SPECIAL BOOK GUIDE 看護職の持つ可能性を最大限に発揮する ナイチンゲールの「越境」が看護にもたらしたもの


クリミアでの活躍で一躍英雄となったナイチンゲールは、類まれな知力・思考力・行動力で公衆衛生改革に邁進し、また看護教育制度の確立に努め、それまで卑しい職業と思われていた看護師のイメージ像を飛躍的に向上させました。一方で、「歴史上初の病院建築家」「統計学の母」とも言われるように、彼女の活躍は「看護」にとどまりません。ナイチンゲールが確固たる信念の下に行った既存の枠からの「越境」は、看護にどのような影響を与えたのかについて考えます。

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特別寄稿

日本国内でも医療従事者を対象にした新型コロナワクチンの接種が始まりました。しかし医療従事者の中にも、このワクチンの有効性や安全性について疑問を持つ人が少なくありません。そこで本稿では、新型コロナワクチンを正しく理解するために、ワクチンの開発経緯や効果・副反応などについて詳しく解説します。

 

 

新型コロナワクチンの正しい知識と理解を

 

峰 宗太郎

みね そうたろう

米国立研究機関 博士研究員

医師/薬剤師

 

筆者略歴

京都大学薬学部、名古屋大学医学部医学科卒業、東京大学大学院医学系研究科修了。国立国際医療研修センター病院、国立感染症研究所等を経て、2018年より現職。病理専門医。医学博士。共著で「新型コロナとワクチン 知らないと不都合な真実」(日本経済新聞出版)発刊。

 

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2021年2月17日、日本でも医療従事者を対象とした新型コロナワクチンの接種が始まりました。新型コロナウイルス感染症の重症化リスクの高い高齢者や基礎疾患のある人を守るためには、ワクチンの普及率を上げることが重要です。しかし、感染対策の決め手として期待する半面、ワクチンが非常に早く開発・実用化できたことに対して、不安や不信感を抱いている人も少なくないと思います。

 

本稿では、新型コロナワクチンに関する正しい知識と理解を深めるために、ワクチンの開発・実用化に至るまでの経緯をはじめ、効果・副反応、接種時の注意点について解説します。

 

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人事労務相談室❶

訪問看護ステーションや高齢者ケア施設で

生じやすい人事労務に関するトラブルと対応策、

またトラブルの防止策について解説いただきます。

 

社会保険労務士の活用

 

中山 伸雄

なかやま のぶお

社会保険労務士法人Nice-One 代表 / 社会保険労務士

 

 

「社会保険労務士って、何をしてくれる人ですか?」と、質問を受けることがあります。一方で、すでにお付き合いのある事業所からは、「社会保険労務士って、そんなことまでしてくれるのですか」と、言われることがあります。

このたび、社会保険労務士(以下:社労士)の立場で連載執筆の依頼を受けました。連載開始に当たって、まずは皆さんに社労士の業務について知ってもらおうとの思いに至り、初回となる本稿では、社労士の業務について紹介します。

 

社労士の主な業務内容

 

企業の成長には、「金・モノ・人材」が必要と言われています。社労士はその中でも人材に関する専門家であり、「労働及び社会保険に関する法令の円滑な実施に寄与するとともに、事業の健全な発達と労働者等の福祉の向上に資すること」*1を目的として業務を行っています。業務内容は、事業所における採用から退職までの「労働・社会保険に関する諸問題」や「年金の相談対応」など、広範囲にわたります。

 

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災害に強いステーションづくり(3)

訪問看護ステーションにおけるBCP(事業継続計画)の

策定、防災・減災対策のポイントを解説するとともに、

実際の事例などをとおして災害時の

対応・危機管理のあり方を示します。

 

 

 

災害対応の基本③

命を守るための災害情報

 

寺田 英子

てらだ ひでこ

災害看護専門看護師/認定看護管理者

 

 

自分の命は自分で守る

 

前号では、災害が発生した際のスタッフの「自助」の重要性について解説しました。「自助」は他者を助ける「共助」のベースになります。そのため、スタッフ1人ひとりが「自分の命は自分で守る」ことを優先して判断・行動ができるようにしておくことが大切です。

 

訪問看護ステーションのスタッフは、車や自転車などの手段で地域に出向いて働いており、勤務時間のほとんどを外で過ごしています。また、事業所・利用者宅の立地やその場に着くまでの移動経路はさまざまで、海や河口に近い場所では大地震により津波に襲われたり、山間部や急傾斜地では、大雨により土石流などの土砂災害に巻き込まれたりする可能性があります。地域に密着した訪問看護ステーションだからこそ、事業所や周辺地域、訪問地域の災害リスクを把握し、起こり得る災害を予測することが災害対策の第一歩になります。

 

しかし、人は「ここまで津波がきたことがない」など過去の経験に基づいた災害の危険性に対する誤った認識や、「自分だけは大丈夫なはず」などの思い込み(正常性バイアス)、砂防ダムなどのインフラへの過度の信頼などによって避難が遅れることがあります。

 

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地域ケアの今(67)

福祉現場をよく知る鳥海房枝さんと、在宅現場をよく知る上野まりさんのお二人が毎月交代で日々の思いを語り、地域での看護のあり方を考えます。

 

 

「コロナ禍」の中での第三者評価

文:鳥海房枝

 

この拙文が読者の皆さまの目に触れるころ、福祉領域の事業所は新型コロナウイルス感染症にどのような対応をしているのか、また、ワクチン接種は予定通り進んでいるのか大変気になるところです。今、東京の繁華街は様変わりし、閉店する店も目にするようになりました。コロナによるパンデミックが私たちの生活様式を変え、その影響はさまざまな分野にまで及んでいます。歴史を振り返ると、感染症という「疫病」が社会に大きな変化をもたらしたように、「コロナ禍」が収束しても元に戻るのではなく、新たな時代に入ることを予感させます。

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