医療安全トピックス vol.179

 

■VOL.179

大竹 尊典

公益財団法人日本訪問看護財団

事務局 次長

 

在宅の医療安全 カスタマーハラスメントへの対応

 

日本訪問看護財団では、訪問看護をはじめとした在宅ケアサービスの普及・発展をはかるため、さまざまな取り組みを行っています。本稿では、昨今、訪問看護の現場で利用者やその家族からのカスタマーハラスメントが深刻な問題となっていることを受け、対策の方向性について言及します。

 

本連載では、過去2年にわたり、日本訪問看護財団(以下:本財団)の「あんしん総合保険」における賠償事案(保険金の支払いに至った事案)について報告しました。昨年度の賠償責任保険でも、「歩行訓練時に椅子に座ったままずり落ち骨折する」など、利用者の活動中の事故が支払金の上位を占め、また、職員の傷害保険においては、業務に関連する移動中の事故等での負傷による保険金支払いが上位を占めていました。賠償責任保険や業務従事者傷害保険は、当事者への直接的な被害が生じているケースのため、訪問看護において特色あるアクシデント事例が見てとれます。

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【Book Selection】新刊書籍のご紹介

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精神科訪問看護へようこそ

 

 

病棟から精神科訪問看護に飛び込んだこころさんが、看護大学で働くカワウソ先生との対話を通して在宅の精神科看護を学び、成長していく物語です。

 

川下 貴士 ●かわしも たかし

松蔭大学看護学部看護学科精神看護学 助教

 

小野坂 益成 ●おのざか ますなり

松蔭大学看護学部看護学科精神看護学 講師

 


 

第14回 近いからこそ必要な客観性

 

前回のあらすじ

こころさんはカワウソ先生に、精神科訪問看護の道に入ったいきさつや、現場での経験で忘れられないエピソードを聞きました。先生の話から、精神科訪問看護で重要な視点を得ることができました。

 

 

こころ カピバラ先生、お久しぶりです!

 

カピバラ ああ、こころさん、久しぶり! カワウソ先生はいないよ。

 

こころ そうなんですね。でも、今日はカピバラ先生に会いに来たので、大丈夫です!

 

カピバラ えっ……いつもカワウソ先生に相談されているので、びっくり。どうかしたの?

 

こころ はい。少し前にカワウソ先生に最近の出来事を話す機会があったんですけど、カピバラ先生にも話したいことがあって、来ちゃいました!

 

カピバラ そういうことか。こころさんも精神科訪問看護を始めてから2年目になったしね。もう慣れたかな?

 

こころ はい、最近は順調です! 利用者さんともだいぶ信頼関係を築けるようになってきたと思います。ただ、かかわる期間が長くなるにつれて、私が感情移入をするようになって……、「これでいいのかな」とも思うんです……。

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市民とともに歩むナースたち(10)

「People-Centered Care(PCC)」とは、市民が主体となり保健医療専門職とパートナーを組み、個人や地域社会における健康課題の改善に取り組むことです。本連載では聖路加国際大学のPCC 事業の中で経験した「個人や地域社会における健康課題の改善」を紹介します。

 

射場 典子 いば のりこ

聖路加国際大学

PCC開発・地域連携センター

看護情報学 准教授

 


「つながる暮らしの談話室:佃の渡しサロン」

地域の高齢者が自分らしく生きる力を育むナラティブ・コミュニティ

 

「るかなび」で蒔かれた種

「佃の渡しサロン」(以下:サロン)は、本連載第1回・第2回(2025年1・2月号)で紹介した「聖路加健康ナビスポット:るかなび」で活動していた7名のメンバー(市民ボランティア、看護師・保健師、歯科衛生士、司書)が中心となって立ち上げた地域サロンです。同じ中央区内ではありますが、大学の外で活動しています。

 

「るかなび」が始まったとき、一緒に活動して
いた市民は地元の人ばかりではありませんでした。ボランティアとして活動するために、遠方から通われる人も多かったようです。私たちは、そういった人たちが、一緒に活動する中で主体的に健康生活を築いていくためのヘルスリテラシーを身につけ、自分たちの持ち味を生かしてピープルセンタードケア(以下:PCC)の担い手として、いつか地元や新たな場へと巣立ち、PCCが広がっていってほしいと願っていたのです。それが実現したのはPCCが提唱され、「るかなび」が始まってから約10年後の2015年のことでした。

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能登半島の災害から学ぶべきこと(企画協力:酒井明子)

 

第4回

能登半島地震の災害関連死①

 

上田 耕蔵◉1975 年神戸大学医学部卒業後、神戸医療生活協同組合神戸協同病院に就職。1993 年より現職。1995 年の阪神・淡路大震災において災害関連死という概念を提唱した。

 


 

災害関連死は災害ごとに違う様相を見せます。能登半島地震の特徴は、①後期高齢者比率増:福祉施設支援の課題、②地理的問題:自衛隊空白地、③医療職員不足:災害拠点病院の機能低下です。さらにマスコミの災害関連死の捉え方に問題を感じました。概念の見直しも必要と思われます。

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