「ただ待つばかりの人たちではないのだ」

文:吉野淑代

(INR日本版 2012年春号, p.108に掲載)

 

1996年5月、日本での看護師生活にピリオドを打ち、韓国へ来て15年の歳月が過ぎました。

 

こちらの生活の中でいろいろな出来事がありましたが、とくに猛勉強の末に韓国の看護師免許を取り、韓国の病院で働き始めたことは自分にとって大きな第一歩でした。今は看護師の資格に加え、韓国内で医療通訳士、病院コーディネーターなどの資格を活かしながら、産婦人科病棟の看護師として勤務しています。

 

日々の暮らしの中で、この国の文化や習慣、言葉などに数多く出会い、さまざまな面で日韓両国の違いを感じてきました。

 

看護師としては臨床面の他、政策や制度についても大きな違いを知りましたが、なかでも2011年4月に、看護教育4年制一元化のための高等教育法改正案が国会本会議で通過したことは、韓国看護界の歴史的な大事件でした。この2012年からは、看護専門大学(3年制)33校が、順次3年制から4年制の大学に移行していく予定です。

 

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「オールドタウンで想う、これからの日本」

文と写真:木下澄代

(INR日本版 2012年春号, p.109に掲載)

 

windmill

勤務先の高次性機能障害者リハビリセンターへ通う際に横切る農地にも、風力発電用の風車がある。

 

デンマークではコペンハーゲンに次ぐ第2番目に大きな町、オーフス市にあるDen gamel by(英語ではOld town)に友人と出かけました。

 

ここには国内各地の歴史的に重要な建物が移築され、保存・公開されています。建物は同時代の生活を紹介する生きた博物館でもあり、季節ごとに建物内の展示内容が変わります。例えばクリスマスには市長の住んでいた建物が当時の様相を再現します。リビングルームに飾られるクリスマスツリーは天井まで届く高さがあり、毎年変化する装飾を見ることが市民の伝統にもなっています。

 

12月の日は短く、午後3時を過ぎるともう夕闇が降り始めて薄暗くなります。それぞれの建物ごとに異なる展示をすべて見る時間はありません。常設展示は差し置いて、この時期の特別展示を選んで周ることにしました。

 

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「50人の親戚たちが暮らす村の生活」

文と写真:坪田トーレナース育子

 

(INR日本版 2012年春号, p.110に掲載)

 

house

オランダの古い農家ぐらし。隣近所は賑やかな親戚ばかりで日々退屈している暇もない。

mag

親戚縁者に配布される「家族雑誌」

オランダの南部にある人口3,000人の小さな村で、夫と2人の息子とともに、古い農家で暮らしています。左隣は義理兄一家、お向かいはいとこ夫婦、その他村内だけで、ざっと50人の夫の親戚に囲まれていて、2年に1回は村外の家族も含めた同窓会が開かれます。それに来られない人のために家族雑誌が発行されたりして、毎日退屈する暇がありません。

 

私が来蘭したのは1997年の3月。EUになる前でオランダの通貨がまだギルダーの時代です。SkypeもE-mailもなく、テレビすら契約した衛星放送しか見られない時代で、当時はずいぶんホームシックにも悩まされました。日本では、看護師・助産師として産婦人科との混合病棟や開業産婦人科で働いていたので、その経験をこちらでも活かそうと思っていましたが、現実はそう甘くはありませんでした。

 

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「人生の転機が訪れる たびに開いてきた、 思い出の “箱”」

文と写真:森 淑江

(INR日本版 2012年春号, p.111掲載)

 

mori

ザンビアの首都から400㎞離れたカロモ郡のクリニックで活動する公衆衛生の隊員(右端)から話を聞く筆者(左端)。

 

1992年から2年間、中米のホンジュラスで看護教育に関する仕事をしたことをきっかけに、看護分野の国際協力に取り組み始めました。今では国際看護学の分野を確立すべく奮闘しています。

 

群馬大学で国際看護学の教育と研究を行いつつ、日本がODA(政府開発援助)として国際協力を行う際の実施機関、独立行政法人国際協力機構(JICA)青年海外協力隊事務局技術顧問(長い!)を務めています。

 

1965年に青年海外協力隊が創設されて以来、86の開発途上国に3万6,000人以上のボランティアが青年海外協力隊員として派遣されてきました。このうち2,438人が看護職(保健師・助産師・看護師)で、保健衛生部門の42%を占めており、2番目に多い養護隊員の558人を圧倒的に引き離す数です。

 

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NT2012年12月号連載【新★看護学事典】紹介        アルツハイマー型認知症

NT2012年12月号の連載「楽しく読んじゃう 新★看護学事典」では、看護学事典第2「アルツハイマー型認知症」の解説を執筆してくださった堀内ふき先生(佐久大学看護学部看護学科教授)からエッセイをおよせいただきました。

 

これからの看護の重要課題

認知症高齢者は、いまや300万人と10年間でほぼ2倍に増加しました。この数はどのくらいになるでしょうか。65歳以上で他疾患と比較してみますと、脳梗塞の約3倍、Ⅱ型糖尿病患者数のほぼ3分の1になります。本当に身近な病気になってきました。

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