地域ケアの今(33)

福祉現場をよく知る鳥海房枝さんと、在宅現場をよく知る上野まりさんのお二人が毎月交代で日々の思いを語り、地域での看護のあり方を考えます。

 

 

身体拘束等の

適正化の推進を考える

文:鳥海房枝

 

今年度の介護報酬改定では「身体拘束」が取り上げられ、身体拘束廃止未実施減算が5単位/日から介護報酬の10%/日へと大きく変わりました。この見直しに伴う基準として、①身体的拘束等の適正化のための対策を検討する委員会を3カ月に1回以上開催し、その結果について、介護職員その他従業者に周知徹底をはかること、②身体的拘束等の適正化のための指針を整備すること、③介護職員その他の従業者に対し、身体的拘束等の適正化のための研修を定期的に実施することも追加されています。また、この適用範囲に居住系サービスを含めるなど対象事業所も拡大されました。

 

減算額はこれまでの5単位/日だと1日50円、1カ月1500円でしたが、介護報酬の10%となると金額は桁違いになります。そのため、多くの事業所は委員会の立ち上げや指針づくり、身体拘束の研修計画の立案など、あらためて取り組みの強化をはかっているようです。この動きを否定はしませんが、「身体拘束廃止」の本来の目的を考えてみたいと思います。

 

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訪問看護ステーションの経営戦略(5)

訪問看護ステーションの管理者が地域のニーズを的確に捉えて健全

な経営を行い、その理念を実現するために行うべきことを、公認会

計士・税理士・看護師の資格を持つ筆者が解説します。

SWOT分析をしてみよう

渡邉 尚之

 

 

経営戦略を立案する上でよく使われる手法に「SWOT分析」があります。SWOTとはStrengths(強み)、Weaknesses(弱み)、Opportunities(機会)、Threats(脅威)の頭文字をとったもので、この4カテゴリーについて事業・組織などの内部環境・外部環境を分析する経営分析手法です。この結果を掛け合わせて(クロスさせて)検討する「クロス分析」との併用により、企業の限りある経営資源の現状分析や将来の事業構想に役立つフレームワーク(枠組み・構造)として活用することができます。今回はSWOT分析、次回はクロス分析について解説します。

 

SWOT分析の優れている点は、フレームワークがシンプルなため理解しやすく、かつその結果が視覚的にわかりやすいことです。自ステーションの強み・弱み、外部環境との関係性などを見える化したいと考える管理者には最適な方法だといえるでしょう。短時間で実施可能なため、ぜひチャレンジしてください。

 

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地域ケアの今(32)

福祉現場をよく知る鳥海房枝さんと、在宅現場をよく知る上野まりさんのお二人が毎月交代で日々の思いを語り、地域での看護のあり方を考えます。

 

「バリア」を「バリュー」に

文:上野まり

 

今年2月に、韓国・平昌でオリンピックが開催され、日本選手はこれまでにない活躍を見せ大いに盛り上がりました。スキーモーグルの原大智選手の銅メダル獲得から始まり、日本最多のメダル13個の獲得に至るまで、たくさんの感動をもらいました。3月にはパラリンピックが開催され、この原稿を書いている今はまだ大会の真最中で、旗手を務めた村岡桃佳選手がアルペンスキーで銀メダルを獲得したニュースが届いたばかりです。今後どのような結果が得られるのか楽しみです。

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訪問看護ステーションの経営戦略(4)

訪問看護ステーションの管理者が地域のニーズを的確に捉えて健全

な経営を行い、その理念を実現するために行うべきことを、公認会

計士・税理士・看護師の資格を持つ筆者が解説します。

1時間でできるエリアマーケティング(後編)

渡邉 尚之

 

 

前回は、エリアマーケティングの必要性や資料活用のポイントなどについてお伝えしました。

 

簡単におさらいをすると、エリアマーケティングは新規事業立ち上げのための需要予測のみならず、すでに事業を展開している場合でもその地域の需要・方向性等を踏まえて経営戦略を検討する上で必要です。また、それに活用する資料は公表されている官公庁の統計資料や業界団体のデータを活用すると効率的であるという内容でした。

 

さて、皆さんは自身の地域の人口や高齢化率、人口当たりの訪問看護ステーション数・1ステーション当たりの従事者数、実際の利用者数などをご存知でしょうか? 今回はこれらの調査と活用方法を示したエリアマーケティングの実践例を紹介します。

 

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地域ケアの今(31)

福祉現場をよく知る鳥海房枝さんと、在宅現場をよく知る上野まりさんのお二人が毎月交代で日々の思いを語り、地域での看護のあり方を考えます。

 

感染症との付き合い方

文:鳥海房枝

 

この誌面が読者の皆さまの目に触れるころは桜花爛漫の時期で、感染症の話題は下火になっていることでしょう。例年、高齢者ケア施設では夏場になると食中毒の発生、冬場になるとインフルエンザやノロウイルスの集団感染への対策が話題に上り、万が一これらが起こると、事件として多くのメディアに取り上げられます。

 

筆者がセミナーや第三者評価で訪れる高齢者ケア施設の多くは、感染対策として玄関に手洗い場や手指消毒スプレーを備えています。今や手指消毒スプレーはホテルや役所、スーパーの出入り口にも置かれていますが、これはいつごろからなのでしょう。さらに、「ご自由にどうぞ」と書かれたプレートの脇にマスクを置いている高齢者ケア施設も珍しくありません。しかも多くの医療機関とは違い無料です。また、施設によっては玄関を入るとそのままトイレの洗面所へ誘導され、そこで消毒薬を使ってうがいをしてからでないと入所者のいる空間には入れてもらえません。このように多くの“関所”が設けられているのです。

 

本号では、日ごろから「暮らしの場」を標榜している高齢者ケア施設の感染対策を振り返ってみたいと思います。

 

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