NT2014年6月号連載【アセスメント力を高めるフットケア】紹介

NT1406表紙NT2014年6月号の

【アセスメント力を高める

フットケア】は、

 

「足の筋腱を理解する」

 

足部の筋肉

 

前回は、足の骨について書かせていただきました。足部には、全身の骨の数の約4分の1が集まっています。そのため、それぞれの骨をつなぎ動かす筋腱もたくさんあります。人の筋肉には平滑筋、骨格筋、心筋の3つがありますが、そのうち骨格筋は横紋筋とも言い、唯一自分の意志で動かすことができる随意筋です。骨格筋は、全身で約400個あると言われていますが、足部には両方で26個があり、下腿部とつながっている筋腱も合わせると約50個になります(表1)。

 

足趾を動かす筋腱

 

第1趾を屈曲させる筋肉には、短母趾屈筋と長母趾屈筋があります。短母趾屈筋は、図1にある通り、中足部にある3つの楔状骨と立方骨から始まり(起始)、母趾の基節骨底につながっています(停止)。足底側にある筋肉で、収縮することで足趾が曲がる仕組みになっています。すでにご存じかとは思いますが、筋肉の両端は腱と言われる部分で、その部分が骨に接合しています。そして、筋肉は容易に収縮と弛緩をしますが、腱は筋肉ほどの柔軟性はなく、ほとんど弛緩、収縮をしません。短母趾屈筋とペアになり、第1趾を伸展させる筋肉が、短母趾伸筋です(図1)。短母趾伸筋は、踵骨の背面から始まり、母趾の基節骨骨底で停止している筋腱です。屈筋は足底側にあるのに対し、この伸筋は足背側に位置しています。これらペアになっている筋肉は、第1中足趾節関節(第1MTP関節)の動きを担っています。

 

そして、第1趾を屈曲伸展させる筋肉のうち、長母趾屈筋と長母趾伸筋は、第1趾節間関節(IP関節)の屈曲、伸展の働きを担っています。そして、図2にあるように、足趾を動かす筋であるにもかかわらず、筋の起始は下腿部にあります。長母趾屈筋は、腓骨後面の下3分の1付近で、下腿骨間膜の後面に付着しています。そして、足底側を通り第1趾の末節骨骨底で停止します。また、長母趾屈筋とペアになっている長母趾伸筋は、第1趾のIP関節を伸展させる役割を担っています(図2)。起始は、腓骨および下腿骨間膜の前面で、足背側を通り停止は第1趾の末節骨底の背面となります。つまり、これらの筋腱も、図3に示す下腿部の断面図からもわかるように、屈筋と伸筋はおおよそ反対側にあります。

第2〜5足趾にも、同様の筋腱が存在します。長母趾屈筋と同じ役割は長趾屈筋(図2)(それをサポートする筋に足底方形筋がある)、長母趾伸筋と同じ役割は長趾伸筋(図2)となります。そして、短母趾屈筋の場合は短趾屈筋(図1)、短母趾伸筋は、第2〜4趾は短趾伸筋(図1)となります。第5趾には、屈曲と外転の運動を担う小趾外転筋(図1)、屈曲させるための短小趾屈筋(図1)、底屈させる小趾対立筋(小趾内転筋の一部とされている)があり、他の足趾と違う筋が動きを司っています。

 

また、第1趾には、母趾内転筋という筋もその動きに関与しています(図1)。第2〜5趾の中足趾節関節包から始まる横頭と、立方骨、外側楔状骨、第2〜4中足骨底と外側種子骨から始まる斜頭があり、両方とも第1趾の基節骨底の外側で停止します。その機能は、筋肉の名前の通り母趾を内転、つまり母趾を第2趾側に付ける方向に働きます。母趾外転筋とのバランスが何らかの原因で崩れ、母趾外転筋が弛み母趾内転筋が過緊張になると、外反母趾となります。母趾外転筋は、踵骨の内側隆起、足底腱膜、舟状骨などに付着し、母趾基底骨底、内側種子骨で停止します。また、この2つの筋腱は足の横アーチや縦アーチの形成にも大切な役割を果たしています。(続く)

 

[著者]西田 壽代

(足のナースクリニック代表/一般社団法人日本トータルフットマネジメント協会会長)

 

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