Special Book Review(書評)『諦めない生き方』(致知出版社)

 

諦めない生き方評者:坂本 すが(さかもと すが) 
日本看護協会会長

 

著者である都倉亮氏は、事業家として活動していた55歳の夏、ステージ4の中咽頭がんを告げられる。その告知場面の記述に始まる本書には、放射線と化学療法の壮絶な闘病生活、直後の再手術、そして2年後の本書執筆中に発見されたがん転移との対峙が、氏の人生を織り交ぜて綴られている。

 

闘病記を読む度に思うことであるが、本書からも、病を生きるという患者の体験と人生に看護職はどう向き合うのかを、改めて問われた思いがしている。がんを病むということは、がんとその治療による心身の苦痛から免れない体験であるばかりか、家族や大切な人びととのつながり、昨日まであった日常、さらに明日を生きようとする希望を脅かされる体験である。その人の人生と切り離せない体験であるからこそ一層、臓器を見て人を見ない現在の医療の実態が浮かび上がって胸に迫る。 続きを読む…

Review『看護の時代』

kangonojidai

評者:喜多 悦子
(日本赤十字九州国際看護大学学長)

 

どう生きるか、どう死ぬかを
広く日本人に問うた書といえよう。

 

著者の顔ぶれにまず驚くであろう。しかも、タイトルには「看護」が謳われている。真っ先にこの本に手を伸ばすのは看護者であろうが、これは看護や保健医療専門家だけに向けた本ではない。医療の質的転換という変革の時代を広く世間一般と共有し、新たな時代を共に創造していくための指標となる書である。 続きを読む…

書評『看護の事業所 開設ガイドQ&A 地域でチャレンジするすべてのナースへ』

看護の事業所評者:椎名 美恵子(しいな みえこ)
訪問看護ステーションみけ管理者

 

約10年前、私自身も会社を設立し、訪問看護ステーションを開業しました。訪問看護ステーションの管理者経験もあり、長年働いている地域での開設であったため、地域文化やサービス体制などは、かなり熟知していました。しかし、“会社をつくること”や“経営”等については全くの初心者でした。数々の起業・経営の本を読み、就業規定や給与規定は弁護士や会計士に相談し、労働基準監督署へ行き、資金面では銀行に相談しながらの開業となりました。

 

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書評『事例を通して学ぶ避難所・仮設住宅の看護ケア』

評者:南 裕子(高知県立大学学長)

 

著者である黒田裕子氏は、阪神・淡路大震災の発災直後から文字どおり寝食忘れて、避難所・仮設住宅そして恒久住宅へと、時間の経過とともに場は違っても、そこに住む人々に寄り添って、創造的支援活動をされた。そして、その姿勢は東日本大震災までのほとんど全ての災害においても同じであった。 続きを読む…

書評『看護管理者のための実践的マネジメント 第2版 看護がリードする経営改善』

評者:山下 美智子 (公益財団法人筑波メディカルセンター筑波メディカルセンター病院副院長・看護部長)

 

第1版が出版された2008年から、認定看護管理者研修セカンドレベルの「看護管理実践計画」を立案するために、筆者が受講者に紹介しているのが本書である。看護管理者の基本としての「経営マインド」から「組織の運営」「財務分析」まで、概念だけではなく事例を提示して解説し、管理者が「ここがわからない」という細部の問いに答える内容となっている。自部署運営の中で、私たち管理者が不得意とする医療制度や組織分析、財務分析を、現在の知識でもわかるように解説して、その必要性を説いている。

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