映画と、生きるということ(1)


新連載(No.1)

何かにはなれなくても、
私たちには生きる意味がある

 

渡辺 裕子

 


渡辺 裕子 NPO法人 日本家族関係・人間関係サポート協会 理事長
長年、家族看護の発展に注力し、近年は「かぞくのがっこう」の開講など市民にも家族看護のエッセンスを伝え、広げている。趣味は鉛筆デッサン。

 


 

刑期を終え、うつろな表情で小さなどら焼き屋を営む千太郎に、徳江が働かせてほしいと声をかけたのは桜が満開のころ。徳江は、千太郎にあんの炊き方を教え、店は大繁盛。しかし、徳江のハンセン病による指の変形を見とがめた客からうわさが広がり、客足は遠のいていく。徳江は店を辞め、千太郎は徳江を世間から守れなかった自分の非力さに打ちのめされる。

 

秋、徳江から手紙が届き、再会を果たした矢先、徳江は帰らぬ人となる。そうして迎えた春、徳江の遺言ともなった「自分のどら焼き」を完成させた千太郎は、新たな人生を踏み出していく。

 

小豆と向き合う
とてもやさしい気持ちになれる映画です。焦りや不安、いら立ちなど、生きていれば誰もが抱える心の“カサつき”を癒やしてくれる作品です。

 

映画の舞台は、どこにでもあるような街角の小さなどら焼き屋。平凡な日常の風景が淡々と流れていく中、ストーリーが進行していきます。

 

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経験から学ぶ看護師を育成するリフレクション支援のわざとコツ(1)



新連載(1)

経験から学ぶ力を育むための
リフレクション支援のヒント

 

東 めぐみ

 

 

経験から学ぶ看護師を育成する研究会では、リフレクションを推進するための支援について検討を深めてきました。本連載では、支援者が自ら自己の支援を内省することで、次の支援のための教訓を見いだすという経験学習のサイクルの実際と、他者のリフレクション支援から学びを得て、それをどのように自己のリフレクション支援に生かしているかをご紹介します。

 

看護師の語りとリフレクション支援
近年、リフレクションは多くの医療機関や教育機関で推進されるようになりました。これを推進する指導的立場にある皆さま(以下:支援者)から、「リフレクション支援をどう行ったらいいのか悩んでいる」「支援者の育成が課題である」との声が多く聞かれ、支援者の育成について検討してきました。

 

また、支援者の悩みに耳を傾けていると、「看護師の思いを引き出すことが難しい」という言葉をよく聞きます。リフレクションでは看護実践を語り、その語りから次の実践に役に立つエピソードを見いだし、行われたケアの意味を探求していきます。そのときに必要なのが、看護師が自分の体験を物語るという行為です。支援者は看護師に語ってもらいたいという願いから、「思いを引き出す」ことを役割と考えています。

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【Book Selection】新刊書籍のご紹介

 

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生きるということ


共に新型コロナと闘った
看護職の皆さまへ

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小池 百合子[東京都知事]

 

こいけ・ゆりこ|1952年、兵庫県生まれ。カイロ大学文学部社会学科卒業。日本初の女性経済ニュースキャスターを経て、1992年参議院議員、1993年衆議院議員に当選。環境大臣、内閣府特命担当大臣(沖縄及び北方対策)兼任、内閣総理大臣補佐官(国家安全保障問題担当)、防衛大臣などを経て、2016年には女性初の東京都知事に当選。現在は2期目となる。座右の銘は「備えよ常に」。

 

Ⅰ 記念に寄せて

 

『看護』創刊75周年、『コミュニティケア』創刊25周年、おめでとうございます。

 

日本の看護制度の根幹である「保健師助産師看護師法」(制定当時「保健婦助産婦看護婦法」)が公布されたのは、戦後間もない1948年でした。その翌年に創刊された『看護』の歴史は、戦後の日本の歴史とともに歩んできたといっても過言ではありません。

 

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折々のはなし

教育現場の立場から角田直枝さん、在宅現場の立場から大槻恭子さん、福祉現場の立場から鳥海房枝さんに、日々考えていること・
気になっていること・感じていることなどを述べていただく私的エッセイ。

 

 

角田 直枝

かくた なおえ

常磐大学大学院看護学研究科

 

病院・訪問看護ステーション勤務をはじめ、日本訪問看護振興財団の認定看護師教育課程訪問看護学科などで教育に携わる。2010年より茨城県立中央病院・茨城県地域がんセンター看護局長を12年間勤め、2022年3月に退職。同年4月より現職。がん看護専門看護師、特定行為研修修了者。

 


 

基礎教育と臨床がつながる教育とは

 

今年の夏は、全国で大変な暑さになりました。猛暑に加えて雨が少ない地域では農業に、そして海水温の上昇によって漁業にも影響が出ています。これからの冬、春以降、この先の気候変動への不安も大きくなっていますね。そのような中でも、人々の生活はコロナ禍以前の状態に戻ってきており、買い物や外食、旅行、そして現地での学会参加などが活発になっています。

 

教員の喜びと学生の戸惑い

 

新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが5類に変更されたことで、看護学生の実習も少しずつ、以前とは変わってきています。具体的には次のような変化です。

 

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