経営者の高齢化等により注目されている事業承継。成功させるにはいくつかのポイントがあります。本連載では、事業承継とは何か、事業承継の流れ・留意点などの基礎知識を解説し、実際の支援事例を紹介します。
訪問看護ステーションの事業評価
デューデリジェンスの重要性
坪田 康佑
つぼた こうすけ
訪問看護ステーション事業承継検討委員会
一般社団法人医療振興会代表理事
看護師/国会議員政策担当秘書
訪問看護ステーションの
過去と未来を評価する
「デューデリジェンス」(Due Diligence)とは、経営状況や財務状況を調査して企業を適正に評価することであり、一般的に買い手側が売り手に対して、専門家を介し実施するものです。過去・現在の評価に加え、事業の将来展望の分析も行います。
過去・現在の評価は、主に「財務」「税務」「債務」「法務」「人事」の観点から行われ、事業承継後に発覚する可能性のある問題を事前に把握し、抱えるリスクを最小限に抑えます。例えば、過去の不正請求や未払いの残業代などが後日明らかになった場合、その責任と財務的負担は新しい経営者に移ることになります。そのため、デューデリジェンスでは過去から現在に至る事業運営の適正性を綿密に調査します。
一方、将来展望の分析は「事業戦略」「オペレーション」「知的財産」などの側面から多角的に実施され、事業承継後の成長可能性や発展性を評価します。ここでは事業の収益力、人材の融和と活性化、知的財産の活用などが重点的に検討されます。また、承継先の既存事業とのシナジー効果が期待できるかどうかも重要な検討事項となります。
このように、デューデリジェンスの目的を簡潔に言えば、過去に問題点がないことを証明すると同時に、魅力的な未来像を描くことにあります。
興味深いのは、実績を積み重ねてきた老舗の訪問看護ステーションよりも、比較的新しいステーションのほうが高い評価を受ける場合があることです。背景には、新しいステーションは経営期間が短いため、過去の問題の有無を比較的容易に証明しやすいことや、新しい組織は変化への適応力が高く、事業承継先とのシナジー効果を生み出す可能性を強くアピールできることが挙げられるでしょう。
→続きは本誌で(コミュニティケア2025年1月号)