〈新連載〉
「People-Centered Care(PCC)」とは、市民が主体となり保健医療専門職とパートナーを組み、個人や地域社会における健康課題の改善に取り組むことです。本連載では聖路加国際大学のPCC 事業の中で経験した「個人や地域社会における健康課題の改善」を紹介します。
射場 典子●いば のりこ
聖路加国際大学PCC開発・地域連携室
中村 めぐみ●なかむら めぐみ
聖路加国際大学PCC開発・地域連携室
連載のはじめに
市民主体のケアにおける
看護職のありよう
市民が主体となるケアとは
聖路加国際大学では2003年よりピープル・センタード・ケア(PCC)という新たなケアの開発に取り組んでいます。
「医療の主人公は誰か?」そんな当たり前の問いからPCCの探求は始まりました。誰もが自分の人生の主人公であり、生活の主体であるにもかかわらず、医療の場では受け身となり、医療者がよかれと思う道筋へと進んでしまいがちなのはなぜでしょうか。
PCCのPは“Patient”ではなく、“People”であり、看護の対象を「患者」という医療の枠組みのみで捉えるのではなく、地域社会で暮らしている人(市民)と捉えます。そして、市民1人ひとりが医療者とパートナーを組み、自分自身や地域社会における健康課題の改善に向けて取り組むことが市民主体のケアと言えます。
◉PCCの核となるパートナーシップ
PCCでは、市民と保健医療専門職とのパートナーシップを重視しています。パートナーシップとは、ある1つの目的に向かって役割を分担し、互いに対等な立場で協働することです。医療者が医学や病気に対する専門家であるのに対し、市民1人ひとりは自分自身の価値観や希望を持ち、体の不調や病気とともに生きていくことについての専門家と言えます。
このような関係性を前提とするPCCでは、市民と専門職が次の8つの要素を実践することが不可欠です。
①「互いを理解する」
②「互いを信頼する」
③「互いを尊敬する」
④「互いの持ち味を活かす」
⑤「互いに役割を担う」
⑥「共に課題を乗り越える」
⑦「意思決定を共有する」
⑧「共に学ぶ」
→続きは本誌で(コミュニティケア2025年1月号)