書評『菊池先生の「ことばシャワー」の奇跡 生きる力がつく授業』(講談社)

ことばのシャワー評者:中島 美津子(なかしま みつこ)
南東北グループ教育看護局長

 

読み始めた途端、頭のどこかでスイッチの入る音がした。「すごい!」。我が子と同じ小学6年生が、こんな素敵な文章を書くのか……鳥肌が立った。

 

「以前は、黒一色が教室を支配していた/だが、今はオレンジでいっぱいだ/それも一人ひとり違う輝きを出している」――今の看護現場は、混沌とした泥色の状態。それを私の大好きなオレンジ色にしたい……私も、そう願いながら全国の看護組織の皆さんと関わってきた。離職理由のトップが“人間関係”の看護界は、以前の6年1組と同じ、“自己防衛”に走る集団だった。読み進めていくうちに、「組織変革プロセス」「強みを活かした組織づくり」の理論と重なり、自分の今までの取り組みに自信を持たせてくれた。

 

菊池先生は、まず6年1組から「なくしたいことば」と「あふれさせたいことば」を挙げさせ、具体的な目標を明確に可視化して浸透させることから変革を始めている。“ことば”は看護師にとって、なくてはならない能力、技術。この基本が実際にはできていない。“コミュニケーションスキル”に“相手への思いやり”を「×(かける)」という菊池先生の“話す力の公式”は、思いやりがなければ「0をかける」ことになる。今の看護界は「0をかける」コミュニケーションをしているかもしれない。

 

小学校の先生が、みんな菊池先生のようだったら、今頃、看護界の離職理由トップに“人間関係”がなかったかもしれない。罪な先生である。この本は、私にとって最高の“プレゼント”となった。

 

-「看護」2013年3月号より –