Review『看護の時代』

kangonojidai

評者:喜多 悦子
(日本赤十字九州国際看護大学学長)

 

どう生きるか、どう死ぬかを
広く日本人に問うた書といえよう。

 

著者の顔ぶれにまず驚くであろう。しかも、タイトルには「看護」が謳われている。真っ先にこの本に手を伸ばすのは看護者であろうが、これは看護や保健医療専門家だけに向けた本ではない。医療の質的転換という変革の時代を広く世間一般と共有し、新たな時代を共に創造していくための指標となる書である。 続きを読む…

書評『看護の事業所 開設ガイドQ&A 地域でチャレンジするすべてのナースへ』

看護の事業所評者:椎名 美恵子(しいな みえこ)
訪問看護ステーションみけ管理者

 

約10年前、私自身も会社を設立し、訪問看護ステーションを開業しました。訪問看護ステーションの管理者経験もあり、長年働いている地域での開設であったため、地域文化やサービス体制などは、かなり熟知していました。しかし、“会社をつくること”や“経営”等については全くの初心者でした。数々の起業・経営の本を読み、就業規定や給与規定は弁護士や会計士に相談し、労働基準監督署へ行き、資金面では銀行に相談しながらの開業となりました。

 

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書評『事例を通して学ぶ避難所・仮設住宅の看護ケア』

評者:南 裕子(高知県立大学学長)

 

著者である黒田裕子氏は、阪神・淡路大震災の発災直後から文字どおり寝食忘れて、避難所・仮設住宅そして恒久住宅へと、時間の経過とともに場は違っても、そこに住む人々に寄り添って、創造的支援活動をされた。そして、その姿勢は東日本大震災までのほとんど全ての災害においても同じであった。 続きを読む…

書評『看護管理者のための実践的マネジメント 第2版 看護がリードする経営改善』

評者:山下 美智子 (公益財団法人筑波メディカルセンター筑波メディカルセンター病院副院長・看護部長)

 

第1版が出版された2008年から、認定看護管理者研修セカンドレベルの「看護管理実践計画」を立案するために、筆者が受講者に紹介しているのが本書である。看護管理者の基本としての「経営マインド」から「組織の運営」「財務分析」まで、概念だけではなく事例を提示して解説し、管理者が「ここがわからない」という細部の問いに答える内容となっている。自部署運営の中で、私たち管理者が不得意とする医療制度や組織分析、財務分析を、現在の知識でもわかるように解説して、その必要性を説いている。

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書評『がん研が作った がんが分かる本』(公益財団法人がん研究会 監修/ロハスメディア 編集・ロハスメディア)

評者:長谷川 久巳
(国家公務員共済組合連合会虎の門病院 管理看護師長/がん看護専門看護師)

 

がん患者さんやご家族が「素人ですから」と言うことは多い。この言葉の意味は、がんという病の脅威に対する怒りや諦め、否定あるいは医療者とよい関係を築きたいという表れだったりと、さまざまなように思う。いずれにしても、患者-医療者間の情報の質と量の差は決して埋められないし、たとえ、がん医療のプロであっても当事者となれば“素人”になるものである。そのような前提の上で、あえて本書は“患者さんにも勉強してほしい”と苦言を呈している。これを、「がんという病の脅威に逃げることなく、また情報に翻弄されず、がんや医療機関、医療者とうまく付き合い、患者さんが主役となって歩んでほしい」というメッセージに違いないと本書を読み進める中で感じ取った。 続きを読む…