書評『末期ガン科学者の生還』(向井楠宏/カロス出版)

評者:秋田 正雄(元日本看護協会出版会副社長)

 

この書は「余命3カ月の末期がん」と宣告された科学者(著者)がそれまで受けてきた西洋医療とは大胆にも決別し、代替医療に専念することによって生還を果たしたという、がん闘病実録である。

 

ある医大病院で手遅れの「神経内分泌細胞がん」と診断されたのが2006年の夏。5年半経過した今、著者は嘘のように回復して元気溌剌の生活を送っている。いったい、あの告知は何だったのだろうか。当時のセカンドオピニオンもほぼ同じ判断をしており、誤診ではなかったはず。西洋医学では説明のつかない不思議な事例であった。

 

最近、生活習慣病とされているがんに対しては、この西洋医学的手法に限界があるとだんだんわかってきた。がんの生命活動は人間の正常細胞のそれと同じであり、がんの部分だけを取り出して治療するのは極めて難しい。そこで頼りになるのが、代替医療である。代替医療の手法は西洋医療のそれと比較してがんの治療、特に末期がん、転移がん、再発がんの患者に対して優位性を備えていると著者は考えており、それが間違っていないことを自らの体験で立証してみせたと言えよう。

 

この本は単なる闘病記録であるだけではない。絶望的な苦悩にあえいでいるがん患者に、新たな希望と勇気を呼び起こす代替医療へのガイドブックであると同時に、現在の西洋医療のがん治療のあり方に、再検証と変革を迫る提言書でもある。西洋医療およびその看護に携わっている人たちはぜひとも一読しておく必要がある。

 

-「看護」2012年8月号より –