クリミアでの活躍で一躍英雄となったナイチンゲールは、類まれな知力・思考力・行動力で公衆衛生改革に邁進し、また看護教育制度の確立に努め、それまで卑しい職業と思われていた看護師のイメージ像を飛躍的に向上させました。一方で、「歴史上初の病院建築家」「統計学の母」とも言われるように、彼女の活躍は「看護」にとどまりません。ナイチンゲールが確固たる信念の下に行った既存の枠からの「越境」は、看護にどのような影響を与えたのかについて考えます。
SPECIAL BOOK GUIDE 看護職の持つ可能性を最大限に発揮する ナイチンゲールの「越境」が看護にもたらしたもの
災害に強いステーションづくり(3)
訪問看護ステーションにおけるBCP(事業継続計画)の
策定、防災・減災対策のポイントを解説するとともに、
実際の事例などをとおして災害時の
対応・危機管理のあり方を示します。
災害対応の基本③
命を守るための災害情報
寺田 英子
てらだ ひでこ
災害看護専門看護師/認定看護管理者
自分の命は自分で守る
前号では、災害が発生した際のスタッフの「自助」の重要性について解説しました。「自助」は他者を助ける「共助」のベースになります。そのため、スタッフ1人ひとりが「自分の命は自分で守る」ことを優先して判断・行動ができるようにしておくことが大切です。
訪問看護ステーションのスタッフは、車や自転車などの手段で地域に出向いて働いており、勤務時間のほとんどを外で過ごしています。また、事業所・利用者宅の立地やその場に着くまでの移動経路はさまざまで、海や河口に近い場所では大地震により津波に襲われたり、山間部や急傾斜地では、大雨により土石流などの土砂災害に巻き込まれたりする可能性があります。地域に密着した訪問看護ステーションだからこそ、事業所や周辺地域、訪問地域の災害リスクを把握し、起こり得る災害を予測することが災害対策の第一歩になります。
しかし、人は「ここまで津波がきたことがない」など過去の経験に基づいた災害の危険性に対する誤った認識や、「自分だけは大丈夫なはず」などの思い込み(正常性バイアス)、砂防ダムなどのインフラへの過度の信頼などによって避難が遅れることがあります。
地域ケアの今(67)
この拙文が読者の皆さまの目に触れるころ、福祉領域の事業所は新型コロナウイルス感染症にどのような対応をしているのか、また、ワクチン接種は予定通り進んでいるのか大変気になるところです。今、東京の繁華街は様変わりし、閉店する店も目にするようになりました。コロナによるパンデミックが私たちの生活様式を変え、その影響はさまざまな分野にまで及んでいます。歴史を振り返ると、感染症という「疫病」が社会に大きな変化をもたらしたように、「コロナ禍」が収束しても元に戻るのではなく、新たな時代に入ることを予感させます。
【Book Selection】新人看護職員入職に備える2021
SPECIAL BOOK GUDE ナイチンゲール生誕200年記念出版:ナイチンゲールの多面性・多様性と人間的魅力を再発見!
1820年5月12日、イタリアのフィレンツェで生まれたフローレンス・ナイチンゲールは、2020年に200歳の誕生日を迎えました。弊社ではこれを記念し、ナイチンゲール自身の著作および彼女にまつわる関連書籍のシリーズを刊行しています。「クリミアの天使」という一般的なイメージを越境したナイチンゲールの多面性・多様性と人間的魅力を、本シリーズを通して感じていただければ幸いです。