地域ケアの今⑳

福祉現場をよく知る鳥海房枝さんと、在宅現場をよく知る上野まりさんのお二人が毎月交代で日々の思いを語り、地域での看護のあり方を考えます。

コミュニティとは

文:上野まり

 

先日、ある研修会でワールド・カフェとやらに参加する機会がありました。数人の見知らぬ人たちと輪になって、1つのお題についてあれこれと思いを語り、時間になると次は別の人たちと輪になってまたそのお題について語り合い、最後は元いた輪に戻って再度、話し合うというユニークな座談会のようなものでした。このときのお題は「今後、地域の住民の暮らしを支えるために、どんなケアが求められているのか」。その中で、ある人が投げかけた1つの問いに考えさせられました。それは「そもそも自分にとってコミュニティとはなんだろう?」というものでした。
本誌のタイトルにもあり、地域看護や在宅看護、被災地支援などで頻繁に耳にする言葉ですが、あらためて考えたことがなかったため、その問いは私にとって妙に新鮮に響きました。そこで、今回は「コミュニティ」について考えてみようと思います。

多種多様なコミュニティ

辞書によるとコミュニティとは、「①人々が共同体意識を持って共同生活を営む一定の地域、およびその人々の集団。地域社会。共同体。②インターネット上で、共通の関心をもちメッセージのやりとりを行う人々の集まり。③ アメリカの社会学者マッキーバー(R. M. MacIver)が定式化した社会類型の一。血縁・地縁など自然的結合により共同生活を営む社会集団。→ アソシエーション」(大辞林第三版,三省堂.)とあります。 なるほど、さまざまな意味を包含している言葉なのだと認識し直しました。
人が社会の中で生きていく上で、どの共同体にも属さないということは、ほぼあり得ないと思います。人は生まれた直後から「家族」という最小単位の血縁集団に属しています。たとえ生後すぐに産みの母や父と別れたとしても、なんらかの生活共同体に属さなければ、生きていくことはできないでしょう。
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トシコとヒロミの往復書簡 第20回

本連載では、聖路加国際大学大学院看護学研究科特任教授の井部俊子さんと、訪問看護パリアン看護部長の川越博美さんが、往復書簡をとおして病院看護と訪問看護のよりよい未来を描きます。さあ、どんな未来が見えてくるのでしょう。

川越さんイラスト

川越博美さんから井部俊子さんへの手紙

人の変化を見守る
文:川越博美


私たちが往復書簡を始めて2年近くになるのですね。私が現場で腑に落ちないことをぶつけては井部さんに諭されてきたような気がします。ナマの川越をいつかまじまじと見てくださいね。頭は白髪で顔には皺……でも若い看護師たちと一緒に働き、地域の人々と新しいことにチャレンジしています。私もナマの井部さんにお目にかかりたいと思っていたら、井部さんの最終講義があることを知りました。「しめた」と思い手帳を開けたら、ほかの予定が入っていてチャンスを逃しました。聴講した友人が、マネジメントについての講演だったと教えてくれました。
マネジメントは、病院の看護職だけでなく訪問看護師にも必要な能力です。しかし、ケアマネジャーが登場して以来、訪問看護師にマネジメント能力が問われなくなってきた気がします。訪問看護師には本来、ケアマネジメントに加え、事業所のマネジメント、チームのマネジメント、地域のマネジメントなど重要な役割が課されているというのに。いつか井部さんに、地域の看護師を対象にマネジメントについて話してほしいと願っています。
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トシコとヒロミの往復書簡 第19回

本連載では、聖路加国際大学大学院看護学研究科特任教授の井部俊子さんと、訪問看護パリアン看護部長の川越博美さんが、往復書簡をとおして病院看護と訪問看護のよりよい未来を描きます。さあ、どんな未来が見えてくるのでしょう。

 

井部俊子さんから川越博美さんへの手紙

守備範囲の拡大

文:井部俊子

 

私たちの往復書簡も19回目になるのですね。そういえば連載初回の対談以来、一度もナマの川越さんにお会いしていないなと思いつつ、「刺激的で変化に富んだ今」を送っているあなたを想像しています。

 

75歳未満は准高齢者にしたらどうかと日本老年医学会が提唱していると、先日の新聞が報じていました。私は出産・子育てを経験していないので、今でも若者気分が抜けず、街を行く女子のファッションが気になり、自分ならあんな色づかいはしないわ、などとライバル意識(?)を燃やしたりします。そして、もうそんな年ではないことに気づき現実に戻るのです。世の中の高齢者は、何の抵抗もなく自分の老いを受け入れていくのでしょうか。私はまだ“否認”のステージに固着しています。

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地域ケアの今⑲

福祉現場をよく知る鳥海房枝さんと、在宅現場をよく知る上野まりさんのお二人が毎月交代で日々の思いを語り、地域での看護のあり方を考えます。

 

高齢者への支援を考える

自立支援から看取りまで

文:鳥海房枝

 

介護現場では、高齢者ができないことを介護者が“肩代わりしてあげる”のではなく、自身が行えるように支援する視点が重要と言われています。これが自立支援に結びつけられて、オムツ使用からトイレ誘導へ、経管栄養から経口摂取へなど、熱心に取り組む高齢者ケア施設が増えています。そして、オムツ使用者ゼロや食事の全量摂取、1日の水分摂取量1000〜1500mLなどをその成果として発表しているのを目にします。

 

私はこれらを取り組みの成果として聞きながら、その一方で、ここに死をどのように肯定的に位置づけて支援しているのかを聞きたくなります。なぜなら高齢者の暮らしの中で、死は特別なものではなく、命を生き抜いた先にあるものだからです。その意味で生と死は連続しています。

地域ケア・在宅ケアに携わる人のための月刊誌「コミュニティケア」のご紹介

地域ケア・在宅ケアの話題は本誌でも折々に取り上げていますが、姉妹誌「コミュニティケア」(以下:CC)では、毎月、より詳しくお伝えしています。地域包括ケアの時代、本誌の主な読者である病院看護職の皆さまにもぜひ併せてお読みいただきたい雑誌です。今回は4月号の内容を一部ご紹介します。

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