行動変容をそっと促す ナッジを使ったアプローチ㉕

ナッジとは、人の心理特性に沿って望ましい行動へと促す設計のこと。ゲストスピーカー・医療職のタマゴたちとともに、看護・介護に役立つヒントを示します。

 

 

 

ナッジで睡眠時間の確保は難しい?

 

竹林 正樹

たけばやし まさき

青森大学 客員教授/行動経済学研究者

 

石田 陽子先生

いしだ ようこ

株式会社心陽CEO
本郷睡眠センター心陽クリニック院長

 

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医療職のタマゴたちが交代でナッジを学びます。

金田 侑大さん

城戸 初音さん

難波 美羅さん

 

 

なかなか手放せない夜のスマホ

 

竹林 前回に引き続き、心陽クリニック(東京都文京区)で睡眠外来をしている石田陽子先生にお越しいただきました。

石田 よろしくお願いします。

金田 こちらこそ、お願いします! まずお聞きしたいのは、睡眠時間の確保に役立つようなナッジはあるのでしょうか?
石田 生活習慣へのナッジに関する系統的レビューでは、睡眠に関するナッジの研究は極端に少ない1)と報告されています。つまり、世界中の研究者の間でも「睡眠とナッジ」については苦戦していることが推察されます。ですが、課題を細分化していけばその切り口は見えてきます。
金田 それなら……、「なんとなく夜更かししてしまう人たち」ではどうでしょうか。

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だから面白い訪問看護管理(17)

大学教授から転身し「らふえる訪問看護ステーション」を開設。10年を経た今、訪問看護の未来を見すえて管理者としての思い・考えを語っていただきます。

 

 

新しい門出に……花はいつか咲く

 

林 啓子

株式会社らふえる 代表取締役
らふえる訪問看護ステーション 管理者
一般社団法人茨城県訪問看護事業協議会 会長

 

 

自分の未来予想図を思い描けていますか

 

春は、新人看護師が医療者として新たな人生のスタートを切る時期。まずは「おめでとう」と、エールを送ります。

 

新人看護師の皆さんの中には、らふえる訪問看護ステーションに実習に来た学生たちもいるかと思うと、感慨深い気持ちになります。ここ数年、実習生の皆さんには団塊の世代が後期高齢者となり、高齢化率が30%を超える2025年に自分自身がどのような分野、どのような立場で社会に貢献しているか、思い描きながら学んでほしいと話してきました。あっという間に時は過ぎ、今年の新人たちは看護師として、2025年問題の真っただ中に飛び込んでいくことになります。

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基礎から学ぶ! 事例でわかる! 訪問看護ステーションの事業承継(11)

経営者の高齢化等により注目されている事業承継。成功させるにはいくつかのポイントがあります。本連載では、事業承継とは何か、事業承継の流れ・留意点などの基礎知識を解説し、実際の支援事例を紹介します。

 

 

 

事例から学ぶ事業承継
①失敗事例

 

坪田 康佑

つぼた こうすけ

訪問看護ステーション事業承継検討委員会

一般社団法人医療振興会 代表理事

看護師/国会議員政策担当秘書

 

 

私たちは通常、成功事例に目を向けがちですが、失敗から学べることも多くあります。今回は、地域に根差したケアを提供するため真摯に取り組んできたにもかかわらず、事業承継で失敗し倒産してしまった訪問看護ステーションの事例を取り上げます。そこから、承継の成功に向けた計画や準備、経営者としての資質の重要性など、学ぶべき教訓を浮き彫りにします。

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行動変容をそっと促す ナッジを使ったアプローチ㉑

ナッジとは、人の心理特性に沿って望ましい行動へと促す設計のこと。ゲストスピーカー・医療職のタマゴたちとともに、看護・介護に役立つヒントを示します。

 

対象者を細分化する・相手に聞く

 

竹林 正樹

たけばやし まさき

青森大学 客員教授/行動経済学研究者

 

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医療職のタマゴたちが交代でナッジを学びます。

金田 侑大さん

城戸 初音さん

難波 美羅さん

 

 

対象者を細分化して情報を提供する

 

竹林 前回*1、前々回*2と、溝田友里先生(静岡社会健康医学大学院大学)から、ソーシャルマーケティングを組み合わせたがん検診受診や予防行動促進の実践的なお話をうかがいました。難波さんはどう感じましたか?

 

難波 大学でソーシャルマーケティングを学びましたが、正直、具体的なイメージがわきませんでした。でも、溝田先生から「問題の対象を細分化し、ターゲットに合ったアプローチを実施する手法」と教えていただいたおかげで、よくわかりました。

 

竹林 私たちは「誰一人取り残さない」と願うあまり、対象の全員をターゲットにする手法を使いたくなることが多いのです。例えば、がん検診の受診促進に関するチラシをつくるとき、全員をターゲットにしようとすると、「検診のことをよく知らないから受けない」「検診に批判的な意見を持っているから受けない」という人へのメッセージも入れることになりますね。しかし、こういった人たちは実は少数派で、さらにチラシを送られてもあまり読まない人が多いのです。数字で考えてみましょう。難波さんの地域では、がん検診に対して無関心な人は何割くらいいると思いますか?

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折々のはなし㉓

教育現場の立場から角田直枝さん、在宅現場の立場から大槻恭子さん、福祉現場の立場から鳥海房枝さんに、日々考えていること・気になっていること・感じていることなどを述べていただく私的エッセイ。

 

 

大槻 恭子

おおつき きょうこ

一般社団法人ソーシャルデザインリガレッセ 代表理事

 

京都府南丹市出身。子どもの療養をきっかけに兵庫県但馬に移住し、築150年の古民家を購入。現在、その古民家を再生し看護小規模多機能型居宅介護事業所や訪問看護ステーションを運営。

 


 

「いのちのスープ」

 

1枚の写真

 

忘れられない1枚の写真があります。

 

それは、もう20年も前、息子の1歳のお誕生日の写真です。

 

息子は生まれてすぐに全身性の重度アトピーのような状態となり、ミルクはもちろん、母乳でさえアレルギー反応が出てしまいました。検査の結果では、食品そのものに大きな反応は見られず、化学物質などに反応しているのではないか、とのことでした。当時の私は、自分自身、そして息子にとって安心して食べられるものを見つけようと試行錯誤の日々でした。

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