市民とともに歩むナースたち(5)

「People-Centered Care(PCC)」とは、市民が主体となり保健医療専門職とパートナーを組み、個人や地域社会における健康課題の改善に取り組むことです。本連載では聖路加国際大学のPCC 事業の中で経験した「個人や地域社会における健康課題の改善」を紹介します。

 

田中 加苗 ● たなか かなえ

聖路加国際大学大学院看護学研究科 助教

 

小野 若菜子 ● おの わかなこ

東京都立大学健康福祉学部看護学科 教授

 

中村 めぐみ ● なかむら めぐみ

聖路加国際大学PCC開発・地域連携室 マネジャー

 


まちのグリーフカフェ「しん・呼吸」

市民活動団体や市民サポーターとの協働

 

 

まちのグリーフカフェをつくる

 

グリーフとは、「喪失によって生じる深い悲しみや苦悩」であり、悲嘆とも言います。そして、グリーフとして現れるさまざまな感情や行動を正常なものとして受け止め、その気持ちを察し、寄り添う姿勢に基づいた支援がグリーフケアです。筆者らは、喪失の中でも死別に着目し、“大切な人を亡くされた経験を語りあう会:まちのグリーフカフェ「しん・呼吸」”(以下:「しん・呼吸」)を市民活動団体や市民サポーターと協力して開催しています。

 

最初に、「しん・呼吸」の始まり、協働のプロセスをご説明します。

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精神科訪問看護へようこそ

 

 

病棟から精神科訪問看護に飛び込んだこころさんが、看護大学で働くカワウソ先生との対話を通して在宅の精神科看護を学び、成長していく物語です。

 

川下 貴士 ●かわしも たかし

松蔭大学看護学部看護学科精神看護学 助教

 


 

第8回 自分なりの道を行く

 

前回のあらすじ

自分のアセスメント力不足を感じ、今後、身体科を経験したほうがよいかと悩むこころさんはカピバラ先生にアドバイスを求めました。しかし、まだ悩みは解決できていないようで……。

 

 

カワウソ あれ、こころさん。カピバラ先生のところに相談に行った割にはまだお悩みは解決していない様子ですね?

 

こころ はい。実は私、訪問に行っていたのにAさんの糖尿病の症状には気づけなかったことを後悔していて……それは身体科の経験がないからだと思いました。それで一度、身体科を経験したほうがいいのか、身体科と精神科①、どちらも経験しているカピバラ先生に相談しに行ったのですが……。

 


POINT①

精神看護の領域では内科や外科等のことを身体科と言います


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〈新連載〉POTTスキルで解決〜食事ケアの困りごと 看護で食べるよろこびを

〈新連載〉

 

 

誤嚥性肺炎や窒息のリスクが気になる食事ケア。
でも、嚥下障害と姿勢アセスメントの基本的な知識と技術があれば、利用者が安全に食べることを継続して支援できます。
筆者らが提唱するPOTT プログラムの基本スキルを基に、現場で遭遇する問題の原因やケアの方法・根拠を紹介します。

 

執筆

迫田 綾子 さこだ あやこ

日本赤十字看護大学名誉教授

POTT プロジェクト代表

 


知りたいこと その❶

 

POTT スキルとは? 食事時のポジショニングの効果は?

 

 

連載のはじめに

 

本連載では、POTTプログラムを基盤とした「食事ケアとポジショニング」の知識と技術を通して、“だれでも、どこでも、すぐに役立つ食事ケア”を、実践者によるリレー形式でお伝えしていきます。

 

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市民とともに歩むナースたち(3)

 

「People-Centered Care(PCC)」とは、市民が主体となり保健医療専門職とパートナーを組み、個人や地域社会における健康課題の改善に取り組むことです。本連載では聖路加国際大学のPCC 事業の中で経験した「個人や地域社会における健康課題の改善」を紹介します。

 

菱沼 典子ひしぬま みちこ

NPO法人からだフシギ 理事長

 


NPO法人「からだフシギ」

からだの知識をみんなのものに

 

 

あなたの健康はあなたのもの

 

人は具合が悪くなったときに、まず「寝て治す」「市販薬で治す」などを試みます。それでも治らなければ、かかりつけ医のところへ行くでしょう。そして自らの健康課題を解決するため、さらに紹介された医療機関を受診するかもしれません。

 

しかし、そこで診察室に入った途端、主人公の座を医療職に奪われた……。そんなふうに感じてしまったことはないでしょうか。

 

私たち「NPO法人からだフシギ」の活動は、この違和感への疑問から始まりました。なぜ人は、患者となった途端、自らの健康に関する決定権を手放さざるを得ないと感じるのでしょうか。

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基礎から学ぶ! 事例でわかる! 訪問看護ステーションの事業承継(20)

経営者の高齢化等により注目されている事業承継。成功させるにはいくつかのポイントがあります。本連載では、事業承継とは何か、事業承継の流れ・留意点などの基礎知識を解説し、実際の支援事例を紹介します。

 

事業承継における支援施策

 

坪田 康佑

つぼた こうすけ

訪問看護ステーション事業承継検討委員会

一般社団法人医療振興会代表理事

看護師/国会議員政策担当秘書

 

事業承継のプロセスには、法的な手続きや経済的な負担、さらには人的な調整など、さまざまな課題が伴います。日本では、これらを解決し、事業を円滑に承継するための支援策が公的に用意されています。

 

経済産業省中小企業庁では、事業が途絶えることなく継続できるよう、補助金や助成金、税制優遇といった多様な支援策を提供しており、訪問看護ステーションのような中小規模の事業者にとって、大きな助けとなるものです。2024年末に発表された令和6年度補正予算案では、事業承継・M&A補助金をはじめとする関連予算が大幅に増額されました。このことから、経済産業省が事業承継の重要性を強く認識し、積極的に支援を行っていることがうかがえます。経営者は事業承継を進める中で直面するさまざまな課題や問題を一人で抱え込まず、積極的に活用していくことが重要です。

 

また、訪問看護事業の承継は、地域の利用者にも大きな影響を与える重要な課題です。事業運営が途絶えずに継続されることで、利用者はそれまでと変わらず安心してサービスを受けられます。

 

今回は、経済産業省中小企業庁が提供する支援策とその活用の仕方を中心に紹介します。

 

事業承継の相談・伴走

 

2021年4月、全国47都道府県に「事業承継・引継ぎ支援センター」が設置されました。同支援センターでは事業承継計画の策定支援を通じて、スムーズに事業承継のプロセスを進めるためのアドバイスを受けることができます。また、M&Aマッチングの支援も行っており、事業を引き継ぎたい企業と引き受けたい企業を結び付け、適切な相手を見つけるサポートも提供しています。従業員への事業の引き継ぎに際しても、具体的なアドバイスを受けられるのが特徴です。

 

以前、筆者が遠方に住む経営者から事業承継の相談を受けた際に地元の事業承継支援センターを紹介しました。しかし、当時まだ設立されたばかりだったためか、「医療に関する事業承継の経験がない」との理由で相談を断られ、別のM&A仲介事業者を紹介されたというケースがありました。

 

支援センターの設置からまだ年数が経ってない現在では、そうした課題があることも考慮しつつ、上手に活用する必要があるでしょう。

 

続きは本誌で(コミュニティケア2025年3月号)