書評『末期ガン科学者の生還』(向井楠宏/カロス出版)

評者:秋田 正雄(元日本看護協会出版会副社長)

 

この書は「余命3カ月の末期がん」と宣告された科学者(著者)がそれまで受けてきた西洋医療とは大胆にも決別し、代替医療に専念することによって生還を果たしたという、がん闘病実録である。

 

ある医大病院で手遅れの「神経内分泌細胞がん」と診断されたのが2006年の夏。5年半経過した今、著者は嘘のように回復して元気溌剌の生活を送っている。いったい、あの告知は何だったのだろうか。当時のセカンドオピニオンもほぼ同じ判断をしており、誤診ではなかったはず。西洋医学では説明のつかない不思議な事例であった。

 

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臨床倫理とは、医療者が患者固有の人生に関心を持ち、その人にとっての“最善”を考えること

 

「倫理」と聞くと“難解なもの、敬遠したいもの”と感じる人も多いようですが、医療者は日々のケアの中で倫理的問題に対応しています。「患者さんにとって少しでもよい道を見いだそう」と努力していく中で、さまざまな困難な問題にぶつかり、どうしたらよいかと迷うこともあるでしょう。

医療者はどのように患者を尊重し、その人らしい生き方ができるようにサポートしていけばよいのでしょうか。

 

弊社刊『臨床倫理ベーシックレッスン』は、臨床現場でよく遭遇する身近な事例について、皆で考え、迷った記録です。

 

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看護の未来をリードする看護研究『モース&フィールドの看護研究 質的研究を実際に始めるためのガイド』を翻訳して

 

文:野地 有子(千葉大学大学院看護学研究科教授)

 
「看護研究は何のためにするの?」と聞かれて、あなたならどのように答えますか。「実際にはどのように取り組んだらいいの?」と立ち止まってしまうことはありませんか。本書は、質的研究方法の世界的第一人者のジャニス・M. モース氏とペギー・アン・フィールド氏による、質的研究を実際に始めるためのガイドです。具体例が豊富で、質的研究方法の“経験”を味わうことができる本書について、翻訳者である野地有子氏にご紹介いただきました。

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書評『退院支援・退院調整ステップアップQ&A 実践者からの知恵とコツ』(宇都宮宏子・長江弘子・山田雅子・吉田千文編)

評者:久保田 聰美(近森病院看護部長)

 

退院支援・退院調整は誰のためにしているのだろうか。「もちろん、患者さんやご家族のためですよ」と現場の担当者は答えるだろう。「病院経営のためにも重要でしょう」と管理者は答えるかもしれない。「診療報酬でも評価されましたから」と聞くと少し切ない気持ちになるのは私だけだろうか。もちろん、診療報酬で評価されたことには大きな意味がある。それだけ社会的な要望も強いのだろう。だからこそ、在院日数の短縮だけが目標ではないはず……。そんな思いを抱いている看護管理者にこそ、この本をお勧めしたい。

 

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書評『「チーム医療」とは何か』医療とケアに生かす社会学からのアプローチ(細田 満和子著)

評者:吉田 澄恵(東京女子医科大学看護学部准教授)

 

とかく看護職は、現場で遭遇する「問題」への「答」というものを書物に求めるのではないだろうか。しかし、本書は「社会学からのアプローチ」である。社会学は、人々が当たり前と見ている物事について、それを捉え直す視点をプレゼントしてくれる学問だと思う。

 

だから、本書を読むと、私たちが現場で「チーム医療」という言葉を使いながら、“心通じる”とか、“話が通じない”という気持ちになる状況が、なるほどとわかる。それも実にシンプルな「専門性志向」「患者志向」「職種構成志向」「協働志向」という4要素だけで。しかも、その説明がかなりリッチだ。そして、だからこそ、むしろはっきりと、「チーム医療」という言葉を使っても、本当は何も変わらないかもしれないという事実をも突きつけられる。「答」はないことも。

 

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