書評『「チーム医療」とは何か』医療とケアに生かす社会学からのアプローチ(細田 満和子著)

評者:吉田 澄恵(東京女子医科大学看護学部准教授)

 

とかく看護職は、現場で遭遇する「問題」への「答」というものを書物に求めるのではないだろうか。しかし、本書は「社会学からのアプローチ」である。社会学は、人々が当たり前と見ている物事について、それを捉え直す視点をプレゼントしてくれる学問だと思う。

 

だから、本書を読むと、私たちが現場で「チーム医療」という言葉を使いながら、“心通じる”とか、“話が通じない”という気持ちになる状況が、なるほどとわかる。それも実にシンプルな「専門性志向」「患者志向」「職種構成志向」「協働志向」という4要素だけで。しかも、その説明がかなりリッチだ。そして、だからこそ、むしろはっきりと、「チーム医療」という言葉を使っても、本当は何も変わらないかもしれないという事実をも突きつけられる。「答」はないことも。

 

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書評『大槌町 保健師による全戸家庭訪問と被災地復興』(村嶋 幸代・鈴木るり子・岡本 玲子編著/明石書店)

評者:堀井 とよみ(京都光華女子大学健康科学部看護学科客員教授)

 

本書は、2011年3月11日に起きた東日本大震災の被災地の悲惨な状況を、岩手県大槌町保健師の経験を持つ看護教員が伝えた言葉をきっかけに、全国保健師教育機関協議会が大槌町との調整に奔走し、全国の会員校や保健師に呼びかけ、全戸家庭訪問が実現した全記録です。

 

災害発生後50日目から、保健師による全戸訪問で住民ニーズを正確に把握した意義は大きいと言えます。

 

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書評『看護組織の活性化と変革へ フィッシュ!の導入と実践ガイド』(小路 美喜子 編集責任)

評者:畠山 とも子(福島県立医科大学看護学部准教授)

 

本書は、楽しく、生き生きとした職場をつくるための指南書です。「フィッシュ!」とは文字どおり「魚」です。かつて元気なく、報酬だけのために1日をやり過ごしていたアメリカ・シアトルのある魚屋が、新たな経営管理を導入したことで活気ある楽しい職場に変化し、優良市場に変化したのです。その「フィッシュ!」哲学、①態度を選ぶ、②仕事を楽しむ、③人を喜ばせる、④相手に注意を向ける、という4つの原理が説明されています。

 

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書評『看護の時代』(日野原重明・川島みどり・石飛幸三)

評者:喜多 悦子(日本赤十字九州国際看護大学学長)

 

著者の顔ぶれにまず驚くであろう。しかも、タイトルには「看護」が謳われている。真っ先にこの本に手を伸ばすのは看護者であろうが、これは看護や保健医療専門家だけに向けた本ではない。医療の質的転換という変革の時代を広く世間一般と共有し、新たな時代を共に創造していくための指標となる書である。

 

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書評『短歌と人生』(杉山 喜代子著/角川グループパブリッシング)

評者:守屋 治代(東京女子医科大学看護学部基礎看護学准教授)

 

生きていくことの深い根底には哀しみが満ちている。人は弱いからこそ強く、悲しみを突き抜けたところに喜びが生まれ、孤独だからこそ愛の深さを知る。限りある命を生きる中に永遠の命を見いだす。このような矛盾の中に、人が生きていくことの哀しさと美しさが同居している。

 

名歌に寄せる杉山氏の細やかな心情は、私にそのような感慨を深くさせた。氏は、人生の途上に病を重ねながら、長い間、看護教育・研究に携わってきた。

 

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