地域ケアの今(35)

福祉現場をよく知る鳥海房枝さんと、在宅現場をよく知る上野まりさんのお二人が毎月交代で日々の思いを語り、地域での看護のあり方を考えます。

 

 

介護現場における

ヒヤリハット報告をめぐって

文:鳥海房枝

 

介護事故を減らすことを目的に、多くの介護現場でヒヤリハット報告書の提出が奨励されています。その根拠とされているのが、1:29:300のハインリッヒの法則です。これは重大な事故1件の背景には、軽微な事故が29件あり、さらにその背景には事故寸前の案件が300件あるという、米国の損害保険会社の社員・ハインリッヒが提唱した労働災害における経験則です。これを基に「ヒヤリ」としたら、あるいは「ハッ」としたら報告書を作成することで軽微な事故や事故寸前の案件に目を向け、重大な事故の発生を予防しようとする考え方です。

 

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訪問看護ステーションの経営戦略(8)

訪問看護ステーションの管理者が地域のニーズを的確に捉えて健全

な経営を行い、その理念を実現するために行うべきことを、公認会

計士・税理士・看護師の資格を持つ筆者が解説します。

 

 

モチベーション理論を用いて

スタッフのやる気を引き出そう

渡邉 尚之

 

 

前回は、訪問看護ステーションにおける組織づくりについて、経営学における組織論の歴史の視点から考えました。しかし、いくら理想の組織をつくっても、そこで働くスタッフのモチベーションが低ければ経営はうまくいきません。そこで今回は、スタッフのやる気を引き出すモチベーション理論を解説します。

 

スタッフは不満足を解消しても満足しない!?

ハーズバーグの動機づけ・衛生理論

 

モチベーション理論にも、組織論と同様、多くの説があります。本稿では、その中から米国の心理学者ハーズバーグの「動機づけ・衛生理論」を紹介します。筆者は、経営実務の上ではこの理論が最も有用だと考えています。

 

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訪問看護ステーションの経営戦略(7)

訪問看護ステーションの管理者が地域のニーズを的確に捉えて健全

な経営を行い、その理念を実現するために行うべきことを、公認会

計士・税理士・看護師の資格を持つ筆者が解説します。

 

 

組織論を学んでみよう

渡邉 尚之

 

 

皆さんは“理想の組織”について考えたことはありますか? 複数のスタッフの集まりである訪問看護ステーションは立派な組織です。とはいえ、日々の業務の多忙さなどにより、組織管理を意識しながら運営を行っている管理者は少ないのではないでしょうか。

 

しかし、組織論のエッセンスには、スタッフとの接し方などにおけるヒントが多くあります。そこで今回は、経営学での組織論について解説します。少し学問的な部分もありますが、経営学としては大変有名な話ですし、ステーション経営にも実践的に役立つ内容です。自ステーションにとってどのような組織が最適であり、スタッフをどのようにマネジメントすべきかを意識して読んでいただければと思います。

 

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地域ケアの今(34)

福祉現場をよく知る鳥海房枝さんと、在宅現場をよく知る上野まりさんのお二人が毎月交代で日々の思いを語り、地域での看護のあり方を考えます。

 

“おばさん教員”の悩みごと

文:上野まり

 

私は、これまで現任教育に約4年、看護基礎教育に約15年携わってきました。現任教育では、認定看護師教育課程や訪問看護基礎講座などで講師を務め、現役の看護師から逆に学ぶことも多かったです。基礎教育では、若い学生とともに笑ったり怒ったり、時には泣いたりすることもありました。どれも大切な思い出になっています。今春は、大昔に私が卒業研究を指導した学生2人が、病院・訪問看護を経て博士課程を修了し、大学で在宅看護学の教員になったとの連絡があり、とてもうれしく思いました。その一方で、長い年月が過ぎたことを実感します。

 

最近、これまでになく自分の年齢を感じるようになりました。というのも、以前と比べて学生との距離を感じることが多くなったからです。例えば、学生との会話の中で、昔の俳優・タレントなどの有名人の名前や、映画の題名を挙げても、学生はポカンとしています。私は彼女たちの親よりも年老いていますから、まったく話が通じないわけです。

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訪問看護ステーションの経営戦略(6)

訪問看護ステーションの管理者が地域のニーズを的確に捉えて健全

な経営を行い、その理念を実現するために行うべきことを、公認会

計士・税理士・看護師の資格を持つ筆者が解説します。

SWOT分析結果から

クロス分析をしてみよう

渡邉 尚之

 

クロス分析とは

 

今回は、5月号で取り上げたSWOT分析の結果を基に行う「クロス分析」について解説します。

 

簡単に復習すると、SWOT分析とはStrengths(強み)、Weaknesses(弱み)、Opportunities(機会)、Threats(脅威)の頭文字をとったもので、企業の限りある経営資源の現状分析や将来の事業構想に役立つフレームワーク(枠組み・構造)として活用できる経営分析手法です。

 

SWOT分析のメリットは、フレームワークがシンプルで取り組みやすい点です。事前準備や大がかりな予備知識は不要です。複数人で作成できる点も魅力です。一方、デメリットは、強み・弱み・機会・脅威はそれぞれ絶対的ではなく相対的なものであるため、各要因を自ステーションの現状の中でどう捉えるかを考えて分析・分類する必要がある点です。また、SWOT分析はこれから紹介するクロス分析と合わせて活用しなければ単なる現状分析で終わってしまい、事業の具体的な方向性や今後の経営戦略を見いだせない点も重要です。このため、SWOT分析とクロス分析はセットで活用する必要があります。

 

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