書評『がん研が作った がんが分かる本』(公益財団法人がん研究会 監修/ロハスメディア 編集・ロハスメディア)

評者:長谷川 久巳
(国家公務員共済組合連合会虎の門病院 管理看護師長/がん看護専門看護師)

 

がん患者さんやご家族が「素人ですから」と言うことは多い。この言葉の意味は、がんという病の脅威に対する怒りや諦め、否定あるいは医療者とよい関係を築きたいという表れだったりと、さまざまなように思う。いずれにしても、患者-医療者間の情報の質と量の差は決して埋められないし、たとえ、がん医療のプロであっても当事者となれば“素人”になるものである。そのような前提の上で、あえて本書は“患者さんにも勉強してほしい”と苦言を呈している。これを、「がんという病の脅威に逃げることなく、また情報に翻弄されず、がんや医療機関、医療者とうまく付き合い、患者さんが主役となって歩んでほしい」というメッセージに違いないと本書を読み進める中で感じ取った。

一般的ながんの診断治療に加え、相談の多い「代替療法」「緩和ケア」「栄養」等や「がんペプチドワクチン」といった最新の治療法も紹介し、さらに、それらとの付き合い方にも言及している。患者さんや周囲の人々が、少し冷静に“がん”という病を見つめるのに、お勧めできる内容だ。同時に、がん医療に携わる看護師にとっても最新知識の全体像を理解・整理するのに最適であり、自らの学習や患者さん・ご家族の理解を助けるのにも活用できるだろう。

 

もう一つ、がん研の患者中心やチーム医療の具現化への取り組みも随所にあり、がん研の実力をひしひしと感じさせる1冊となっている。

 

-「看護」2013年1月号より –