[特別寄稿]今、看護職が知っておくべき情報倫理

特別寄稿

今、看護職が知っておくべき情報倫理

 

坂本 仁美
長崎県立大学看護栄養学部看護学科
講師

 

 

筆者は、情報の特性を理解した上で、安全な情報伝達を行い、より効果的な看護援助を実践するところまでが看護における情報倫理であると指摘します。本稿では、一般的な「情報倫理」との違いや看護に潜む情報リスクを解説した上で、看護職に求められる能力や意識を示します。

 

 

日本において「情報化社会」という言葉が生まれてから50年が経過しました。その間、情報は形を変え、媒体を変え、医療福祉分野でも急速に普及しています。

 

2019年末から、われわれの生活を変化させたCOVID-19は、インフォデミック(infodemic)という言葉を有名にしました。インフォデミックとは、インフォメーション(Information)と全世界的な感染爆発を意味するパンデミック(Pandemic)、もしくは感染症のまん延・流行を意味するエピデミック(Epidemic)の混成語で、虚偽や誤解を招くような内容を含めた情報が氾濫すること、またそれにより社会に影響を及ぼすことを指します。インフォデミックの歴史は1348年からヨーロッパで断続的に発生したペストの流行期にさかのぼります。2003年SARSのパンデミック時にThe Washington Postにおいて用語が使用1)され、2020年に世界保健機関(WHO)の事務局長が言及したことにより広く知れ渡ることとなりました2)。COVID-19発生時、「新型コロナウイルスは熱に弱く、お湯を飲むと予防に効果がある」等の科学的根拠のない予防法や治療法にかかわるフェイクニュースがSNS上で拡散され、多くのインフォデミックが生じました。このフェイクニュースの1つであった「度数の高いアルコールを飲めば、体内のウイルスが死滅する」という情報は、世界各地に広まり、特にイランでは、約800人が死亡、5876人が入院するという事態を引き起こしました3)

 

 

→続きは本誌で(看護2023年11月号)