書評『第二の認知症 増えるレビー小体型認知症の今』(小阪 憲司 著/紀伊國屋書店)

評者:鈴木 恵美子(横浜メディカルグループ看護部老人保健施設レストア川崎看護部長)

 

認知症を巡る論は、各方面の有識者により議論されているところであるが、現在の名称に至る前は「痴呆」と呼ばれていた。「痴呆」という用語が侮蔑的な意味合いを含んでいることや、誤解や偏見の解消を図るとの考えから検討が行われ、2004年12月に「認知症」へ呼称変更となった。

 

認知症の三大原因には、大きく分けてアルツハイマー病、脳血管性認知症、レビー小体型認知症がある。本書は世界で初めてレビー小体型認知症を明らかにした小阪憲司先生が、わかりやすい内容で、認知症という病気を巡る歴史から医療・介護の新しいカタチについて知り得なかった情報、レビー小体という物質、パーキンソン病の位置づけなど鑑別しづらい疾患についても詳しく述べている。

 

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「インターナショナル ナーシング レビュー日本版」休刊のお知らせ

インターナショナル ナーシング レビュー日本版の読者の皆さまへ

 
このほど、「インターナショナルナーシングレビュー 日本版」は、現在制作中の158号(2012年秋号:10月1日刊行)をもって休刊することとなりました。
 
本誌は、1977年に東京で開催された第16回ICN大会によって、我が国の看護の国際的な視野が高まったことを機に、国際看護師協会機関誌「International Nursing Reviw」(INR)の日本版として、翌1978年に刊行を開始しました。世界の中でも、英語以外の言語にINRを翻訳する事業に取り組んだのは本誌が最初でした。
 
我が国の看護職者が、看護の国際的動向やICNおよび他の会員協会に関するニュースに触れ、またICN本部が各会員協会に何を伝えたいかを知ることを目的に誕生した本誌は、その後、翻訳記事だけでなく独自の日本版特集を組むスタイルとなり、国内外の看護の動きを大局的に捉える視点が加えられるようになりました。またここ数年は、看護系大学・大学院の増加に伴い、学術知識としての看護の情報提供を意識してきました。
 
しかし近年、対象とする読者の情報リテラシーが向上し、インターネットを介した主体的な情報収集に勝る価値を提供することが大変難しくなって参りました。とりわけICNトピックの翻訳を中心としつつ日本版としての独自性を追求していくことにおいて、本誌の枠組みをひとまず一から捉え直すために、この度の休刊という決断に至りました。
 
これを機に小社では、海外の看護の動向やアカデミックスキル、そして学際的アプローチにご関心を持たれる方々に向け、ただ目に見える「ニーズ」に応えるものではなく、新しい具体的な価値を積極的に提案していくような知識や情報の提供について、改めて考えていきたいと思っています。
 
本誌を通じて、これまでさまざまな出会いがありました。読者の皆さまのご意見、そして企画のご相談やお原稿のやり取りの過程で、看護と看護学の向上や発展という目的を真摯に共有させていただくことが、雑誌という営みの屋台骨になるのだと常々実感して参りました。
 
その成果として、今現在もさまざまな方々と、わくわくするような、いくつものアイディアの芽を育てている最中です。引き続きそれらを形にしていくことが、これからの大切な仕事です。「インターナショナル ナーシングレビュー日本版」の刊行は一旦休止となりますが、今後は書籍やセミナー、ネットを介した提供という方法で模索していきたいと思います。
 
皆さまには大変お世話になりました。長きにわたるご愛顧と多大なるご協力に、重ねて厚く御礼申し上げます。
 
 

株式会社日本看護協会出版会 雑誌編集部

「インターナショナル ナーシング レビュー日本版」編集長

村上陽一朗

今すべての看護職に伝えたい“ケア”の大切さ ——『看護の時代 看護が変わる 医療が変わる』が発刊

川島 みどり さん(日本赤十字看護大学 名誉教授)

 

「ずっと、いつかは“看護の時代”が来ると思っていました。だから、東日本大震災後に日野原重明先生が出された“いまこそ『看護』の出番です”というメッセージに、とても共感しました」

と語るのは、日本の看護の成長に貢献し続けている川島みどり先生。

 

2011年3月11日に起こった東日本大震災で被災した地域に、何度も足を運んだ。そして、病院・医療器具・電気など、あらゆるものがなく、高度医療が機能しない状態を目の当たりにしたとき「ナイチンゲールなら、この状況で何をしただろうか……。ここには、もう素手だけしか残っていない。今こそ“手当て”が必要だ」と、強く思ったという。

 

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書評『がん終末期患者のストーマケア Q&A』(祖父江正代・松浦信子 編)

評者:溝上 祐子(公益社団法人日本看護協会看護研修学校認定看護師教育課程長)

 

これからの日本は急速に進む高齢化・多死社会を迎えるに当たり、医療のあり方を大きく変化させていくことが求められている。

 

看護師が働く場所も病院だけでなく、あらゆる保健施設や老人施設、そして在宅の場など多様化していくであろう。現在は看取りの場所のトップは病院であるが、今後はその受け入れ病床が不足することが予測されている。

 

もはや、がん終末期の緩和ケアは病院だけではなく、あらゆる場面で必要となってくる。これからの看護師はプロフェッショナルとして、あらゆる職種と協働しながらリーダーシップを執っていく能力と知識を持たなければならない。

 

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Review『看護の時代』(日野原重明・川島みどり・石飛幸三)

 

評者:勝原 裕美子(聖隷浜松病院 副院長兼総看護部長)

 

「看護師が考えている以上に、看護師にはできることがある。感じている以上に、やるべきことがある」

 

今をときめく人というのはその時代ごとにいるが、本書の著者3人は、看護の本質を見抜き、看護の歴史を作りながら、ずっとときめき続けてきた人たちだ。その人たちが、看護の普遍的な力と看護の限りない可能性を語ってくれている。病を治すという基本的な医療の考え方に対して医療者はもっと謙虚にならなくてはならない。

 

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