10月号の特集のテーマは「がん患者の意思決定支援入門」。編集委員で「診断から治療期」のパートを書いてくださった首都大学東京の三浦里織先生の提案で出来上がった企画です。
意思決定支援では、エンドオブライフ期や、エンドオブライフへ移行する時期の意思決定支援が難しく、今回の特集でも大きく扱っています。ただ、今回の特集で三浦先生が執筆された「診断から治療期」でも患者はさまざまな意思決定をしており、そこにナースの役割もたくさんあることを見てほしいと思っています。
以下に、今回の特集のポイントをまとめてみました。
意思決定支援の基礎知識:がん患者さんとのコミュニケーションのとり方
梅澤 志乃(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科医歯学系専攻全人的医療開発学講座心療・緩和医療学分野/精神看護専門看護師)
■コミュニケーションとは、一方通行の情報伝達ではなく、双方向過程で互いにメッセージを送り受ける介入であり、その過程でともに自分を示し相手を解釈するもの
■患者の話をきいた看護師が、それに対して感じたこと、考えたことを伝える「言葉のキャッチボール」のプロセスを踏むことで、共感に至る
■コミュニケーションの基本は、①正確にきく→②理解し、消化する→③対応するの3段階
■「〜すべき」といった価値観や感情規制に縛られていないか、客観的に振り返る姿勢が大切
病期で考える意思決定支援:診断から治療期
三浦里織(首都大学東京准教授/がん看護専門看護師)
■患者が不安なときは、情報を提供するより、心から関心を寄せ、語りを十分に聴く。抑うつ状態で介入が必要なときは専門家へつなぐ
■治療内容が理解できるよう、日をあらためて、わかりやすく補足説明する。情報は必要な時期を見極め、正しく適切な量を提供していく
■患者自身が意思決定するためには、身体的苦痛が増強しておらず、精神的にも落ち着いた状況にあることが必要
■コミュニケーションがうまくいかないときは、語りやすい環境を整えたり、看護師自身が自分の気持ちを患者に開示することも有効
病期で考える意思決定支援:エンドオブライフ移行期
風間郁子(筑波大学附属病院/がん看護専門看護師)
■患者・家族の心理状態に十分配慮し、わかりやすく情報を提供する
■患者の価値観を尊重し、セルフケア能力や病状などを考え合わせ、目標・方針・方法を決める
■多職種連携の調整は患者に一番身近な看護師が積極的に行う
■患者のコミュニケーション能力に応じて看護師が患者の代弁者となり家族と話し合う
■家族だけに患者の希望と異なる意思決定をした責任を負わせない
■うまくコミュニケーションがとれない場合、誰とならコミュニケーションをとりやすいかを考える
■強い否認行動をとっている患者は落ち着くのを待ってから話す
■必要があれば精神科の介入も検討する
■日ごろから信頼関係を築けている医療者が率直に気持ちを伝える
病期で考える意思決定支援:エンドオブライフ
久山 幸恵(静岡県立静岡がんセンター/がん看護専門看護師)
■患者とその家族の病状の認識や治療の受け止めを理解する
■患者を一人の人間として関心を注ぎ、相手の価値観を理解する
■全人的な視点から患者の持てる力を生かし、意思決定を援助する
■患者とその家族の揺れる気持ちに寄り添い続ける
■多職種間の橋渡し役として医療チーム内を調整する
■患者が医療者に「死にたい」と訴えるときには、その言葉に隠されているメッセージがある。最期まで苦しみが最小限で過ごせるようにサポートしていくことを保証する
■喪失の危機に直面した家族は感情のコントロールが難しくなることを理解する。家族の価値観を理解した上で患者のメリット、デメリットを評価し折り合いを見いだせるようにかかわる