地域ケアの今(26)

福祉現場をよく知る鳥海房枝さんと、在宅現場をよく知る上野まりさんのお二人が毎月交代で日々の思いを語り、地域での看護のあり方を考えます。

散歩の効能

文:上野まり

 

いきなり私事で恐縮ですが、雨の日以外は大学まで徒歩で通勤しています。大学は自宅の最寄り駅の反対側にあり、自宅も大学も丘の上にあるため、坂道を下ったり上ったりするルートです。そのおかげか、平日は1日1万歩ほど歩いています。初めのうちは周囲に「それはよい運動ね! さぞかし痩せるでしょう」と言われていましたが、1年半がたち「どうして痩せないの? タラタラ歩いているんじゃない?」と厳しい指摘を受けています。


感性を磨く時間

今の大学に勤務するまでの約20年間は、バスと電車で片道1、2時間かけて通勤していました。電車に乗り遅れないよう走り、押し合いへし合い状態の車両に揺られ、勤務先に着くだけで疲れ果てていました。

 

しかし今は、信号を渡るときに小走りする程度で、人混みに押しつぶされることはありません。夏の暑い時期は、早めに家を出てまわりの景色を堪能しながらゆっくり歩いてみると、40年以上も住んでいる町なのに、これまで知らなかった発見がたくさんありました。駅に行くまでの抜け道があることや、ウグイスの鳴き声が聞こえることに気づきました。また、町中であるにもかかわらず、駅の近くに赤い屋根の牛舎も見つけました。牛舎の隣の畑には、立派なダイコンやキャベツ、それらが収穫された後はサトイモの葉っぱらしきものが見られました。今度は何を植えるのかな?と小さな楽しみになりました。また、畑の隣の空き地はきれいな花が一面に咲き、片隅に立つサルスベリの木にも花がたわわに咲き乱れ、その鮮やかな色に思わず目がとまりました。サルスベリの花は小さな花が集まって1つの大きな花のようになっており、まわりにはハチが飛び交い、甘い蜜が詰まっているようでした。恥ずかしながら、サルスベリの花の色に白色があることも初めて知りました。