トシコとヒロミの往復書簡 第24回〈最終回〉

本連載では、聖路加国際大学大学院看護学研究科特任教授の井部俊子さんと、訪問看護パリアン看護部長の川越博美さんが、往復書簡をとおして病院看護と訪問看護のよりよい未来を描きます。さあ、どんな未来が見えてくるのでしょう。

 

川越さんイラスト

川越博美さんから井部俊子さんへの手紙

看護の本質と与えられた課題
文:川越博美


2年にわたる往復書簡の、井部さんからの最後の手紙を読ませていただきました。長い間、後輩の私にお付き合いくださったことに感謝しています。紙面上で個人的なことも共有し、井部さんのご両親や私の母の死のことも語り合えて本当によかった。年老いた親は自分の老いや死をとおして、看護師である私たち娘に、人生の最期を看ることについて無言で教えてくれていたのですね。

 

本当のことを言うと、2年間の手紙の中で、私とは少し考えが違うなと思うこともありました。でも前回の手紙は、1つひとつうなずきながら読みました。病院・在宅とフィールドを異にしても、看護は同じなのだとあらためて思いました。病院での治療中心の看護と在宅での生活中心の看護を、相対するものとして考えがちですが、そこに流れる看護の本質は変わらないのだと教えられました。2年間で一番、心揺さぶられた手紙でした。

最近、40年以上前の看護学生時代に習ったことをよく思い出します。看護の本質は、場所だけではなく、時が変わっても変わらないのかもしれません。「患者や家族の苦しみ・悲しみ・喜びを感じ、それに対して看護師として何ができるか考える。その経験をとおして自分が学び成長する」。どの先生の言葉だったかは思い出せません。この手紙を書いているときに、恩師・日野原重明先生の訃報を聞きました。日野原先生は私が大学1年生のときによど号ハイジャック事件の人質になり、無事解放されて、授業の中でその経験を生々しく話されました。もしかしたら日野原先生の言葉だったのでしょうか。


→続きは本誌で(コミュニティケア2017年9月号)