(No.12)
勇気と敬意が「友情」を築く
『グリーンブック』
宇梶 智子
宇梶 智子
医療法人社団 一心会初富保健病院看護部長/認定看護管理
20~30代のころは、夜勤明けでもミニシアターをめぐって、世界中のバラエティ豊かな映画を楽しんでいた。
そのほかの趣味は、韓国の食・ポップミュージックをはじめ、さまざまな文化を知ること。
ストーリー
1962年、イタリア系アメリカ人の〈トニー〉は、ニューヨークの高級クラブの用心棒として働いていました。腕力が強いだけでなく、機転が利き弁も立つので、そのかいわいで名をはせていました。しかし、クラブの改装による閉店で無職になってしまいます。職探しのさなか、知人から「どっかのドクターが運転手を探している」と連絡が入り、教えられた住所を頼りに面接に向かいます。するとそこは、かの有名なカーネギーホールでした。
ホール2階の豪邸に住む依頼主の〈ドクター・シャーリー〉は、有名な黒人ジャズピアニストだったのです。シャーリーの要求は、「8週間にわたるアメリカ南部でのコンサートツアーに、運転手兼付き人として同行すること」でした。トニーは「身の回りの世話はまっぴらごめんだ」と断ります。そのほかにも、家を空ける期間が長すぎること、差別地域で黒人の用心棒をするには給料が安すぎることも主張します。シャーリーはトニーの評判を知っていましたので、給料アップの要求を受け入れ、さらにトニーの妻の了承を得るという作戦に出ます。結局、トニーは運転手兼付き人として、ジャズユニット“ドン・シャーリートリオ”のツアーに同行することになりました。
劇中にも何度も登場し、映画の題名ともなっている「グリーンブック」とは、黒人が使用可能なホテルやレストランを掲載した黒人専用ガイドブックのこと。トニーは、出発時にレコード会社からグリーンブックを渡されます。それを頼りにシャーリーのホテルや食事場所を手配するわけですが、活用するにつれ、アメリカ南部の人種差別の現状をあらためて知ることになるのです。