災害に強いステーションづくり

訪問看護ステーションにおけるBCP(事業継続計画)の

策定、防災・減災対策のポイントを解説するとともに、

実際の事例などをとおして災害時の

対応・危機管理のあり方を示します。

 

 

最新の防災気象情報をおさえる

 

尾崎 里奈

おざき りな

 

防災気象PRO株式会社(TeamSABOTEN)

気象防災アドバイザー・気象予報士

 

 

近年の自然災害と未来の懸念

 

「こんな大雨は経験がない」「まさか川があふれるなんて」—気象災害報道でよく耳にする被災者の声です。気象予測の現場でも「本当にこんなに降るのか?」とコンピューターの数値予報に一瞬疑念を持ったことがあります。山地が多く河川が急峻な日本はもともと自然災害が発生しやすいため、著しい大雨災害は大昔から起きていたかもしれません。では、私たちが感じる「最近の大雨はひどい」という感覚は間違っているのでしょうか。

 

気象庁の統計によると、1時間雨量50mm以上の年間発生回数は増加傾向であることがわかっています。約40年前の約1.4倍に増えています1)。1時間50mmの雨というのは、滝のように降り、車の運転が危険なレベルです。このほか日降水量200mm以上および400mm以上の大雨の年間日数も増えていることがわかっており2)「最近の大雨はひどい」という私たちの感覚はあながち間違いではないようです。

 

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住民の“生きる”に伴走 進化を続ける地域ケアシステム「幸手モデル」

地域包括ケアシステムの先進事例として、全国から注目されている「幸手モデル」。地域住民とともにこのモデルをつくった筆者の医師としての歩みを振り返り、幸手モデルの本質に迫ります。

ケアシステムの未来を

妄想してみる

 

 

最終回となる本稿では、私が考える未来のケアリング(以下:ケア)の制度・政策を妄想してみたいと思います。連載の後半で述べてきた当地域のケアシステムである「幸手モデル」は、生活モデル的支援*1(以下:生活モデル)の地域包括ケアシステムです。まだ完成には程遠い状況ですが、読者には、現在主流となっている一般的な社会保障モデル的支援*2(以下:社会保障モデル)の地域包括ケアシステムとは相当の違いを感じたのではないでしょうか。

 

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だから面白い訪問看護管理

西宮市訪問看護センター(兵庫県西宮市)は3カ所のサテライト事業を展開するステーション。山﨑和代さんに、管理者としての日々の思い・考えを語っていただきます。

 

 

⓲コロナ禍における

職員間のコミュニケーション

 

山﨑 和代

社会福祉法人西宮市社会福祉事業団

訪問看護課 課長/訪問看護センター 管理者

認定看護管理者

 

 

当センターでは、コロナ禍を機に非対面であっても職員間でコミュニケーションをとれるように有料の「チャットアプリ」を導入しました。電子カルテの導入のときと比べると、スタッフはこのツールに順応するのが早かったように感じました。その理由は何だったのでしょうか。

 

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災害に強いステーションづくり⓮

訪問看護ステーションにおけるBCP(事業継続計画)の

策定、防災・減災対策のポイントを解説するとともに、

実際の事例などをとおして災害時の

対応・危機管理のあり方を示します。

 

 

 

地域における

BCP連携の必要性①

 

山岸 暁美

やまぎし あけみ

慶應義塾大学医学部衛生学公衆衛生学教室 講師

一般社団法人コミュニティヘルス研究機構 機構長・理事長

 

 

今号と次号にわたって、災害対応マニュアルとBCPの違いを解説した上で、地域におけるBCP連携の必要性について述べていただきます。

 

はじめに

 

令和3年度介護報酬改定により義務づけられた業務継続計画(Business Continuity Plan: BCP)策定の猶予期間3年のうち、1年が経ちました。少し焦り始めている読者もいるかもしれません。しかし、BCPは最初から完璧にはできません。また、つくって終わりにしてもいけません。つくったBCPをシミュレーション訓練で評価し、改良を重ねて育てていくこと、このプロセスこそが最も大事なのです。

 

また、自事業所のBCPはもちろん必要ですが、地域を面として捉え、近隣の訪問看護事業所等との連携により、医療・ケアを継続するという視点も非常に重要です。今回、BCPとは何かという説明に加え、このことについて詳しく解説します。

 

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特別寄稿 ステーション誕生から30年 訪問看護制度創設期の現場での奮闘

 

川越 博美

(かわごえ ひろみ)

特定非営利活動法人

在宅ホスピスボランティアきぼう 代表

元白十字老人訪問看護ステーション 所長

 

聖路加看護大学卒業。ライフケアシステムでの訪問看護などを経て、1992年老人訪問看護制度創設と同時に、白十字老人訪問看護ステーション所長。1997年聖路加看護大学地域看護学教授、2004年聖路加看護大学看護実践開発研究センター教授。その後、訪問看護バリアン看護部長、すみだ在宅ホスピス緩和ケア連絡会あこも代表を経て、現職。

 

老人保健法の改正により、1992年に老人訪問看護ステーションでの訪問看護が行われるようになりました。当時は、現場で必要性があっても、制度上、実施できないことがあるなど、制度とニーズが大きく乖離していました。その状況を変えるべく奮闘してきた創設期の訪問看護師たち。その1人である、川越博美さんに30年を振り返り、次世代を担う訪問看護師にメッセージをいただきます。

 

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