N.Focus  マグネット的組織文化の変革がもたらしたもの

 

マグネット的組織文化の変革がもたらしたもの

 

五十嵐 由衣 ●いがらし よしえ

聖路加国際病院附属クリニック聖路加メディローカス

ナースマネジャー・マグネットプログラムディレクター

 

マグネット認証は、世界最大の看護師の資格認証組織である、米国看護師認証センター(The American Nurses Credentialing Center: ANCC)が卓越した看護を提供する医療機関に与える国際認証です。聖路加国際病院は、2013年よりマグネット認証取得に向けた活動を開始し、2019年に初回認証を取得。4年間の認証活動を経て、2024年8月に2回目の認証を取得しました。本稿では、看護師が質の高い看護を提供し、やりがいを持って働き続けられる組織づくり、マグネット的組織文化の変革について紹介します。

 

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N.Focus  プロセス改善による生産性向上 NKリーン生産方式の活用①

 

プロセス改善による生産性向上 NKリーン生産方式の活用①

 

兄井 利昌 ● あにい としまさ

株式会社日本経営業務プロセス改善部 部長
リーンコンサルティング認定ゴールド資格保有

 

[略歴]

東京組織人事コンサルティング部門責任者およびリーンチーム責任者を務める。コンサルタントの解決策提供スタンスではなく、「現場職員が問題を発見し、解決するスタンス」をメインとする。約20年の医療機関へのコンサルティング経歴があり、コンサルティング実績は延べ100件以上。総務省公営企業アドバイザー(医療機関対象:医師の働き方改革、業務改善・効率化、人事制度構築等)も務めた。

 


 

筆者は、リーン生産方式という手法を医療現場に適した形で導入し、改善を行っているコンサルタントです。本稿では、この生産方式の概要を説明した上で、看護現場でよく見られる無駄と、その原因・対策を解説します。

 

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N.Focus  窒息リスク評価の標準化をめざして

 

窒息リスク評価の標準化をめざして

 

迫田 綾子 ● さこだ あやこ

日本赤十字広島看護大学 名誉教授
POTTプロジェクト代表

 

[略歴]

広島大学医学部附属看護学校卒業後、病院勤務を経て2021年広島大学大学院医学系研究科前期修了。日本赤十字広島看護大学基礎看護学、摂食嚥下障害看護認定看護師教育課程主任教員を兼務。

 


 

窒息のリスクを誰でも・どこでも・短時間で・包括的に評価できるものにすることを目標に考案された「窒息リスク評価表」。食事におけるポジショニングやケアのあり方を追求する筆者が、その開発経緯や具体的な利用法などを紹介します。

 

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〈新連載〉市民とともに歩むナースたち

〈新連載〉

 

「People-Centered Care(PCC)」とは、市民が主体となり保健医療専門職とパートナーを組み、個人や地域社会における健康課題の改善に取り組むことです。本連載では聖路加国際大学のPCC 事業の中で経験した「個人や地域社会における健康課題の改善」を紹介します。

 

射場 典子いば のりこ

聖路加国際大学PCC開発・地域連携室

 

中村 めぐみなかむら めぐみ

聖路加国際大学PCC開発・地域連携室

 


連載のはじめに

市民主体のケアにおける

看護職のありよう

 

 

市民が主体となるケアとは

 

聖路加国際大学では2003年よりピープル・センタード・ケア(PCC)という新たなケアの開発に取り組んでいます。

 

「医療の主人公は誰か?」そんな当たり前の問いからPCCの探求は始まりました。誰もが自分の人生の主人公であり、生活の主体であるにもかかわらず、医療の場では受け身となり、医療者がよかれと思う道筋へと進んでしまいがちなのはなぜでしょうか。

 

PCCのPは“Patient”ではなく、“People”であり、看護の対象を「患者」という医療の枠組みのみで捉えるのではなく、地域社会で暮らしている人(市民)と捉えます。そして、市民1人ひとりが医療者とパートナーを組み、自分自身や地域社会における健康課題の改善に向けて取り組むことが市民主体のケアと言えます。

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看護と経営(9)

 

●監修 福井 トシ子

国際医療福祉大学大学院副大学院長/教授

●企画協力

鳥海 和輝

『Gem Med』編集主幹

小野田 舞

一般社団法人看護系学会等社会保険連合 事務局長

 

診療報酬等に関連する用語の理解や管理指標の持つ意味、病院機能ごとの経営の考え方について解説するとともに、事例を通じて、看護管理者が病院経営に貢献するためのヒントを探ります。

*vol.1〜6は【解説編】、vol.7以降は【実践編】となります。

 


 

vol.9 実践編③

損益分岐点を用いた経営提案

 

近藤 由理香

こんどう・ゆりか◉杏林大学医学部付属病院総合周産期母子医療センター師長。杏林大学保健学部看護学科卒業後、杏林大学医学部付属病院に勤務。現在、産科病棟で産科ケアの導入に携わっている。国際医療福祉大学大学院医療経営管理分野 医療経営戦略コース修士課程修了。

 

 

新たな企画を実施するときに重要なことは、その事業(企画内容)が組織と社会にとってどれほど有益なものであるかを、事業主(病院長、理事長など)に伝えることです。これまで本連載で述べてきたように、病院は営利を目的とする企業ではないとは言え、有益性があり、収益の見込める事業を実施する必要があります。

ここでは、産科病棟で産後ケア(宿泊型)を新たに開設する事例から、損益分岐点について解説します。産後ケアは、こども家庭庁が提唱している「安心・安全で健やかな妊娠・出産、産後を支援する体制」の一事業として、2021年4月に施行された母子保健法に定められています(第17条の2)1)。産後ケア事業の実施主体は市町村ですが、受託先の不足が課題となっており2、3)、病院の空床利用も認められています4)。

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