〈新連載〉能登半島の災害から学ぶべきこと

〈新連載〉

第1 回

被災地の現実と

被災者支援の変革

 

酒井 明子

———————————–

福井大学名誉教授/

日本災害看護学会能登半島地震災害

看護プロジェクトリーダー

 

 

連載を始めるにあたって

 

「なぜ、能登半島地震から1年以上が経過した今、連載がスタートするのか?」と疑問に思った人もいるのではないでしょうか。一方で、「いや、今だから、考えるべきことがあり、伝えていく必要がある」と考える人も多いでしょう。

 

令和6年能登半島地震は、あまりにも多くの課題をわれわれに突きつけました。このため、多くの分野で検証が進んでおり、超高齢化・過疎化・人口減少社会に向けた提言がなされています。また、国の動きとしては、防災庁設置に向けた検討が開始されています。

 

筆者にとって、目の前の被災地の現実は、人間の尊厳とは何かを考えるきっかけになりました。石川県内の看護部長たちによる有志の会「能登の灯」では、現地での看護支援の状況について議論が交わされ、参加するたびに大きな学びにつながりました。震災時に看護職がどう動いたか検証をする中で、震災直後から行われた看護は、看護の本質につながるものであると確信するようになり、これをもっと広く伝え、これからの看護は何を変革すべきかについて考える機会を提供したいと思うようになりました。

 

本連載には、2つの目的があります。1つは、能登半島地震で看護がどう動いたかを広く発信することです。そのため、次回は「能登の灯」のメンバーに各病院が一丸となって能登を守った現場の状況について執筆してもらう予定です。さらに3回目以降では、本編とは別に看護がどう動いたかが見えるよう、現場スタッフの声をコラムで伝えます。

 

2つ目は、他の学問分野や関連分野との融合の重要性を伝えることです。学問の世界は専門分化が進み、それぞれの分野内で理論化や実践が行われています。しかし、災害時には、異なる分野との情報共有や協働実践が必要となります。激甚化する災害に対して、諸学問がともに社会に寄与する新たな知識を生み出す必要があります。本連載では、法学・社会学・都市工学の専門家、NPO団体、作家、行政など、それぞれの立場からも被災者支援のあり方について論じてもらう予定です。

 

看護職は人間の命や暮らし、尊厳を守る専門家として、能登半島地震から何を学び、何を明らかにし、何を伝え、何を提言していけるのか。そして、学問横断的知識が求められる災害看護は、どのような切り口から被災者支援の本質に迫ればよいのか。本連載がこうした問いへのヒントになればと思います。

 

→続きは本誌で(看護2025年6月号)