書評『「チーム医療」とは何か』医療とケアに生かす社会学からのアプローチ(細田 満和子著)

評者:吉田 澄恵(東京女子医科大学看護学部准教授)

 

とかく看護職は、現場で遭遇する「問題」への「答」というものを書物に求めるのではないだろうか。しかし、本書は「社会学からのアプローチ」である。社会学は、人々が当たり前と見ている物事について、それを捉え直す視点をプレゼントしてくれる学問だと思う。

 

だから、本書を読むと、私たちが現場で「チーム医療」という言葉を使いながら、“心通じる”とか、“話が通じない”という気持ちになる状況が、なるほどとわかる。それも実にシンプルな「専門性志向」「患者志向」「職種構成志向」「協働志向」という4要素だけで。しかも、その説明がかなりリッチだ。そして、だからこそ、むしろはっきりと、「チーム医療」という言葉を使っても、本当は何も変わらないかもしれないという事実をも突きつけられる。「答」はないことも。

 

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書評『看護組織の活性化と変革へ フィッシュ!の導入と実践ガイド』(小路 美喜子 編集責任)

評者:畠山 とも子(福島県立医科大学看護学部准教授)

 

本書は、楽しく、生き生きとした職場をつくるための指南書です。「フィッシュ!」とは文字どおり「魚」です。かつて元気なく、報酬だけのために1日をやり過ごしていたアメリカ・シアトルのある魚屋が、新たな経営管理を導入したことで活気ある楽しい職場に変化し、優良市場に変化したのです。その「フィッシュ!」哲学、①態度を選ぶ、②仕事を楽しむ、③人を喜ばせる、④相手に注意を向ける、という4つの原理が説明されています。

 

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書評『看護の時代』(日野原重明・川島みどり・石飛幸三)

評者:喜多 悦子(日本赤十字九州国際看護大学学長)

 

著者の顔ぶれにまず驚くであろう。しかも、タイトルには「看護」が謳われている。真っ先にこの本に手を伸ばすのは看護者であろうが、これは看護や保健医療専門家だけに向けた本ではない。医療の質的転換という変革の時代を広く世間一般と共有し、新たな時代を共に創造していくための指標となる書である。

 

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夏休みに被災地で看護支援をしようと考えている方へ ☆☆ オススメ書籍『避難所・仮設住宅の看護ケア』

昨年3月11日に起こった東日本大震災から1年5ヶ月が過ぎ、ニュースでも被災地の話題が取り上げられることはだんだん少なくなってきました。しかし被災地では、いまでも仮設住宅で不自由な生活をされている方がたくさんいらっしゃいます。近くに知り合いがいないため1人家に閉じこもり、生活不活発病になったり、誰にも知られずに孤独死されている1人暮らしの高齢者がいらっしゃるということは、残念ながら事実です。

 

弊社書籍『事例を通して学ぶ 避難所・仮設住宅の看護ケア』では、急性期の避難所での支援だけでなく、被災から1年ほど経過した時期の仮設住宅で暮らす被災者への看護支援について、シミュレーション問題を用いて学ぶことができます。

 

たとえば、こんな感じです。

【Q】

仮設住宅で暮らす1人暮らしの65歳の男性Yさんは、津波で妻を失い、日々の生活のすべてを自分でしなければならなくなりました。これまですべての家事は妻がしていたようで、Yさんは台所に入ったことすらなく、食事をどうやってつくればよいか見当もつかない様子です。

Yさんは「これから先、どうしていいかわからない」と言って、毎日アルコールを飲みながら、うさ晴らしをしています。看護ボランティアのEさんが訪問しても、床にカップラーメンの容器がころがっているだけで、きちんとした食事をしている様子はありません。酒瓶の数は日に日に増えており、このままではEさんの健康が心配です。

 

みなさんならば、Yさんにどのように支援の手を差し伸べますか?

 

著者の1人、黒田裕子さんは、阪神・淡路大震災の被災者で、自らも4年間仮設住宅で生活をされてきた経験をもちます。その間、一人ひとりの被災者と個として向き合い、人間らしい暮らしができるように様々な活動をされてきました。東日本大震災でもいち早く現地に赴き、現在に至るまで継続して被災者支援にあたっていらっしゃいます。

 

「被災から1年以上経ったから、もう自分が行く必要はないのではないか」と思っていませんか。まだまだ現地にはあなたの支援を必要としている方が大勢いらっしゃいます。8月も半ばになりましたが、これから夏休みという方もいらっしゃるでしょう。夏休みを利用して、被災地で看護ボランティアをしてみようと思った方は、ぜひ現地に『事例を通して学ぶ 避難所・仮設住宅の看護ケア』を持参していってください。困ったときの助けに必ずなると思いますよ。

 

こちらから、少しだけ立ち読みもできます!

【NT8月号特集】これからのストーマ管理 在宅・施設へ安全につなぐ

先週まで連載の紹介ばかりしていましたが、今日はメインの特集の紹介です。8月号では専門的な管理の必要がないストーマの装具交換を医療者以外も行えるようになったことを受けて、「このような中で本当にストーマ保有者の安全を守っていくために、ナースは何を知っておくべきかを伝えるべき」という編集会議での意見を受けて特集を組みました。

 

監修をしてくださったのは、日本創傷・オストミー・失禁管理学会で、医療者以外のストーマ装具交換の指針作りに携わった田中秀子先生(淑徳大学看護栄養学部教授)です。

 

各論では、さまざまな場面でストーマ保有者の安全を守るために活動されている皮膚・排泄ケア認定看護師の皆さんに、実際の活動をご紹介いただいています。以下では、そのポイントをご紹介します。

 

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