。

 

澤味 小百合◉公立能登総合病院 副院長兼看護部長

2014年石川県立看護大学大学院看護学研究科博士前期課程修了。2019年4月より現職。認定看護管理者。

 

中西 容子◉金沢市立病院教育研究開発センターセンター長前看護部長

2011年金沢大学大学院医学系研究科博士前期課程修了。2024年4月より現職。認定看護管理者。

 


想定外の連続に立ち向かった看護活動

中村真寿美

 

はじめに

 

令和6年能登半島地震から1年以上が経過しましたが、能登はようやく復旧・復興が始まったばかりです。この震災は、地域医療体制の脆弱さを浮き彫りにしました。当時、筆者を含め、災害対応に奔走した医療機関の看護部長は、それぞれの知見と経験を生かし、困難に立ち向かいました。しかし、災害は一つの医療機関だけではなく、地域全体の問題です。被災地を含むすべての医療機関の間で情報共有・病床調整・看護職員の人員調整をする仕組みがないために、苦慮する経験が多々ありました。

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映画と、生きるということ(18)


(No.18)

その人を“何もできない人”に

してしまわないように

『長いお別れ』

 


宇梶 智子

医療法人社団 一心会初富保健病院 看護部長/認定看護管理者

20〜30代のころは、夜勤明けでもミニシアターをめぐって、世界中のバラエティ豊かな映画を楽しんでいた。

そのほかの趣味は、韓国の食・ポップミュージックをはじめ、さまざまな文化を知ること。

 

 

ストーリー

 

物語は東家の4人を中心に展開していきます。校長を務めた厳格な父・昇平(山崎努)と良妻賢母そのものの母・曜子(松原智恵子)は、東京の郊外で暮らしています。

 

夫婦には2人の娘がいます。カリフォルニアで学者の夫と反抗期の息子・崇と暮らす長女の麻里(竹内結子)、そして実家から自立したものの、仕事も恋愛も続かないことに悩む次女の芙美(蒼井優)です。ある日、昇平の70歳の誕生日を祝うために、曜子から「お父さんの誕生日に帰っていらっしゃい」と招集され、久しぶりに帰省した麻里と芙美。家族4人で食卓を囲んで会話をしていると、娘たちは、昇平が麻里を芙美と間違えたり、自分の誕生日という認識がなかったり、さらには、ささいなことで憤慨して大声を上げるなどの変化を目の当たりに。「まさか……」と動揺しているところ、母親から、父が認知症になったことを告げられます。このシーンを皮切りに、東家の7年間の様子が描かれていきます。

 

本作は、優しさとユーモアにあふれ、父が記憶をなくしても、これまでとは違った形で、より深い絆で結ばれていく家族の姿に心打たれる物語です。

 

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【Book Selection】新刊書籍のご紹介

 

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〈新連載〉能登半島の災害から学ぶべきこと

〈新連載〉

第1 回

被災地の現実と

被災者支援の変革

 

酒井 明子

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福井大学名誉教授/

日本災害看護学会能登半島地震災害

看護プロジェクトリーダー

 

 

連載を始めるにあたって

 

「なぜ、能登半島地震から1年以上が経過した今、連載がスタートするのか?」と疑問に思った人もいるのではないでしょうか。一方で、「いや、今だから、考えるべきことがあり、伝えていく必要がある」と考える人も多いでしょう。

 

令和6年能登半島地震は、あまりにも多くの課題をわれわれに突きつけました。このため、多くの分野で検証が進んでおり、超高齢化・過疎化・人口減少社会に向けた提言がなされています。また、国の動きとしては、防災庁設置に向けた検討が開始されています。

 

筆者にとって、目の前の被災地の現実は、人間の尊厳とは何かを考えるきっかけになりました。石川県内の看護部長たちによる有志の会「能登の灯」では、現地での看護支援の状況について議論が交わされ、参加するたびに大きな学びにつながりました。震災時に看護職がどう動いたか検証をする中で、震災直後から行われた看護は、看護の本質につながるものであると確信するようになり、これをもっと広く伝え、これからの看護は何を変革すべきかについて考える機会を提供したいと思うようになりました。

 

本連載には、2つの目的があります。1つは、能登半島地震で看護がどう動いたかを広く発信することです。そのため、次回は「能登の灯」のメンバーに各病院が一丸となって能登を守った現場の状況について執筆してもらう予定です。さらに3回目以降では、本編とは別に看護がどう動いたかが見えるよう、現場スタッフの声をコラムで伝えます。

 

2つ目は、他の学問分野や関連分野との融合の重要性を伝えることです。学問の世界は専門分化が進み、それぞれの分野内で理論化や実践が行われています。しかし、災害時には、異なる分野との情報共有や協働実践が必要となります。激甚化する災害に対して、諸学問がともに社会に寄与する新たな知識を生み出す必要があります。本連載では、法学・社会学・都市工学の専門家、NPO団体、作家、行政など、それぞれの立場からも被災者支援のあり方について論じてもらう予定です。

 

看護職は人間の命や暮らし、尊厳を守る専門家として、能登半島地震から何を学び、何を明らかにし、何を伝え、何を提言していけるのか。そして、学問横断的知識が求められる災害看護は、どのような切り口から被災者支援の本質に迫ればよいのか。本連載がこうした問いへのヒントになればと思います。

 

→続きは本誌で(看護2025年6月号)